307話 まとまりの無い会議の終了 -作戦は決まりましたね-
ゼリーは美味しいですよね。
「リョージ様。おかわり」
「おお。気に入ってくれたみたいだね。じゃあ、次は違う味のやつを作…… 痛ぃ! なんだよ! マルコ! 仲間外れにされたから、大人しくしてたじゃないか!」
「お前が部屋の隅っこで調理を始めるからだろが! マデリーネ姫とアンデルス殿下の視線がお前に集中して、微妙に会議が進まないんだよ! やるんだったら別の部屋でしろ!」
クロの要望に笑顔で答えた亮二は、ストレージから違う果実を取り出して作業を始めようとした瞬間に、マルコからのツッコミを受けた。危うく果実を落としかけた亮二が口をとがらせながら抗議をしたが、マルコからは厳しい視線を向けられつつハリセンの理由を説明された。
「えっ? 別に匂いとか充満してないだろ? 果物の香りが漂うくらいで? 食欲は別に刺激されないよな?」
亮二が首を傾げながら鼻をひくつかせて確認したが、フルーティな香りがほのかに部屋に漂っている以外は特に食欲を刺激するような匂いはなかった。
「お前が手に持っている果物じゃなくて、完成品の方に興味があるみたいだぞ」
亮二の疑問に、クロが食べているゼリーに視線を移したマルコが指をさしながら答えた。思わず亮二がマデリーネとアンデルスに視線を向けると、視線の合ったアンデルスが物欲しそうに語りかけてきた。
「伯爵。それはぷりんですか?」
「いえ。プリンではなく、ゼリーと申します。帝国で面白い食材を見つけましたので作ってみました。殿下も食べられますか?」
「もちろん! ぜりーはエレナも父も食べた事は当然ないですよね? 王族で私が一番か……。ふふふ。素晴らしい! 王都に戻ったら勲章を準備せねば。新しい勲章を創るのにどれくらいかかる?」
「おぉぉい! 言ってる内容がマルセル王と同じレベル! 爵位じゃないのが実現しそうで恐ろしい!」
亮二からゼリーを食べるのは王族で初めてと聞かされたアンデルスは、瞳を輝かせながら力強く頷くと、近くに居た従者に勲章が出来上がるまでの日程を確認するのだった。
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「はい! はい! はい! 次は私の質問です!」
「なんですか? マデリーネ姫?」
テンション高く挙手をしているマデリーネに、凛々しい姫騎士の定義について真剣に考え始めた亮二だったが、答えは出なかったので軽く首を振ると質問の続きを促した。
「それは帝国では非常食として栽培されている膨らみ草ですよね?」
「名前は知りませんが、この食材は水に溶かして熱すると液体になり、冷やすとスライム状になると聞きました」
「その通りです。それは、味も栄養もありませんが、飢饉などの非常時には少しだけ小麦を混ぜてお腹を膨らませるのです。膨らみ草を砕いて煮詰めて乾燥させると、量は少なくなって保管場所も狭くて済みますので」
その他にも、膨らみ草は味が無いために帝国では全く人気はないが、飢餓対策として栽培を奨励されており、帝都近くの村々で面積を決められて作られている事や、栽培は容易なので種を蒔けば二十日ほどで収穫出来るなどの話もあった。
「人気が無いって、ひょっとしなくても膨らみ草は余り気味なのですか?」
「そうですね。飢餓などもなくは豊作ですので、膨らみ草の栽培量を減らす事が検討されて…… え?」
亮二の質問に答えようとしたマデリーネは、瞬間移動したかのように前に移動してきた亮二を呆然と見ていた。
「膨らみ草の栽培量を減らすなんて! とんでもないですよ!」
「あ、あの。リョージ様。近いです」
両肩を掴まれ、至近距離で膨らみ草の素晴らしさを力説する亮二に、マデリーネは顔だけでなく全身を真っ赤にするのだった。
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「はい! リョージ様! そこまで!」
「え? なにが?」
かなりの至近距離で亮二が両肩を掴みながら、マデリーネを説得しているのを唖然として見ていたカレナリエンだったが、マデリーネが顔だけでなく全身が真っ赤になっていくのを確認すると、苦笑しながら止めに入った。
「マデリーネ姫が決められた事ではないので、ここでリョージ様が力説しても無駄だと思いますよ。さっさと内乱を片付けてから話した方がいいのでは?」
「なるほど! カレナリエンの言うとおりだよね! よし! さっさと第二王子を殲滅して、膨らみ草の安定供給の話をしないとな。マルコ! さっさと話を始めるぞ! なにやってんだよ!」
カレナリエンの冗談交じりの説明に亮二は強く頷くと、ストレージから地図を取り出して作戦会議を始めるようにマルコに指示を出すのだった。
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「だから、これから部隊を二つに分けて進軍するのが良いんだよ!」
「軍を二つに分けるなんて常識であり得ないだろ! まとまって行動しないと各個撃破されるだけじゃねえか!」
亮二とマルコが顔を突き合わせるようにしながら作戦を話合っていた。亮二の案は部隊を二つに分けて帝都に進軍し、戦闘が始まった段階で合流して殲滅するとの作戦で、誰が聞いても無茶以外の何物でもなかった。
「大体、どうやって部隊を二つに分けるんだよ!」
「アンデルス殿下がアマンドゥス騎士団長やユーハン伯爵やマルコを中心に指揮するだろ? 殿下の軍が攻撃されたら防御を中心にしてくれ。もう一軍が駆けつけて挟み撃ちにしよう。それで、もう一軍は俺がアラちゃん騎士団を率いて進軍する。人数も少ないから全員騎乗しての行軍だ。俺達の方が攻撃されたら魔物だったら殲滅するし、人間だったら捕縛しておくよ。通信手段としてはマルコに、これを渡しておくよ」
「ぐっ! 確かにお前さんの強さを考えたら、魔物なら簡単に殲滅しそうだよな。人間だったら捕縛と言っているが可能なのか? それに、この通信機ってカレナリエンが使ってやつだよな?」
「当たり前じゃん! 帝国との今後の事を考えたら捕縛が一番だろ?」
亮二はマルコに通信できる魔道具を手渡しながら、自分が部隊を率いる事や、戦闘で全く問題ない事を軽く告げた。最初は渋っていたマルコだったが、亮二の強さを認めた上での作戦の検討を行い、亮二とアラちゃん騎士団とカレナリエン、クロの総勢百名の軍団と、留守を守る五百名を残してアンデルス率いる千五百名とで帝都を目指す事が決定するのだった。
おぉ。無茶な作戦が通ったな。やっぱり人徳?




