第39話 今回の遥さんは、やっぱり駄目だったよ。はなすなといっただろう。2番じゃ駄目なんですか。の3本でお送りします。じゃんけんポン。
さあ、勇者君、決戦といこうか。
まあ。戦を決めると書いても、
結末は、もう決まっているんだけれどね。
いつか摂理が言っていたよね。
悲劇を乗り越えて勇者は完成するんだって。
悲劇を乗り越えて勇者が完成するというのなら、
―――乗り越えられない悲劇を用意すればいい。
さあ、僕という迷宮に飲み込まれ朽ちるがいいさ。
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SIDE ARTHUR ~勇者~
幾つもの罠部屋を最短で超えた僕は、
罠を乗り越えて、次の部屋への扉を開ける。
扉を開けた寸前で、次の部屋が最後の部屋だと直感が告げる。
その部屋に入った時、ディーヌはいた。
何一つ怪我をしていない姿で。
だけど――――――――――アレは、どういうことだ。
何故かピアノの音が流れ始める中、
ディーヌが僕に微笑む。
3体の既死者を伴って。
しかもその既死者達は、
ランスさん、神父さん……そして、ブラ?
どういうことなのか全然分からない。
何がどうなっている。
肌が青白く、その服は逆に赤黒く血でにじんだ全身から骨が付き出したランスさんと、
骨は出てないものの同じような状態で、無くなった首を胸から生やした神父さんを両脇に置き、
四つ這いで這いつくばる、
僅かに肉が残る骨になったブラの様な歩骸骨に腰かけて、
妖しく嗤うディーヌ。
…そんなはずはない。
そんなはずは、絶対にありえない。
ディーヌはそんなことは絶対にしない。
何かの勘違いだ。
勘違い……だ?
「」
僕がそう思っていた時だった。
ディーヌが手の平を上に向け、僕に向けて片腕を伸ばす。
そして手のひらを返す様にして僕を指さした。
それと同時に
ランスさんと神父さんが僕に剣と拳を振り上げて襲い掛かってきた。
ディーヌが魔王?
だったら僕は…僕は…。
僕は何もできないままランスさんの剣に身体を刺し抜かれた。
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SIDE HARUKA ~管理者組~
何の感慨も感動も感激も無い。
あるのはただ、
確定した勝利だけ。それでいい。
だというのに、
「ははははは。楽しかった。愉しかったよ。少しだけ、だけれどね。
これが愉悦ということなんだね。
じきにどうでもいいことに成り果てるのだろうけれど。
やっぱりこの世界は優しくない。」
僕はチーム既死者達もとい、
チーム元勇者チームを処分した。
勇者から完全な死者をも甦らせ不老とし、生者にも一種の保険になるという、
アイテムという言葉では若干言葉が届かない水。『星命の泉水』と、
特別な絆のある高位侵入者を倒した特典としてなのか、
互いの存在を繋げさせるこちらもふつうではないスキルである、
『誓いの絆』を手に入れた。
このリンクを繋げる事は、存在の共有。
他方が強化されれば片方も強化され、
他方が死ねば片方も死ぬ。
互いに生き、互いに死ぬ。
「水は当然何時か元の世界に関われる時があれば、
お母様の遺灰の為に取っておくとして、
取り敢えず、摂理に預けておくよ。
スキルの方はもう使う相手は決まっているしね。」
「ちょっと、照れますね。えへへ。
ほら、それって何だか結婚指輪を連想させるような名前ですし。」
「摂理は不思議なことを言うね。
僕の中では、僕と僕同士が完全に繋がりを精製することに、
照れも何もないのだけれど。」
「………へ?」
「僕がこのスキルを使う対象はデュカリスだ。」
「蜂に、負け……、私って…。」
「…どうしたんだい摂理。」
「いえ、何でもないで――――一つ聞いていいですか?」
「何かな。」
「遥さんは、2番じゃ、駄目なんですか?
完全じゃないと駄目なんですか?
不完全じゃ、駄目なんですか?」
「僕は1番と2番があれば1番を選ぶし、
完全と不完全があれば完全を選ぶ。
摂理もそうするだろう?」
「ですよね。」
「そうだね、それが何か?」
「いえ、何でも、無いです。」
僕は世界を敵に回す。
直接はまだ大した手を打っては来ていないけれど、
きっと絶対に勝てないような何かがあるはずだ。
そんな敵には完全な1番でさえも最低限の土俵に立つための道具にしかなれない。
僕は、絶対に勝利する。
僕以外の誰にも負けたりなんかはしない。
だから、
だから僕は、
―――――――――――摂理の呟きを聞き逃した。
「不完全じゃ、偽物じゃ、駄目、なんですか…。」




