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第1章 猫と琵琶
雨上がりの朝、田んぼのあぜ道に赤鬼鋼兵衛は腰を下ろしていた。
銀髪が朝の光を浴びて淡く輝いている。膝の上には白い猫が丸くなり、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
鋼兵衛は大きな手で琵琶を抱え、低く艶のある声で歌い始めた。静かな調べが水田に広がっていく。
猫は目を細め、喉をゴロゴロと鳴らしながら、時折鋼兵衛の指に頭を擦りつけた。
(……本当にこの男は、私をただの猫だと思っているのだろうか)
白猫の姿をした九尾の狐・白雪は、心の中で小さくため息をついた。
鋼兵衛はそんなことなど知る由もなく、猫の頭を優しく撫でながら、のんびりと琵琶を爪弾き続けた。




