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306話 報告会議はまとまらない -話を聞きますね-

カレナリエンの報告を聞きましょう。

「よし。今度こそ、カレナリエンからの偵察報告を聞かせてもらおう」


「分かったわ。じゃあ、マデリーネは後で詳しい話をしましょうね。偵察の話だけど、私とクロはヘルベルト第二王子が治めている領地に行ったんだけど、そこの村や街は本当に普通なの。普段通り仕事をしていて、内戦になっているなんて知らない感じだったわ」


 マルコの催促に、カレナリエンはマデリーネ対して意味ありげに頷いた後に説明を始めた。第二王子の領地は内乱である気配は全く無く、徴兵された者も居ないとの事。物価の上昇もなく、普段通りの生活が出来ている事。ギルドには内乱の情報自体は入ってきているが、第二王子側からは特に依頼や要請などもなく疑問に思っていた事。


「内乱についての情報が全く流れていないって事か?」


「そうなんですよ。リョージ様。偵察の依頼を受けて、クロとかなり神経を擦り減らして行動していたのが馬鹿らしくなりましたよ。あっ! 忘れてました。これ、帝国で売っていたお菓子と王国にはない食材です」


「おぉ! さすがカレナリエン! そのお土産は素晴らしい! 惚れ直しちゃうよね! なにが入っているの? おぉ! これは確かに王国で見た事ないな! スライム状の…… 痛ぃ! なんだよ! マルコ!」


「話が進まないんだよ! それは後でユックリ見ろ!」


 土産を手渡された亮二は思わずカレナリエンを抱きしめた。硬直するカレナリエンや、抱きついた亮二の背後から抱きついたクロを羨ましそうに見ているマデリーネに、呆れ顔のユーハンや微笑ましそうに頷いているアンデルス、悟りの境地に近付いた王国側の高級士官やケネットを始めとする白竜騎士団のメンバーを見渡しながら、マルコのミスリルのハリセンがクロとカレナリエンには当たらないように絶妙なコントロールで亮二に炸裂するのだった。


 ◇□◇□◇□


「結局のところはヘルベルト王子の動向は掴めていないって事か」


「そうなの。クロの諜報機関をフル活用しても情報が集まらなかったの」


 マルコの質問に若干赤い顔をしたままカレナリエンが答えた。話が進まないために亮二は部屋の端に追いやられており、亮二はお土産を漁りながら「俺が偵察を依頼したのに」とブツブツと呟いていた。


「リョージ様。ご褒美」


「ん? そうだよな。よし! クロ偉いぞ!」


 クロのおねだりに亮二はクロの頭をひとしきり撫でると、アイテムボックスからサブレを取り出して手渡そうとしたが、クロは手を出さずに黙って口を開けた。ひな鳥のように口を開けて待っている様子に亮二は苦笑を浮かべると、手に持っていたサブレをクロの口に突っ込むのだった。


「これからの方針としては、帝都に進軍するのが王国諸侯軍としては一番だと思っているのですが、マデリーネ姫のご意見を伺いたいのですが? マデリーネ姫? 姫!」


「なんて羨ましい! リョージ様から『あーん』をしてもらうなんて。私も活躍すればリョージ様から…… はい! な、なんですか?」


「ですから、マデリーネ姫のご意見を伺いたいと、先程から聞いていたのですが。ひょっとしなくても、リョージの方を見ていましたか?」


「な、なにを仰ってるのでしょうか? こ、こんな大事な会議の中で話を聞かないで、リョージ様のお姿を拝見するなんてするわけないじゃないですか! ねぇ! ケネット?」


 アンデルスが今後の進軍についてマデリーネに問い掛けたが、心あらずな感じで亮二とクロを見ている姿に苦笑を浮かべると、強い口調で問い掛け直した。小さな声でブツブツと呟いていたマデリーネは、アンデルスの大きな声に身体を震わせながら慌てて表情を整えると、ケネットに救いの目線を投げた。


「知りません。リョージ殿の事を見過ぎでしょう。後でリョージ殿と話す機会を作りますから、今はいつものように凛々しい姫騎士に戻ってもらえますか?」


「わ、私はいつも凛々しいですわよ!」


 ケネットの言葉にマデリーネが顔を真赤にして反論したが、残念ながら残りの者からは賛同を得られない事に気付いたマデリーネは大きく咳払いして、表情を改めると会議を再開させるのだった。


 ◇□◇□◇□


「ところで、このスライム状の素材って結局なんなの?」


「それは帝国の市場で売っていた。熱い温度になると溶け出す。冷えると元に戻る」


「ゼラチンみたいなもんだよな。次作るのはゼリーだな。これって数を集めれるの?」


 亮二の問い掛けにクロは軽く頷くと、生産地の村をすでに訪れており、定期買い取り契約で大量仕入が可能である事を伝えた。


「村の人喜んでた。総出で作るって言ってた」


「さすがクロ。ちょっと待ってよ。このゼラチンを溶かして……」


 亮二がスライム状の素材をストレージから取り出した鍋に入れて、火属性魔法で温め始めた。さらに果物を魔法を使って果汁だけを取り出して加熱してから鍋に投入すると、かき混ぜながら用意していた小さな容器に注ぎ込んだ。


「リョージ様。出来た?」


「ちょっと待ってよ。もうすぐ出来上がるから」


 亮二は小さな容器の周りに氷属性魔法を使って徐々に温度を下げ始めた。


「よし! 出来た! ほら、食べてみてよ」


「んん! ん!」


 スプーンと一緒に小さな容器を手渡されたクロは、一口食べるとあまりの美味しさに言葉を発することも出来ずに一心不乱に食べ始めるのだった。

仲間外れにされたので好き勝手にしました。

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