245話 迷宮探索5 -一区切りつきそうですね-
皆、頑張っているようです。
「うぉ!攻撃が激しい!俺達が魔物を抑えるから弓攻撃で一気に決めてくれ!」
「「了解!」」
ベッティの指示に、ベッティと前衛の2人は目の前の魔物に斬り掛かり、戦線が後退しないように防御を中心とした戦い方に切り替えた。前衛が魔物を抑えている間に後衛の2人は、亮二から手渡された属性付与の矢を魔物の群れの中央部に連続で撃ち込むのだった。
「よし!いいぞ!ここから一気に押し込むぞ!」
中央部で炸裂した【雷】【水】属性の矢は広範囲にダメージを与えたようで、魔物の動きに統制さが失われ、軽い混乱状態になったようだった。その隙を見逃さずにベッティは“火炎の剣”の柄頭を押し込んで【火】属性を起動させると目の前で切り結んでいた魔物を兜割りで両断した。
「ベッティに続くぞ!」
「任せとけ!」
ベッティの動きに触発された前衛の1人が“氷炎の剣”の柄頭を押さえて【氷】属性を起動させると、目の前の敵を斬り伏せて氷柱を作り上げた。“雷炎の剣”を持っている前衛は剣を持った魔物と数合切り結んでいたが、相手の上段からの一撃を回避しながら柄頭を叩いて【雷】属性を起動させると、すれ違いざまに斬り、後方に居た魔物も手首を返しながら袈裟斬りに斬り捨てるのだった。
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「へえ、ベッティさん達のパーティーって連携が綺麗に取れているね。私達も負けられないわよ!メルタは“ライトニングアロー”で前線に出ようとしている大きい魔物を攻撃して。出来たら五体満足な状態で倒して!その後に私が攻撃して魔物を混乱状態にするから、ライラとクロは少しでも目の前の敵を減らして!」
カレナリエンの指示にメルタは弓を構えると「“我、かの敵を打ち倒さん!“ライトニングアロー””」と弓に魔力を付与しながら前線に出ようとしていた大きな魔物の眉間を撃ちぬいた。矢を眉間に打ち込まれた魔物は断末魔を上げる暇もなく絶命し後ろ向きに倒れ始めた。
「完璧よ!メルタ!“風の精霊よ!突風となって駆け抜けて!“ウインドカッター””!」
カレナリエンの放った“ウインドカッター”は大きな魔物の左足を切断した。すでに絶命していた大きな魔物は抵抗すること無く左足を刈り取られ、バランスを崩しながら横向きに倒れこんだ。倒れた先にはライラとクロに飛びかかろうとしていた緑狼が数匹居たが、大きな魔物の身体に巻き込まれて身動きが取れなくなってしまった。
「さすが、カレナリエン。大きな魔物が倒れた方からの攻撃は気にしなくていいのね。よし!正面の敵だけに集中するよ。この間に敵の数を減らすよ!クロ!」
「分かってる。今まで倒した敵は私が多い。ライラはやれば出来る子。頑張れ」
側面からの魔物の攻撃を気にしなくても良くなったクロとライラは、正面の敵に対してフットワークを駆使して相手を翻弄しながら攻撃を続け魔物の数を減らしていくのだった。
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「ちょっと気になる事があるんだけど」
「どうされたのですか?戦闘中ですよ?リョージ様」
亮二が壊滅させた右翼を全てストレージに収納して、左翼を担当しているカレナリエンの元にやって来た。いつもの亮二なら正面を担当してるベッティ達の応援と見せかけて、魔物を討伐をしそうだと思っていたカレナリエンは、何もせずに自分の元にやって来た亮二を不思議そうに見ながら首を傾げて質問をした。
「右翼を壊滅させたからベッティ達の担当している魔物を横ど…応援しようとしたんだけど、気になる事が出てきたんだよね。あの奥の扉に居る魔物を見てくれない?」
亮二の言葉に「やっぱり横取りする気だったんだ」と思いながらも指を差された方に視線を向けると、奥に見える扉からウッドゴーレムがゆっくりと逃げ出そうとしていた。通常の魔物が逃げる場合は戦意喪失などの理由が考えられるのだが、基本的に単純な命令しか受る事が出来ないと言われているウッドゴーレムが戦況を見て離脱するとは考えられなかった。
「えっ?あのウッドゴーレムはなんで桶を持っているんですかね?それに、入っているのは水ですか?」
「そうなんだよ。俺たちが撃った"ウォータアロー”や"ウォータボール”があるだろ。どうも、その水を集めて桶に入れてどこかに持って行こうとしているみたいなんだよね。あのウッドゴーレムにマーカーを付けて追跡できるようにしたから、この部屋にいる魔物を殲滅させて様子を見てみないか?この部屋に居る魔物を全滅させたら1時間は敵が出て来なくなるんだよね?さくっと倒して30分ほど休憩しようよ」
亮二の提案にカレナリエンは渋い顔をしながら考えた。自分が収集した情報と現在の状況があまりにもかけ離れており、自分の判断に自信が持てなかったからである。そんな2人の様子を見ていたメルタが「いいんじゃない?」と会話に参加していた。
「リョージ様の話に乗りましょうよ。そろそろ本格的に休憩するのもいいんじゃない?この部屋に残っている魔物はあと少しだから、リョージ様に一気に殲滅してもらったらカレナリエンの情報が合っているかが分かるじゃない。もし、ダメだったら作戦を考え直したらいいだけだし」
「でも、ベッティさん達の実力確認や冒険者としても矜持はいいの?」
「これだけ戦えたらベッティさん達は問題ないでしょ。彼らはここが10層だって事を忘れていると思うわよ。10層でこれだけ戦えたら大丈夫よ。第一、彼らが担当するのはもっと上の5層までなんだから。それに、私達の冒険者としての矜持も、これだけ戦えたら保てたと思うのよね。だから、リョージ様は好きに魔物を殲滅してください。倒した魔物の収納もお願いしてもいいですか?」
メルタとカレナリエンのやり取りを聞いて、思う存分に敵を倒していいと言われた亮二は嬉しそうに"ミスリルの剣”を構えた。亮二が剣を構えたと同時に正面の敵と戦っているベッティ達から悲鳴のような応援要請がやって来た。
「伯爵!そろそろ俺たち限界です!応援をお願いします!」
「大丈夫!お前たちはやれば出来る子だ!あと5分は頑張れ!先に左翼を片付けるから」
亮二はベッティからの応援要請を軽く流して左翼に向かうと、目の前の敵を斬り倒してストレージに収納しながら左翼の敵を確実に倒していき、3分と掛からずに敵を殲滅していくのだった。
かなりの数の魔物を討伐して満足してます!