第82話 悪意の種 殺意の花
滅びゆく迷宮は無力と怒りと渇望と憎悪に塗れる男を残し消えていった。
「さて、どうなるのかな。この国の経済を支えていた支柱が一つ消えたわけだ。
きっと楽しいことになるね。」
「…楽しいですか?他者の不幸を予期することは?」
摂理、他人の不幸は蜜の味、そういう言葉もあるけどね、
それ以上に生きていく事に苦しみが増えれば生物は競争する。
狂想なる競争は生物を高みへ押し上げる。
「僕の厚意だよ、これは。」
「厚意、ですか?」
「そう、厚意だよ。」
そう僕達が話していると口を挿む男がいた。
「何が…厚意だ。……ふざけるなっ!!」
「ああ、別に理解してもらわなくてもいいよ?
悪意が無いと言えば嘘になるし、
愉悦だって感じている。」
「狂ってやがるぞ、てめえは。」
「? そうかな。まあ僕は正気だろうが狂気だろうがどちらでもいいけれどね。」
「私は、遥さんは人では考えられないほど歪に真っ直ぐだと思いますけれど。」
そうかな?まあ摂理がそう言うならそうなのかな?
まあ、どうでもいいけれど。
「直接的に大切な福音の死の過去と、
間接的にどうでもいい有象無象の死の未来を作った魔王を憎むのなら殺しにこればいい。」
「言われなくてもそうしてやる。」
「そうか、それは重畳だ。
さて摂理、そろそろ帰ろうか。
温泉にでも使って温まろう。」
「…はい。では…、さようなら。」
「殺してやる。絶対に、殺してやるぞーーーーーっっ!!!!」
哀れな負け犬の声を背に、
僕達はホワイトブルクを後にした。




