アクターズ「第十八輪」-煙か吐息か-
この物語はフィクションです。日本国内では未成年の喫煙行為は、法律で禁じられています。ですが、日本が崩壊してしまった社会なので、各地で法があったりしますが、基本的には誰が喫煙しても良いという背景がこの作品にはある為、描写はその様になっております。
防寒具を作ってもらったメビウスと調葉師の少女は、いよいよ目的である特級調葉師のいるという山を登るべく麓に到着した。スギなどの木がそこら中に生えていて、まるで来るものを拒むかのようであった。
「これが、あの特級調葉師のいるという山ですか...これまでの旅路も厳しかったんですが、今回はことさら大変そうだ」
メビウスはその光景を見てぼやいた。すると調葉師の少女は、
「メビウス、そんな事を言っていてはこの先どうなるかが知れたものよ。あなたは北の国の難民の惨状を見たんでしょう。世界を見るだけで言葉を漏らすだけではなくて、世界を知るための力を得るの。先を急ぎましょう。」
「そうだった...。僕はいつの間にまたいくじなしになったんだろう...。心の火種を燃やし続けろ、自分。」
そうして2人は麓の雑木林を抜けると、やがて山の登り口にたどり着いた。どうやら「日本時代」の名残があるようで、ひどく錆びた看板がそこにぽつんとやけにみすぼらしく残っていた。それは、なんだか自分たちの行く末の様に感じられたメビウスではあったが、ともかくそうは言っていられない。防寒具を羽織ると、2人は山の奥深くまでの歩みを進めていった。
大体3時間は登っただろうか。雪があちらこちらに残ってはいるが、ひょろひょろとした草やか細い木がちらほらとある。
「なんだか、まだ大変じゃない気がします。これまでの道のりや経験があったのもあるけれど、自然が残っているのはほっとします。でも、雪があるのはなんだか不思議です。だって、僕は雪をこの目で見たことはなかったから。」
メビウスは雪の滅多に降らない土地で生まれ育ち、「日本時代」を生きた母親や村人に雪の話を聞いたことしかなかったからである。
「これが本当の雪なんだなあ。冷たいや。ちょっとしゃりしゃりしている。食べてみようかな」
メビウスはおもむろに落ちていた雪を口に運んだ。その途端、
「うわあ!!!キーンってしました!こんな感覚初めてだ!」
「メビウス、雪は冷たいものよ。私が住んでいたところではよく、これを丸めて雪だるまというものを作ったわ。もっともそれは子供の遊び。雪を食べるなんて、普通は大人になったらしないわよ」
「あ、そうなんですか...なんだか恥ずかしいな」
メビウスは少し頬を赤らめていたが、笑みがこぼれていた。初めて経験する者の前では、誰しも子供の様になるものなのかと、なんとなく思ったからだった。
「さて、メビウス先を急ぎましょう。雪と遊ぶのはまた今度。私たちにはしなければならないことがあるのだから」
「分かりました。ちょっと傾斜がきついですが、このまま行きましょう」
2人は奥へ奥へと再び足を進めた。やがて、あたりの植物は雪に埋もれて視界から姿を消し、次第に世界は白銀色に変わっていった。ちらほらと雪も降り始めた。
「うわあ、こんな景色生まれて初めてです。なんて綺麗なんだろう。世界が一つの色で、染まって溢れて、手で掴めるのに掬いきれないなんてなあ。」
メビウスは雪を拾ってそう言う。
「メビウス、ちゃんと前を向いて歩きなさい。転んでしまったら医者もいないのだから、命取りになるわよ。」
調葉師の少女がそう言った矢先に、
「うわあああ!!!」
メビウスは思い切りそのあたりに転んで尻もちをついてしまった。
「いたた...雪って危ないんだなあ」
「メビウス、あなた雪は綺麗なだけじゃないのよ。家の屋根にこんなたくさんの雪が積もってみなさい、たちまちぺしゃんこになるわよ。雪は綺麗なんて考え、たちまち溶けて消えるから、まあとにかくしっかり地面を踏みしめながら歩きなさい。私が前を歩くから、あなたはその後ろをついてきなさいな。」
「はい、分かりました。しかし痛かった...」
そう思うメビウス。前には降り積もった雪と厳しい勾配の斜面の道。命を脅かす死と繋がっている一本の道。だが後ろを振り返れば、白銀の世界が一面に広がっていた。この景色を、目に焼き付けておきたい気持ちと、道を急がねばならないはやる気持ちが心の中で相反するのを感じつつ、メビウスは調葉師の少女が作った足跡の命綱を確かに踏みしめ、山を登っていった。
このお話を読んでいただきありがとうございます。喫煙者なものでしてタバコの銘柄の違いとか煙の技とかで戦う世界があったら面白そう!と思ってこの作品を描き続けています。
文章が読みにくい、こうすると面白くなる、などのご意見などございましたら是非よろしくお願いいたします。




