163話 ダンジョンでの大規模戦闘 -魔物が溢れてきますね-
ダンジョンアタックは順調すぎるくらいに進んでいます!
特別クラスのダンジョンアタックは両チームとも、特に問題なく探索を進めていた。あまりに順調に進める事を疑問に思った亮二は、地下3層で魔物の出てくるパターンチェックや仲間内の連係を確認していたが、エリーザベト達は一気に地下4層の中央部まで進んでいた。10回目のダンジョンアタックになる今回は亮二達も地下4層に入っていたが、エリーザベト達は中央部から先に進んだ部屋までやって来ていた。
「この調子で行けば、リョージさんチームに、圧勝出来そうですわね」
「あまりに順調に進み過ぎてるような気もするけどね」
「そんな事はありませんわ!私達が優秀だから一気にここまで来れたのですわ!」
“初級探索者ダンジョン”や“盤面の森”の所謂ダンジョンと呼ばれる場所では、定期的に魔物が出てこない空間が存在していた。エリーザベト達5人が喋りながら休憩出来るのは、この部屋が“安全部屋”と呼ばれる魔物が出て来ない部屋だったからである。あまりにも順調に進んでいる事にオルランドから疑問の声が上ったが、エリーザベトや他の3人は「大丈夫(ですわ)!」とテンション高く、亮二達のパーティーに勝っている事を話題にして盛り上がっているのだった。
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エリーザベト達が入った大部屋は小学校の体育館ほどの大きさであり、扉はエリーザベト達が入ってきた箇所だけで奥には下に降りる為の階段があるのが見えた。また中央には石板が設置されており、石板の横には宝石や金貨が入った大きな皿があった。その石板の前には魔物が5匹警戒しており、エリーザベト達を見付けると奇声を上げながら襲いかかってきた。
「前衛は“青の勲章コンビ”で防御。その間に私達が魔法で攻撃します!」
「「了解!」」
エリーザベトの指示に“青の勲章コンビ”と呼ばれている2人が剣を構えながら魔物に斬りかかった。2人はお互いの動きをフォローしながら攻撃と防御を担当し、魔法攻撃の準備が整うまで戦線を維持し続けた。
「“我は光を求め、欲する。光は一つとなり雷となって敵を包み込み、焼き払わん。”サンダーボール“”!」
エリーザベトが【雷】属性魔法を詠唱すると5体の魔物は雷に包み込まれ、雷が消え去った後は黒焦げの死体が5体出来上がるのだった。
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エリーザベト達は魔物を倒し、周囲を警戒しながらも中央にある石板と皿に近付いた。注意しながら石板に書かれている文字を読むと、石板には古代文字で“財貨が欲しければ力を示せ”と書かれていた。
「なんですの?この宝石と金貨が欲しかったら力を示せって事ですわよね?さっき倒した魔物がそうだったのかしら?今まで挑戦されていた先輩方はどうされてたのでしょうか?」
「どうなんだろうね?でも、宝石や金貨がこんなに沢山残っているんだから、手を付けずに先に進んだんじゃないの?」
エリーザベトの呟きにオルランドが答えたが、他の3名は嬉しそうに金貨に触ってしまった。3名が金貨に触った瞬間に警報が部屋中に鳴り響き、扉が無かった壁に穴が空くと続々と魔物が部屋に侵入してきた。
「なぜ!こんなに魔物がやって来るんですの?」
「そりゃ、3人が金貨に触ったからじゃない?取り合えず、撤退した方がいいと思うけど?エリーザベトさんと僕で殿を務めるから、さっきの安全部屋まで撤退しよう!」
「そうしましょう!一旦、安全部屋まで撤退します!3人は後で説教ですからね!」
3名は申し訳無さそうに「ごめん!」と謝ると、やって来た扉に向かって走りだした。部屋に乱入してきた魔物達は走り始めた3名に向かって殺到すると逃げ道を閉ざしてしまった。道を閉ざした魔物の群れに魔法を打ち込んで突破しようとした3名だったが、魔物達は数を頼みに包囲網を形成し、逃がさないようにすると徐々に包囲網を狭めてきた。
3名は近付いて来る魔物に魔法を撃ち続けていたが、魔法の効果範囲から逃れた魔物達からの攻撃を受け、“赤”の勲章を持つ女性が肩口を魔物に噛みつかれてしまった。“赤”の勲章を持つ女性はなんとか魔物を振り払い、“青の勲章コンビ”が魔物を斬りつけて倒したが、肩口から流れる血が止まらない状況を見てパニックになり、エリーザベトに指示を求めてきた。
「撤退に変更はありませんから、そのまま安全部屋まで全力で走りなさい!安全部屋に到着したら治療しましょう!私が道を作りますから強行突破しますわよ!殿はオルランドさんにお任せしますわ!」
「え?僕一人?構わないけど、貸し一つだよ」
エリーザベトが肩口から血を流している1名を支えながらオルランドに指示をすると、気楽な感じで返事が戻ってきた。オルランドは“ファイアボール”を魔物に向かって詠唱短縮しながら連続で撃ち続けると魔物の注意を自分に引き付け始めた。
「一つでも三つでも構いませんわ!好きなだけ付けなさい!決して無茶せずにタイミングをみて一緒に撤退するんですわよ!」
エリーザベトはオルランドにそう叫び、向かってくる魔物達に“サンダーストーム”を叩き込み怯ませると、「私について来なさい!」と言いながら安全部屋に向かって行くのだった。
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「あれ?ひょっとしてピンチ?最下層の部屋ってここだよね?やっと追いついた時に、別れた相手側が危機に陥っているって物凄くテンプレだよね!」
エリーザベトの耳に緊張感のない声が飛び込んできた。エリーザベトが視線を声の方に向けると、扉から亮二達が入ってくるところだった。亮二はエリーザベトの背後から襲いかかろうとしてた魔物を“ミスリルの剣”で一刀両断すると、ルシア達に対して号令をかけた。
「散開!エリーザベト達を中心に防御陣形!オルランドは防御陣形に合流!エリーザベトさんは回復魔法を使えるの?」
「え?いえ、使えませんが。道具屋で買ったポーションはあります!」
「でも、彼女の傷はかなり酷いみたいだけど?」
亮二の確認にエリーザベトはアイテムボックスからポーションを取り出して傷口に掛けたが、出血量は減ったが止まることはなく流血を続け、徐々顔色が蒼白になっていった。
「えっ?さっきはそれ程出血してませんでしたのに!」
「たぶん、動脈を噛まれたんだろうね。今、俺が【回復】魔法を使ったからもう大丈夫!エリーザベトさんは彼女の様子を見といて。いいか!これから掃滅戦を行う!もし、魔物が俺以外を襲ってきたらエリーザベトさんが指示して対処して!いいね!」
「わ、分かりましたわ」
エリーザベトの返事を聞いて亮二は“ミスリルの剣”に【雷】属性魔法を付与すると魔物の群れに向かって切り込んでいくのだった。
思う存分暴れるぞ!