アクターズ「第一輪」-ピースマン-
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「アクターズ」第一輪
上はこの物語に登場する、「ピースマンというキャラクターのイラストです。
大戦があった。世界は核戦争による火に包まれ、各国の都市は塵芥と化し、大多数の人間は死に絶えた。その後、生き残った人間は細々と集落を形成し、日々非文明化した、荒廃し切った社会を生き抜いていた。そんな中、ある1人の青年が生きていた。
「今日の日雇いはこれで終わりだ!賃金は手渡し、並べ並べ!」
ここはとある集落。そこでは日々建築物を建てるための日雇い労働募集が行われており、青年は今日も少ない賃金を稼ぐために働いていたのだった。
「今日も労働、きつかったなあ」
「おら、給料。仕事が終わったらさっさと帰んな」
そう言って、手渡される給料はたった7000園。これでは、せいぜいその日の食料を買って家賃を払って終わり。市場の飲み屋に行ったら、焼酎を2杯に少しつまみを頼めば終わってしまう、そんな端金だ。
「これっぽっちか、やっぱり今日も少ないな」
そう言って青年は、ポケットに給料を突っ込むと、市場へと足を運んだ。彼の目的は、「タバコ」だった。
この世界では、核戦争後世界中に放射線がばら撒かれ、被曝した多くの植物が遺伝子変異を起こした。タバコはニコチンという物質を産生し、多くの人間がそれに依存していたというのは日本時代には常識の事実だった。しかし、核戦争後の世界では放射線による遺伝子変異により、ネオニコチンという物質がタバコから産生される様になり、またその物質には非常に強い依存性があり、荒廃し切った社会を生きる人間たちにはその依存性とは裏腹に得られる快楽が生きる糧となっていたのである。
そして、青年もその1人であった。
「ネオニコタバコ、3本。5000園」
「へいまいど!お兄ちゃんもすっかり、『灰人』だねえ」
「...」
青年はもともと、屈強な体をしているわけでもなかった。精神的にも強いわけではない。そんな彼が日々の日雇い労働をやり抜き、今日も生きていると実感するには、たとえ日雇いの金をほとんど注ぎ込んでしまっても、ネオニコチンタバコにふけるしかなかったのである。
ボロボロのライターで火をつけて、タバコを強く吸い、肺まで入れて煙を吐き出す。
「...うまいな...」
煙はどこへともなく立ち上り、風に揉まれてどこへやら飛んでいく。
「僕の人生みたいだな。金をタバコに変えて燃やして、その煙も形がなくて、弱い風にも吹かれて形さえ残さない。」
青年は、そんな思いを傍に抱きながら、ネオニコチンタバコを吸っていた。自分の人生の虚しさ。すぐに揺らぐ決意。弱々しい体と精神。それらを全て象徴するかの様に、煙は立ち上っては風に揉まれて曖昧で、あやふやな形になり、四方へと消えていった。
「さて、そろそろ家に帰るか」
そう言って青年は家に帰ろうと喫煙を終え、市場を後にしようとする。すると、タバコの副作用でふらつき、市場を仕切っているチンピラ集団に運悪く当たってしまった。
「おい、兄ちゃん、どこに目えつけて歩いてるんだ?」
「こりゃ慰謝料請求しなきゃだなあ。いくら持ってる」
「え、でも僕はそんな強くぶつかってないですし...しかも、そもそも...」
「御託はいいんだよ」
「俺らは仕切り屋。お前はそのシステムで生きるだけの人間。どうなるか、わかるよな。」
そういうと、輩は青年を思い切り拳で殴ると、それからはもうあっという間で、青年は見るも無惨な姿にされてしまった。
「じゃあ2000園、しょっぺえけど慰謝料な」
「次は正面に目をつけて歩くこった」
そう言って、カツアゲに会い青年はその日稼いだ全財産を全て奪われ、しかし立ち上がることもできずに、ただ悔しさと怒りを心に秘めたまま地にふせっていた。
「さあ行こうぜ」
「けれどこれっぽっちじゃ酒のアテにもなりゃしねえ。絡む相手間違えたな笑」
そう言って、輩は立ち去ろうとしていると、少し遠くの飲み屋から陽気な老人の声が聞こえる。
「がはは、この焼酎、何か混ぜ物でも入ってるんじゃねえか?道理で酔いも回らねえ」
「お客さんは目が聡いですね苦笑、ええい、旅のお客さんだ、今日は勘定は半額でいい!」
「おっ、気前がいいじゃないの。今日は飲みにも火がつかねえ。これでしまいだ、勘定。」
そういうとその老人は30000園をなんの躊躇いもなくさっと出すと
「釣りはいらねえよ」
といってその飲み屋を後にし、青年たちの方へ近づいてきた。
「よ、青年」
「...なんですか...哀れみや同情ならいりませんよ」
「お前さん、ああされて悔しくないのかい?どれ、目を見せてみな」
半ば強引に目をその老人と合わせられた。そして老人は言った。
「火花、散ってるじゃねえか。いい目だ、気に入った。ちょっと待ってな」
そういうと老人は、チンピラ集団に向かっていって、一言言った。
「悪いが兄ちゃん達。ちょっと熱くなり過ぎたんじゃんねえのかい。俺はちょうど、お冷が欲しくてな。」
そういうと老人は、タバコを口に咥えると、いきなり輩の1人に向かって拳を振るった。輩の1人は軽く2-3mは飛んで、屋台の天幕にめり込んだ。
「おい、お前、俺たちは一応この地域を支配している組のもんだ。手出ししたってことはどうなるか、わかるだろうな。」
「なあに、ちょうどお冷が欲しかったところだ。」
そういうと老人は、数人の集団をあっという間に殴り、蹴り、あっという間に戦闘不能状態にしてしまった。
「覚えてやがれ!糞じじい!」
そう言って連中はすぐに逃げていった。
「おい、兄ちゃん大丈夫か?」
青年に老人は手を差し出す。そして青年はその手を、情けないと思いながらも掴んでしまった。
「助けてくれたのはありがたいと思っています。でも、僕は、弱いから...自分の身を自分で身を守ることもできない...」
「なあに」
「お前さんの目を見た時、熱い火花を感じたんだ。だから、助けた。他に理由はあるか。とりあえず、これじゃ飲み足りないだろう。一緒に飲もうじゃないの、え?」
そういうと老人は青年を軽々と担ぎ上げると、飲み屋に青年を連れていった。
「ふはー」
「お、兄ちゃん良い飲みっぷりじゃないの」
「日雇いやってるんですけど、お金がたまらなくって、あはは」
「そうかいそうかい、姉ちゃん、こいつに焼酎もういっぱい!うまいつまみもつけてやってよ!」
「あいよ」
そうやって、2人は飲み明かした。老人はまだまだ余裕がある様だったが、もう青年はべろべろだった。
「それひゃあ、僕はこのひぇんで帰りますから」
「おう、わかった。後、お前さんにひとつ言っておきたいことがある」
「なんれすかあ」
「お前さんには、火種がある。目を見た時確信した。もしもお前が強くなりたい、そう思ったなら、あの集落外らへんにある草むらでお前を待ってる。来るか来ないかはお前の自由。今日はもうこれでしまいだ。じゃあな」
そういうと老人は宿へと消えていった。
「強くなる...か...」
青年の心に、ある想いが燻っていた。それは喧嘩に負けたとか、見ず知らずの人間に奢ってもらった情けなさではない。自分の人生の中の罪、それが一番自分の中に刺さったままだったのだ。
「日雇い以外、やることもない。明日、草むら、いってみようかな」
青年はそう思いながら、ふらつく足取りの中何とか家へと戻り、色々と考え事をしながら眠りについた。
このお話を読んでいただきありがとうございます。喫煙者なものでしてタバコの銘柄の違いとか煙の技とかで戦う世界があったら面白そう!と思ってこの作品を描き続けています。
文章が読みにくい、こうすると面白くなる、などのご意見などございましたら是非よろしくお願いいたします。




