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120話 入学試験の最後 -懐かしい人との再会ですね-

試験はまだまだ続きます。

 -連射能力判定試験-

「では次は連射能力試験を行います。リョージ君以外は準備を始めるように」


「異議あり!純粋に試験を受けに来ている、右も左も分からない可愛い受験生に対してその対応は無いと思います!」


「異議は却下します。君はもう十分に学院の合格基準を満たしているので試験をする必要は有りません」


 試験官から亮二以外の試験開始が告げられた事に亮二は抗議したがあっさりと却下されて「そこで見とくように」と言われるのだった。


「ごめんね、リョージ君。正直に言うけどリョージ君の問答無用な能力で私達の心は折れそうなのよ。だから君は後ろで私達の出来栄えを見て助言をして欲しいのよ」


「で、正直のところは?」


「無双っぷりをあれだけ私達に見せ付けといて”可愛い”とか言ってんじゃ無いわよ!試験官から”受けなくていい”って言われてスッキリしたわ!」


 亮二の抗議を却下した試験官の後に神妙な顔で話し掛けてきたルシアは「ふざけんじゃないわよ」と満面の笑みを浮かべながら「そこで大人しく見てなさい」と亮二に伝えて試験場所に向かって行くのだった。


「まっ仕方ないか。ちょっとだけ(・・・・・・)やり過ぎたかもしれないからな」


 ルシア達が試験場所に向かうのを見送りながら暇になった亮二は【土】属性魔法でテーブルと椅子を創り出すと飲み物とお菓子を取り出して寛ぎ始めた。


「軍曹は相変わらず自由人ですね」


「おっ!ライナルトじゃん!なんでここに居るの?」


 ルシア達の試験風景を眺めていると”試練の洞窟”の最深部を一緒に調査したライナルト=ノスケが亮二の前に笑顔で立っているのだった。


 ◇□◇□◇□


「あれ?言ってませんでしたっけ?私は王立魔術学院の主任教授なんですよ」


「え?ライナルトって主任教授なの?ひょっとしてライナルト達を鍛えたって聞いた時にマルコが青い顔したのってそのせい?」


「かも知れませんね。でも、私は楽しかったですよ。軍曹の『ここで生き延びられないなら死ね!』とか『何もしないお前達に生きてる価値があると思うな!』って言われた時の衝撃は忘れようも無いですからね」


 ライナルトは亮二に勧められて飲み物を受け取ると椅子に座り、当事の事を思い出しながらクスクスと笑い出した。歓談している2人を見た周りからは「あの鉄仮面ライナルト教授が笑ってるぞ!」「リョージ君は彼と知り合いなのか?」「リョージ君を取り込めたら、ライナルト教授を紹介してもらえるんじゃない?」などと驚愕や打算の入った声を聞き流しながら会話を続けていると、試験を終えたルシア達が亮二が座っている場所にやって来てライナルトに会釈をしながら質問をしてきた。


「終わったよリョージ君!え?ひょっとしてこの方って…」


「ライナルトさんだよ。結構有名人みたいだけどみんな知ってるの?」


「当たり前じゃない!リョージ君だけが”ライナルト=ノスケ”を知らないと思うよ!王立魔術学院の主任教授で発表した魔術論文は10本以上、魔法陣にも造詣が深くて、王都に出回っている家庭用の魔法陣の多くは彼が開発したって言われているわ。王立魔術学院の主任教授就任最年少記録保持者で、若くて有望株なんだけど笑顔が無くて”鉄仮面”とも言われているわね。今のお顔を拝見した限りでは信用出来ない噂みたいだけどね」


「本人を前に的確な説明を有り難う。自分の好きにしてた事が運良く評価して貰えただけだよ。それと鉄仮面の噂は本当だよ。ただ今は軍曹と会って懐かしくて笑顔になっているだけだからね。ちなみに有望株ってのは何の事だい?」


 亮二の紹介にマイシカが驚きながらもライナルトについて知っている情報を伝えた。内容を聞いたライナルトは苦笑しながら補足を行い”有望株”発言の所に喰い付いて説明を求めると、思わず口籠ったマイシカに代わってルシアが笑顔で答えてきた。


「それはもちろん婿候補としての有望株ですよ。私とかどうですか?」


「立候補有難う。だが教授が生徒に手を出すのは規則で駄目だからね。少なくとも学院で優秀な成績を収めて、卒業してからもう一度声を掛けてくれるかな?軍曹の知り合い程度では名前もすぐに忘れてしまうから頑張ってね」


 ライナルトのふざけた答えに一同は笑うとライナルトの発言から度々聞こえてくる単語が気になったロサが質問を行った。


「ライナルト教授。さっきからリョージ君の事を”ぐんそう”って言ってますが何かの二つ名なんですか?」


 オルランドの問いかけにライナルトは笑いながら”試練の洞窟”での一連の流れを掻い摘んで説明した。ライナルトから説明を受けた受験生一同と、遠巻きに話を聞いていた試験官達は亮二を一斉に見ると何か言いたそうな顔をしたが、首を振って「リョージ君ならではだね」と溜息をつくと、その中の試験官の1人が思い出したかのように亮二達に伝えてきた。


「そうだ!試験はすべて終了だからこのまま結果を伝えておくね。全員合格だから安心していいよ。他の合格者が待っている大講堂に行くように」


 試験官から合格を伝えられた一同は喜びを爆発させながら大歓声を上げた。その様子を微笑ましそうに見ていたライナルトに試験官の1人が「主任も大講堂にお願いします」と伝えると、ライナルトは無表情で「ああ」と返事をして亮二達に「また後ほど」と声を掛けて離れていくのだった。


 ◇□◇□◇□


「ちなみに軍曹が連射試験を受けたらどうやったんですか?」


「え?10秒間でどれだけ魔力を撃てるかだろ?やっぱり絵画を描くように花をイメージして点描画にするかな?」


「やっぱり軍曹に試験を受けさせなくて正解でしたね」


「なっ!俺が試験を受けられなかったのはお前のせいかぁ!」

ライナルトが学院主任教授だったとは……。

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