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178話 貧民対策 -計画書が出来ましたね-

泡立て機を改良します!

「なに?この混沌とした状態は?」


 食堂に入ってきたオルランドの第一声だった。一緒に入ってきたエリーザベトも、なにが起こっているのか分からない顔で中の様子を眺めていた。


 嬉しそうに泡立て機を眺めている者、場の雰囲気に困惑の顔になっている者、対抗心を燃やして真っ赤な顔で頑張ってる者、苦笑しながらワインを飲んでいる者。様々な状態だった一同は2人が入ってきた事に気付くと挨拶をしてきた。それぞれに挨拶返しながら、間違いなくこの部屋でも主人公となっている様子の亮二に語りかけた。


「なにをしていますの?見た事もない食べ物が山積みになっていますわよ?」


「あぁ!お嬢様!丁度良かったです。どうぞ、お席にお座り下さい。オルランド様もご一緒にどうぞ!私とリョージ様で考えた”ほっとけーき”ですので、ぜひお召し上がり下さい!」


エリーザベトの質問に、亮二が答えるより早く料理長が興奮した様子で話し掛けてきた。


「『お召し上がり下さい』と言われれば頂きますわ。いい匂いもしていますし。で、料理長は私の質問に答えて下さる?この”ほっとけーき”なるものが大量にある理由を」


 エリーザベトとオルランドはテーブルの上にある”ほっとけーき”の山を眺めていた。よくここまでバランスよく積み上げられたものだと思わずにいられない数の”ほっとけーき”があり、それも一山だけでなく十数個の山となっていた。


 料理長から山になっている”ほっとけーき”が出来るまでの説明を聞きながら、エリーザベトとオルランドは“ホットケーキ”をひとくち食べるとその美味しさに言葉が出なかった。2人は最近までの激務を癒やす食べ物が天から与えられたとばかりに一心不乱に食べる事に専念するのだった。


 ◇□◇□◇□


「で、”ほっとけーき”が美味しかったのは認めますが、さっきの状態の説明をしてくだりません?」


 エリーザベトの質問に亮二が嬉しそうに説明を始めた。


「最初はホットケーキの作り方を料理長と一緒に説明してたんだけど、泡立て機の説明をしていたら改良を思い付いちゃってさ。で、上手く改良できたから使ってみたくなるじゃん?魔力を通したらうまい具合に回転をはじめて、卵白の泡立てが簡単に出来る様になるじゃん。それで試しにホットケーキを作ってみたら物凄くふんわりとしたのが出来上がるじゃん。出来たら嬉しいじゃん。そしたら、もっと作りたくなるじゃん?他の人にも教えたくなるじゃん?料理長に教えるじゃん?料理長も調子に乗ってたくさん作るじゃん?負けたくないから俺も作る…「痛ぃ!」」


「取り敢えず、事情は分かりましたので落ち着いて下さい」


「な、なんでエリーザベトさんが”ハリセン”を持ってるの?それに、その”ハリセン”めちゃめちゃ痛いんだけど?」


「ええ。そうだと思いますわ。これはマルコさんが持っておられる”ハリセン”を参考に作られた銀製の”ハリセン”なんですが、いまいちミスリル製の”ハリセン”に比べてしなり具合が悪くて、叩くと純粋に痛いので改良中ですのよ」


「そんな試作品で人の頭を叩かないでくれる」


 亮二が頭をさすりながらエリーザベトに文句を言うと、エリーザベトはハリセンの叩く部分を撫でながら説明を始めた。


「マルコさんから『リョージが暴走していたら”ハリセン”で止めてくれていいぞ。マルセル王から正式にツッコミ担当の武器として認められているから、この”ハリセン”は渡せないんだよ。だから、銀製で同じのを作るからこれで叩いてくれ。マルセル王から“ツッコミ担当”と認められた俺が許可する』とのことです」


「なに、マルコ酷い!」


「それと、マルコさんからの伝言です。『もし、リョージがマルコ酷いと言ったら自業自得だ!お前のせいで“王を含むサンドストレム王国全体のツッコミ担当”って二つ名が付いたんだからな!長えよ!二つ名が長えよ!』だそうです」


 亮二のマルコに対する文句に、エリーザベトは苦笑を浮かべながら「マルコさんからの伝言を覚えるのは大変でしたのよ」と伝えてくるのだった。


 ◇□◇□◇□


「じゃあ、“ほっとけーき”も食べ終わったし、リョージ君とエリーの話も終わったようだから、今度は僕と話してくれるかな?リョージ君」


「もちろん。教皇猊下が来られたって事は段取りが付いたって事でよろしかったでございますよね?」


「ワザと無理やりな敬語で言っているでしょ?本当にリョージ君だけだからね。教皇に対して『下っ端と同じ』って言ったの」


 オルランドは苦笑しながらアイテムボックスから紙を取り出すと、今回の貧民対策についての説明を始めた。


 第一期工事として街道整備から始めること。30km毎に休憩所を作ること。最初に作る街道は王都からハーロルト公領を通って教皇領の神都まで繋ぐこと。リョージを工事の総責任者として労働者の募集を行い、エリーザベトは公爵家として協賛すること。オルランドは教皇として許可を出すとのこと。


「教皇として許可?」


「そう。せっかく、リョージ君が貧民対策をしてくれるんだから、教皇として『信徒よ!“ドリュグルの英雄”に力を貸し、神都までの道を切り開くのだ!』って言えば結構人が集まる感じかな?教皇としても神都への道のりが良くなったら、信徒が安全にやって来れるだろうから安心できるしね」


 オルランドの答えを聞いた亮二が「そんなに道の状況が悪いの?」と質問すると、オルランドやハーロルトから街道は主街道と呼ばれる場所でも荒れている場所もあり、街道を整備するにも人が集まらずに苦労しているとの答えが返ってきた。


「毎年、冬の時期に無理をして進んだり、整備されていない街道で馬車が横転して死者が出たりしてるんだよね」


「儂の領地にある街道の警備でも、悪路で中々進めずに馬の消耗が激しくて困っておったのじゃ」


 2人からの回答に亮二は貧民対策として街道整備を選んで間違いないと確信するのだった。

ホットケーキの残りはストレージに収納しました。

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