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外伝 とある勇者の軌跡 昏い洞窟の明るい話

レイウスと二人で通路を歩いていると、通路の向こう側にやけに明るそうな場所があった。

取り敢えず今まで使っていた暗視用の木の実の効果が切れかかっていたのでちょうどよかった。


通路を抜けた先にある場所は、幻想的な明るさを持つ巨大な地底湖だった。

巨大なドーム状になっている場所で、


照夜草や月夜草等、光を放つ植物が他の植物たちに囲まれて湖の周囲を覆う陸地に自生し、

その草むらから漏れる光を光沢がある壁や天井が反射してはこの空間全体が仄かな明るさに満ちていた。

月見草系の植物には少し思い出があるけど、今はそれは置いておく。


そしてその湖の中央には謎の祠がある。

こういう時は大体何か冒険者に優位なラッキーゾーンであるか、封印されしイベントボスだったりする。

僕たちの目の前に1つ、そして向こう側からも一つ道が出来ていて、

祠の方に続いていた。



水に浸かった草むらの中には、単色海芋(モノカラー)三色海芋(トライカラー)等が自生している。

一際大きくて蠢いていて目立つのは全色海芋(フルカラー)だけど、

あの全色海芋(フルカラー)はモンスター化していてわざわざ倒すのは無理だと言っていい。

ダンジョンの中で育つ生物は時折モンスター化したりするから嫌だ。


海芋(カラー)の花言葉は清楚、淑やか、美しさ。らしい。

これほどまでに群生していることは非常に珍しいけど、

ダンジョンの中だけに何かを暗示していると思ってしまわなくもない。

それにしても上手く毒抜きをすれば解熱作用や殺菌作用が出来る扱いは難しいがいい薬草だ。

ああ、薬草がいっぱい。


海芋(カラー)系の薬草いっぱい。

これがダンジョンの中でなければ大量に持ち帰りたいんだけど。」


「それって水の中に足を突っ込むって事だろ?

植物の生え際からして。

このエリアの水の中って大体ヤバいじゃねーか。」


確かに多種多様な狂暴な肉食魚モンスターが蠢いているという話を聞いたことがある。

鉱物を食べて成長する霰石灰魚(カルサイトフィッシュ)方解石魚(アラゴナイトフィッシュ)

大理石魚(マーブルフィッシュ)等の石灰魚種系も何故か人間を襲うという。

その理由が吸収による強化や空腹を満たすなどの目的で無く、

只の暇つぶしと言う研究結果が出ているというのは、


モンスターとはいえ、魚にそんな知能があるのか?

人間は暇つぶしで殺されるのか?

そもそも真面目に研究した結果なのだろうか?


色々気になる所はあるけど、

発表したのが誤発表をしてもそれ以上の正しい成果を上げれれば良いと豪語するナントカナール博士なので3つ目の疑問が正解だと思う。


「でも、水の中に何かいるようには見えないけど?

不思議なほど静かだし。」


「それって逆に何かヤバい兆候じゃないか?

寧ろ水から離れたところで草を焼き払いながらモンスターを燻りだして倒すってのはどうだ?」




海芋(カラー)系以外にも多様な薬草が並んでいるっていうのに、

それを焼き払うなんてとんでもない。」


「…はあ、まあいいけどよ、

ところでさっきからアレ、近づいてきてない?」


「まさか? 全色海芋(フルカラー)も植物系モンスターの例に漏れずあまり動き回らないって聞いたことがあるけど……」

っていうかかなり近づいてきているし。流石探知力が高い種だけある。

他の海芋(カラー)系薬草の辺りを沿って迫ってきているけれど、

あの大きさと蠢きで気が付かない訳があろうか? いや無い。


「その上位種で無いだけマシじゃないか?」


そうレイウスは言うけど、

鮮色海芋(ハイレゾカラー)がいないだけマシと言っていいのかどうかはわからない。

既に全色海芋(フルカラー)だけでお腹一杯だ。

鮮色海芋(ハイレゾカラー)なんかだったら君のお兄さんでも勝てるかどうかわからないよ。


「僕達じゃ精々倒せたとしてモンスター化した最初期段階の単色海芋(モノカラー)位だって。」


「じゃあどうする?」


左方面からは全色海芋(フルカラー)がこっそり近づいてきているし、

右方面には粘撒蒲桃(ネバネバエレメア)というこんな暗い洞窟エリアのような所にいる筈がない植物モンスターが構えている。

背後には粘菌たちがまだ退散しているかどうかはわからない。

後少しすればいなくなっているだろうけれど。

と、いうわけで、


「正面に突き進むしかないか。」


「そういうことだ。」


何だかこれは誘導されている気がしないでもないけれどね。



湖の上にある道をひたすら走っていくと今度は祠の前に分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)が構えていた。

光を浴びている限り、触れたものを分解する能力のある恐ろしいモンスターだ。

けれども何でそんなモンスターが、こんな光の少ない(・・・・・)エリアに存在するんだ?

ただ単純にこのエリアで発生してその中でも光が多く入る此処にやってきたのか?

いや、移動能力は高くは無い筈だ。そもそも動けただろうか?

ツッコむところは多くあるが今はそこじゃない。


そんなモンスターを見て僕が思ったことは、


――――――使える。

だった。


後ろに回り込んで分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)の近くで待ち構える。

分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)自体は活発に動き回るような存在ではないし、

上位種でもない限り少ない光の中での非接触系の遠距離攻撃手段はないと言っていい。


そうしている間にも全色海芋(フルカラー)は近づいてきた。

もはや身を隠す必要が無いからか先程よりも接近速度が少しだけ上がっており、

分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)を踏みつけるようにして僕達に迫ってきた。


「今だ。」


「おう。」


照明系のアイテムを使って分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)に大量の光を照射する。

分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)は光が十分に照射されていれば、

触れただけで物を分解できる能力を持ったモンスターだ。


今、全色海芋(フルカラー)獲物(ぼくたち)を食べるために足元にある弱弱しい花を踏みつけた程度の認識しかない、

いや無かっただろう。

現在進行形で足元から順番にまるで分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)に沈み込むように身体を分解されていっている。


もはや花頭部だけとなった全色海芋(フルカラー)を確認して光の照射を止め、

一応止め程度に剣を突き刺して収納箱(ストレージボックス)に格納する。


同じように分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)の前にまで草むらに潜んでいるモンスターを誘導して分解させて、

死んだところで分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)への照射を止めて収納箱(ストレージボックス)に格納する方法で、


髑髏草(ドクロソウ)×4

粘撒蒲桃(ネバネバエレメア)×1

混沌原生生物(カオスアメーバ)×1

陽光蘭(サニーオーキッド)×1

陽光現生生物(サンアメーバ)×1

を倒した。



この周辺にはモンスターが非常に少なかったのでおびき寄せるのには苦労した。

レイウスが、

「流石にさっきの粘菌たちをおびき寄せてここでまとめて分解ってのは……流石に無理か。」

と言ったのには、


「無理だろうね。」

と返すしかなかった。

本人は最初の一瞬はいい考えと思ったのかもしれないけれど、

直ぐに自分でわかったのだろう。

物量で押し切られるって。

分解されていく粘菌たちの身体自体が光を塞いで分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)を無力化するって。


髑髏草(ドクロソウ)は髑髏の実を幾つも付けたモンスターで草むらの中を歩き回っていた。

混沌原生生物(カオスアメーバ)は粘菌系に近似種のモンスターだ。


陽光蘭(サニーオーキッド)全色海芋(フルカラー)と同じく、

モンスター化しない普通の薬草もある植物で、

薬草売りの僕としては何故モンスターになったと嘆かずにはいられなかった。

加えて強力な光を浴びれるところでしか咲かない花なのにどうしてこんなところで?

と思ったけれど、逆に光が得られないからモンスターになったのかもしれないと考えなくもない。

他の何かで栄養を取るためにそうなったと考える分にはいいけれど、

栄養分など望むものを摂取できなかったらモンスターになる薬草がそこらじゅうに在ったら大変だ。

できればそんな可能性はないと思いたい。


陽光蘭(サニーオーキッド)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)に当てようとしたアイテムの光を受けた時、

その光に手を伸ばす様にもがきながら分解されていった様子にはちょっと同情してしまった。


まあ、そこまではいい。

問題は陽光現生生物(サンアメーバ)を分解捕食した時だ。


陽光現生生物(サンアメーバ)の『発光』の能力を取り組んだのか、

自分で発光して分解能力を行使できるようになっていた。

更に上位に進化して高位(メガ)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)になったその様はもう無敵と言ってもいい。

軽くお菓子を投げたらぶつかる前に展開されている光のバリアーにぶつかっただけで分解されていった。


「…今ならさっきの粘菌の群れ倒せるんじゃないか?」


「奇遇だね、僕もそう思っていた。

やる意味はないだろうけど、やってみる?」


先程から分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)を利用した簡易モンスター殺害法で、

変にハイになっていた僕達はあっさりそんなことをしてしまった。


急いで先程の場所に戻ると、

粘菌の塊は今まさに穴の中にある元の部屋に戻って行こうとしていた。

だから、思いっきり石を投げつけた。


そして、外した。


「駄目だな、こうやってやるんだよ。」


僕の横でレイウスが剛速球で石を投げつけて、

やっぱり外した。

でもその振動か何かは感知したようだ。

粘菌の塊が再び穴から顔を出してきた。


「ほら、な?」


「……。」



「……。」


「……。」



「なんだよ、結果としては成功だろ?」


「……。」



「ごめん。」


「うん。」



もう一回僕が石を投げると今度はしっかり当たった。

けれどぶつかった石を取り組んでしばらくすると吐き出した。

そして再び穴に戻って行こうとしたので今度は収納箱(ストレージボックス)の中から出した髑髏草(ドクロソウ)から実を1つをもいで、

思いっきり投げつけた。


実を取り組んだ粘菌たちは今度は食べられるものがこちらにいるという事をしっかり判断したらしく、

再び割と早い速度で僕達を追ってきた。


二つに分かれる通路の中逃げ込んで、その手前で身体を二つに分岐させて2正面で探してきた粘菌の塊に再び石を投げつけた。

調子に乗ってどうせなら全滅させたいとか思ってしまったのだ。


「やりすぎだろ…。」


「それぐらいでいいんじゃない?」



「でも、結局アレって群体だし、

幾ら分解しても生き残ってるところは分裂すれば損傷はそうないぜ?」


「あっ。」


まあ、別に気にしないでおこう。


「……。」


「……。」



「なんだよ、結局、高位(メガ)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)で何とかなるじゃないか。」


「……。」



「ごめん。」


「おう。」


そんな漫才をしながら走って、

急いで祠の所まで移動して、高位(メガ)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)の後ろに隠れる。

勿論触れたものを分解する光のバリアーからは距離を取ってだ。

高位(メガ)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)ごしにまるでチューブの中から物を押し出すような形で、

粘菌たちがこっちへハチャメチャに押し寄せてくる。泣いてる場合じゃない。

いや、別に笑ってる場合でもないけど。


光のバリアーに触れる端から次々と浄化されるように分解されていく粘菌群。

見ていて気持ちがいい。


暫くすると分解され尽くしたのか、粘菌たちは最後の1体を除いて何処にもいなくなっていた。

その1体も体の半分以上が欠けてピクピクしていたので、

剣で斬りまくって収納箱(ストレージボックス)へ収納した。

スライムと違って物理で倒し易くて単体だと再生力が低いのが粘菌の楽な所だ。


「ところで、さ。」


「ああ。オレも同じことを考えてた。」



「「『コレ』、どうする?」」


自発光できるようになって常時無敵染みたようになったうえに、

粘菌の群れを大量に分解して一気に(ギガ)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)になった目の前の『コレ』。

暴れられたらもはや対処ができない。


っていうか今も巨大化した身体に見合ったバリアーで祠を分解しようとしたり、

できなくて更に出力を上げてバリアーが広がったり、

結構危険だし。



「マジでどうするよ、コレ。」


「笑えばいいんじゃないかな。」



「笑っていてどうにかなると思うか?」


「さあ、どうにもならないと思う。」



「だよな。」


「だよね。」



「……。」


「ごめん。」



「おう。」


仕方が無いので先程やった面白くも無い漫才の焼き増しをしてみる。

そんなことをしていると、突如、(ギガ)分解光(フォトキャタリスト)(ローズ)が地面から根を抜いて蠢きだし、

祠に暫く根を巻きつけたり何だかいろいろしていた後、粘菌が押し寄せてきた方とは逆の方向へ去って行った。


「行っちまったな。」


「行っちゃったね。」



「良かったな。」


「良かったね。」



このままいくと面倒くさい漫才をまたすることになるので本題に入る。


「ツタが1本落ちてるよね。

これを使えば強そうな武器ができると思う。

この大きさと長さならその爪の1セット位の量は余裕であると思うんだ。」


「えっ、コレ、くれるのか。」



「うん。別にいいよ。」


「ありがとな、ゼット。」

レイウスはそう言うと収納箱(ストレージボックス)に仕舞い込んだ。

まあとてもじゃないけどそれ以外で運べそうにないしね。



「それともう一つ、この件はなるべく黙っておこう。」


「そうだな。偶々落ちてたものを拾ったことにしておかないとな。」



「だって、そうしないと僕達、ボスクラスか中ボスクラスかは知らないけど、

滅茶苦茶強力なモンスターを作り出したことになるからね。」


「そうだな、コレは落ちてたんだ。

コレがどのようにできたかなんてオレたちは知らないんだ。うん、そうだ。」



そうレイウスが無表情で笑ったと同時に、

湖から伸びてきた何かにレイウスは引き込まれた。

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