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192話 ネイハムの決闘騒動3 -付録が有りましたね-

まだ、戦意を喪失していない人がいるようです。

「構わん!相手はたかが1人ではないか!10人以上で一斉に襲い掛かれば、いかに“ドリュグルの英雄”といえど対応出来るものか!一斉に攻撃しろ!」


 伯爵の横に居た魔術師風の男が騎士に対して号令をかけると、まだ未成年の少年に対して大多数で攻撃する事に躊躇している騎士達に構わずに詠唱を始めた。


「我、ここに熱き流れを一つに纏め、目の前の敵を打ち払わん!“ファイアボール”」


 魔術師が“ファイアボール”を亮二に向かって撃ち放った。亮二を中心に大爆発が起こり、観客席から悲鳴が上がった。大爆発を起こしている場所を眺めながら魔術師の男は満足気な顔をしていたが、大量に巻き起こった水蒸気の中から亮二がむせながら出てくるのを見て驚愕の声を上げるのだった。


「あぁ、ネイハムの真似は嫌だからって“ウォーターボール”にしたのが間違いだった。びしょ濡れだよ。なんで“ウォーターボール”だと相殺されないんだろう?素直に“アイスボール”で相殺したら良かった」


「な!無傷だと!」


「無茶するね。あんな距離で“ファイアボール”なんて撃ったらフレンドリーファイアを起こすじゃないか」


 騎士達を囮に魔法で攻撃した魔術師風の男に軽く声を掛けると、さらに気軽な声で騎士達に亮二は話しかけた。


「ねぇ、味方を巻き込んで魔法を撃つような奴が言う事なんて聞かなくていいんじゃないの?もし、脅されてるならハーロルト公に取り成してもらうけど?」


「お気遣いに感謝いたします。ですが、我々は脅されてなどおりません。我らは代々伯爵家に使える身です。命令があれば従うのみです。ただ、“ドリュグルの英雄”であるリョージ殿であっても未成年を相手に剣を抜く気はありません。これは戦闘行為ではありせんので取り押さえさせて頂きます」


 リーダーらしい男性から返ってきた答えに亮二は呆れたようにため息を吐くと、リーダーを含む騎士達に向かって突っ込みながら叫んだ。


「お前達の覚悟は受け取った。じゃあ俺も剣は引っ込めるよ。お前達のその騎士道が伯爵ではなく、王国に向いている事を期待して大人しく気絶してもらおうか!」


 亮二はそう叫ぶと、ライトニングニードルを伯爵と魔術師が居るあたりに的を絞らずに当たらないように適当に撃ち放つと、騎士達に向かって間合いを詰めて【雷】属性魔法を付与した拳で目の前の騎士を殴りつけた。殴りつけられた騎士は受け身を取れない状態でもんどりうって転がると、そのまま意識を手放した。亮二は気を失った騎士には目をくれずに横にいたリーダー格の騎士と向き合うと、身長差を活かして懐に潜り込んで鳩尾を全力で殴りつけた。


「ぐぉ、さ、散開して取り囲…「黙って寝てろ」」


 鳩尾に拳を当てたまま【雷】属性魔法を付与した状態にしてリーダー格である騎士の意識を刈り取ると、散開しようとした8人に向かって威力を弱めた“ウォーターボール”8連で撃って行動不能にするのだった。


 ◇□◇□◇□


「なにをしておる!相手はたった一人だぞ!俺が魔法を撃つ時間ぐらい稼がんか!」


 観客席から怒声が響いた。亮二が周囲の騎士の動きに注意を払いながら視線を向けると、鼻から血を流して激昂している男が目に入った。横にいたはずのレームは亮二のライトニングアローに驚いて椅子から転げ落ちた時に後頭部を打って気絶しており姿は見えなかった。


「鼻血を流しながら叫んでいてもカッコ悪いよ」


「うるさい!大体なんなのだ貴様は!なぜそこまで剣も魔法も使いこなせる!ふざけるな!」


 魔術師風の男がまくし立てた内容に軽くツッコんだ亮二にさらに激昂すると、残っている騎士達に「時間くらい稼がんか!」と指示を出して詠唱を開始した。


「我、ここに熱き流れを一つに纏め、目の前の敵を打ち払わん!“ファイアボール”」


「それは効かないね!」


 魔術師風の男が“ファイアボール”を唱えて亮二に向かって撃ち放ったが、ストレージから取り出して【氷】属性魔法を二重で掛けた“ミスリルの剣”で“ファイアボール”を一刀両断すると、一気に魔術師風の男との間合いを詰めて喉元に剣を突き付けて戦意を奪った。その様子を見ていた残りの騎士達も勝負はついたとばかりに降参を意思を示し、地面に座り込んで戦意がない事を伝えるのだった。


「全員、連行しろ!魔術師の男には猿ぐつわをしっかりと噛ませておけ!ハーロルト公爵。レーム伯爵の扱いはどうしましょうか?」


「ご子息と家臣が錯乱されたのを止めようとして名誉の負傷をされたからの。ご傷心との事と推測する。我が公爵領に所持している保養所があるから、傷が癒えるまで滞在してもらったらいいじゃろう。丁重に手厚く心の傷が癒えたと判断出来るまで(・・・・・・・)は滞在してもらうがよい。お連れしろ」


 意識を失った騎士は担架で運ばれ、戦意を喪失したイェフや騎士、魔術師風の男は縄で縛られて連行され、気を失ったままのレームは両脇を騎士に挟まれた状態で気絶したまま連れて行かれるのだった。後にレーム伯爵は冒険者ギルドからポーション等の買い占めによる価格吊り上げの主犯として告発され、また学院に対する脅迫行為や偶然に今までの悪事が多数露見し、領地没収の上、爵位は剥奪されなかったものの、自主退学した息子のイェフと共にハーロルトが所持している湖畔の別荘で生涯を終えるのだった。

これで一通りの掃除は終わりかな?

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