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190話 ネイハムの決闘騒動 -そろそろ始まりますね-

1週間経ちました。ネイハムは随分と成長しましたよ。

「逃げなかった事だけは評価してやる。この決闘で負けたら、さっさと学院から居なくなれよ。お前みたいな力のない庶民が名誉ある学院に居るだけで学院にとっては大迷惑なんだよ。俺は今回の為に王立御用達の道具屋から金貨5枚もするワイバーンの魔石を使った銀の杖やマナポーションを大量に用意している。お前がマナポーションを買おうと思っても買えなかったはずだ。獅子はウサギを狩るときも全力を尽くす事を教えてやる。それに私の父も今日の晴れ舞台を見に来ているんだ。息子の晴れの舞台に泥を塗るような奴には容赦はしないだろうな。そのところは十分に注意して頑張ってくれよ。少しくらいは見せ場も欲しいからな」


 ネイハムが学院の修練場に到着すると、すでにイェフ達は来ており観客席には学生や講師などの他に多くの貴族達が集まっていた。イェフはネイハムに近付いて遠目には笑顔で語りかけているようにしながら威嚇交じりの言葉を交わすと、貴族派の方に視線を向けて父親であるレーム伯爵に向けて笑顔で一礼するのだった。ネイハムとイェフの様子を眺めていた亮二は話されている内容を聞き耳 5で確認すると、貴族派が集まっている個所に視線を向けた。


「なんか、物々しい雰囲気が立ち込めてるけど?学生の決闘騒ぎで貴族達が集まってるのってイェフが呼んだからかな?そのせいで、ネイハムがものすごく緊張しているな」


「物々しいのはそれだけじゃないと思いますけどね。これだけの人が集まっているのは、ぐんそうがネイハムさんを鍛えたって噂が流れたのも大きいと思いますよ。マルセル王のお気に入りで、最近伯爵になったばかりで、特別クラスに所属して、初級探索者ダンジョンをクリアして莫大な賞金を手に入れて、それを貧民対策でほぼ全部使って、エレナ姫の(ふところ)すいーつなどの二つ名が10個以上はあるドリュグルの英雄ですからね。私がぐんそうの噂話を他国で聞いたら『そんな人が居るわけがない』と断言しますよ。そんな人が【白】の勲章を持っているネイハムさんを『どう鍛えたのか』と学院でも話題になっていますからね」


 ライナルトと一緒の場所で陣取っている亮二の呟きに、ライナルトが苦笑しながら答えた。亮二が貴族派がいる場所に再度視線を投げると、怨嗟や羨ましさのこもった視線が大量に突き刺さってきた。


「え?物凄い勢いで睨まれてるんだけど?物々しい雰囲気はこれのせいじゃないの?」


「じゃろうな。レーム伯爵に『貴殿のご子息が決闘をされるそうですな。伯爵家として代表されるとは大したものです。決闘相手のネイハムは我が公爵家と縁のあるウチノ伯爵が懇意にしている者で、我が公爵家も彼を応援をかねた観戦をさせて頂きます』と手紙を送ったからの」


 亮二の呟きに、「面白そうだから」と学院に王家の一員としての権限を使って観戦に来ていたハーロルトが嬉しそうな声で説明を始めた。レーム伯爵が学院に息子が有利になるように圧力をかけようとして、シャルロッタ学院長に突っぱねられた事、王家御用達の魔道具屋で色々と装備やアイテムを買い漁っていた事、一般の道具屋でもポーションやマナポーションなどを買い占めを行った事。買占めについてはポーション等が在庫不足からくる高騰で冒険者ギルドから伯爵家に苦情が出ているとの事だった。ハーロルトから伯爵家の内情を聞いた亮二は人の悪い顔をすると貴族派の席を見ながら話し始めた。


「なるほどね。そんな細かくて無駄な事をしようとしてたのか。じゃあ、これから俺はネイハムに道具を渡しに行ってきますね」


「道具を渡す?」


「ええ、ドラゴンの魔石を使った自作のミスリルの杖に、疲労が出にくくなる魔道具に、ウチノ家特製のポーションにマナポーションが入っているアイテムボックスを渡してきますね」


 亮二がネイハムの元に近付いて、イェフに聞こえるようにアイテムを渡していった。ネイハムに渡される道具の名前や使い方を聞かされるたびに、イェフの顔色は青や赤に変わりながら、最後はドス黒くなっていた。


「卑怯ではないか!リョージ伯爵!庶民が持つような品ではないぞ!」


「卑怯って君が言う?アイテムの買い占めをしたり、学院長に圧力をかけたりしてる人間がくだらない事を言うなよ。まさか、名誉あるレーム伯爵は何をしてもいいとでも言うつもり?」


 まさに、我が伯爵家がなにをしようと勝手だ!と叫ぼうとしたイェフは先に亮二に台詞を取られて、口をパクパクさせると亮二とネイハムを睨みながら開始位置に向かった。


「あの、兄貴!俺頑張るよ!兄貴にここまでしてもらって負けたなんて言えないからな!」


「当たり前だ!軍曹の特訓を受けて負けるなんて選択肢は無いんだぞ!あるのは「勝つ」か「余裕で勝つ」か「完全に勝つ」か「完膚無きまでに叩き潰す!」だ!」


 亮二の言葉にネイハムは勢い良く「はい!」と応えると勢い良く走って水晶球が置かれている場所に向かっていくのだった。


 ◇□◇□◇□


「ところで、ハーロルト公爵はどこでレーム伯爵の悪事を仕入れたのですか?」


「儂には優秀な影がおるからの。今度、リョージにも紹介してやろう。あ奴はお主のファンじゃそうじゃからな」


「可愛いですか?」


「可愛いぞ。黒色の服装が好きじゃな」


「じゃあ、今度お会いする時に黒の装飾を用意しますね」


「それは喜ぶじゃろうな。黒の短剣とかをやってくれ」


「分かりました!」


「今の話はカレナリエンとメルタとエレナ姫に伝えてもよいか?」


「さっきの話は無かったことにしてください…」

ハーロルト公の影ってどんな人なんだろ?

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