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第86話 SUSHI HUJIYAMA GEISYA…FAR EAST国の NINJAでなんばーワン 

僕も摂理と同様に女物のYUKATAを着せられた。

宿側からの無料での貸し出しだった。


髪型は僕は右、摂理は左のサイドポニーテール。

ポニーテールはこの地域の定番だそうだ。


服装は、

ハイヒールの様なGETA、

ツーピースな上に、後ろが地面にすれすれなほど長く、

袖もやたら装飾過多で、

やたら派手で翻る様なYUKATA、

リボンの様なKANZASHI、

腕の長さ程もあるSENSU、

サンバにいる人が着ている服についてそうな羽を小さくしたものが背中に付いた帯、

これで、公衆の面前に出るのは少し勇気がいるのかもしれない。

若干コスプレ染みている。


因みに僕が藍と白で、摂理のは朱と金の色になっている。

色使いは完全にチャイナドレスだ。


「お客様方、今まで見てきた中で一番お美しいですよ。

まるでYUKATAを着るために生まれてきたように似合っています。」


このような服の為に生まれてくるのは断じてごめんだ。



そんな感想を胸に秘めながら僕と摂理は祭りの会場に向かった。

祭りは既に始まっていた。


サーザンサークラー



歌が聞こえてくる。

まさか、アレなのか?

本当にアレだったのか?

突込みが追いつかない。


矢倉の上では、例の保安官が、

シンバルの様なTAIKOを、

裸の上に、チェーンと注連縄で下半身を巻き、

前方に白鳥の頭を付けたFUNDOSHIを着け、

歌い、鳴らしながら舞っている。


ふと横を見ると、

死んだような目をしながら、


「こんなはずじゃなかった。」


「ああ、世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだよ。」



「間違いない。ホワンさんが勝手に町おこしに、

僕達のイメージだけでハイストの再現をするんだから。」


「再現じゃない、これはSAIGENだ。」



「…お前はまだいいよ、俺なんかホワンさんの義息子だぞ。」


「ジェーンさん可愛いからまだいいだろう。

俺なんかまだ独身だぞ。」



「…娘と妻が『あの』YUKATAを着るのは、

ハイスト人的に極めて微妙な気分だ。」


「そう言えばそうだろうけれど、

そのYUKATAを着たジェーンさんにホイホイされたお前が言っても説得力はねえ。」



「……それも間違いない。」


「どうかしたのか、さっきから顔色が悪いぞ。

しけた顔じゃ軽口も面白くない。祭りの日なのになんてザマだ。」



「ジェーンは帰ってきていないんだ。」


「まさか……すまん。

行方不明にジェーンさんもなってるとはな。」



そんな会話をしている、

黒髪の男と、被り物を付けた男がいた。

彼らが例のハイスト人だろうね。



「あの、すみません。

ハイストの方でしょうか?」


近寄ってそう尋ねると、

1人が、

「黒髪…、目は透明染みているけど、

もしかして君もハイストから?」


そう聞いてきた。

1人は真っ赤になってもごもごしていたけれど、

僕の頭上を見ては凄く落ち込んだような仕草をしていた。

凄く解かりやすい。


「いえ、違いますが、もしかしたら先祖にいるのかもしれません。」


「そうか…、因みに君も向こうの御嬢さんもこのお祭りの概要は知っているのかい?」

そう聞いてこなかった方の男の顔が一瞬で笑顔になった。


けれど、

「聞いています。」

僕がそう答えると頭上を見た後もう一回絶望したような顔に戻った。

実にわかりやすい。


彼の様な諦めがいい男は楽でいいけれど、

諦めが良すぎるせいで今だ結婚できていないことは理解できた。



「素敵な御嬢さん、良かったら僕と踊りませんか?」

この曲でかな?

ありえない。それはありえない。

タリーヤという国から銃職人に憧れてきたという青年が急に横から話しかけてきた。


ハイストの独身男性の方が非常に悔しそうな顔をしていて面白さすら感じてしまう。


「申し訳ありませんが、婚約者がいる身なので失礼します。」

嘘は言っていない。向こうの世界の僕には鈴廣和音という婚約者がいた。


けれどそう断ると、今度は摂理がムッとしたような顔をして、

「遥さんは私と踊りましょう。」


そう、強引に手を取られた。

…仕方がない。

曲がアレなのはしょうがないけれど、

「解かったよ、僕に着いてきてね。」


「はっはいっ!!」

――全力でも足りないだろうけど。




ハイテンポで踊るにはそれこそ既にBONODORIになってしまうだろうけれど、

それこそ今更だ。

ハイヒール染みたGETAで摂理の足を傷つけないように、

摂理が踊りやすい様に、映える様に、常にリードを気にかけて舞う。


気が付けば周りの人間達が踊りを止めている。

音楽も既に無い。


「摂理、もっと見せつけてやろうか?――やれるよね?」


「はいっっ!!」


指を軽く鳴らすとやっと気が付いたのか、

音楽が再開する。

サクソフォンを前面に出した、ジャズ染みたフラメンコのようだ。

ごちゃまぜ感が凄まじいけれど、

これはこれでいい。

先程とは速度が段違いだ。

でも、


「摂理、更に速度を上げるけど、大丈夫?」


「遥さんがリードしてくれるんですよね?」


当然だね。

一つ言わせてもらえるなら、この後は密着度が上がるけれど、

赤面して動揺で足を踏みつけたりしないで欲しいものだ。


足を打ち付けるようにしてリズムを取り、

僕に回りながら寄る摂理を背後から抱きしめ、

摂理の手を取り、上に挙げて摂理を回した後、

跪いて手を取るような姿勢から、一度離れ、もう一度接近し、

一度くるりと回った後、軽く距離を放して、

手を交差して繋いで僕に引き寄せるようにして、

摂理を股の下に通し、

交差する手を直す様にして方向を逆転し、

再び股の間から戻し、

また一度回った後、手を放して同時に回転し、

再び接触。


その後は突如動きを止めて、摂理に手を向ける。

ここからは摂理のソロパート。


「ちょっと、遥さん、無茶振りですよ。」


小声でそう言いながらも、それなりに無難に摂理は舞ってくれた。

摂理が一通り踊った後は今度は摂理が突如動きを止め、

今度は僕に振ってきた。


「今度は遥さんの番ですよ?」


面白い。僕のソロを見せてあげるよ。



もはや下駄とは呼ぶのもおこがましい似非和風ハイヒールの先を使って、

3回転。3週目に足を大きく上げて、

地面を踵落としの要領で強く打ちつけるように鳴らし、

一周更に回った後、腕を回し、

鹿が跳ねる様に軽やかにステップを踏んだ後、

今度は逆方向に回転する。


機械的に動く時計の針の様に、

腕はバネが張る様に伸ばし、

スカートといっていいYUKATAを翻し、

緩やかに摂理を後ろから抱きしめる様に移動する。


「後は、僕に任せてくれればいい。

摂理のソロも悪くなかったよ。」


「…ペアの方が私は良いです。」


そうか、ならば仕方ない。

この後は無茶振(ソロパート)りは止めておこう。


この後は大したミスも無く、

けれど決して無難ではない情熱的なダンスを終えた。


互いに少し汗をかいたようだ。

摂理の香水の匂いも強くなったような気もする。



踊り終えた後、周囲からは一瞬の沈黙の後、

拍手喝采が広がった。

元から全員立っていたのでそのままスタンディングオベーション使用だ。




タリーヤの男が、

「あの情熱には流石のボクも火傷しそうだね。」

と気障なことを言い、

例の独身男性が、

「あはは、無理だ…。」

と言い、

そして、現地のドライスコッチ人たちは、

「ワーオッ!!」

と各お国柄が見えるリアクションを取ってくれた。

割と気分がいい。



そんな時だった。

突如摂理と僕の頭上に何かが被せられた。

摂理の頭上を見ると、



赤い、被り物…。



たしかあの入口の保安官が言っていた。


赤い被り物は絶対に被るな、と。




摂理っ!!

そう言おうとした瞬間、何者かに強く腕を掴まれた。

その腕に肘を落とし込み、そのまま逆に腕を掴み上げて、

上に弾き飛ばした。

それによって僕の腕をつかんだ醜いエラが張った顔の男から逃れることが出来たけれど、


ハイヒールが原因なのか、

踊り疲れて油断していたのか、

摂理はそのまま引きずられて行ってしまった。


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