22話
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「こんにちは。フルールの皆さん」
「はい、こんにちは⋯⋯」
「私は、WIO日本支部の支部長秘書をしております、森山薫子です」
まぁこうなるよなー⋯⋯。
ワルキューレ・コードとのコラボ配信後、有名DIVERの連絡先を手に入れ、ホクホク顔で帰った私たちに来たのは、WIO日本支部からの呼び出しだった。今日は平日だというのに、謎の力で学校には私が休んでも問題無い旨のお達しが来ており、家の前には豪華そうなリムジンが停まっていた。その為、素直にWIO日本支部へやってきたのだ。
森山さんの用事は十中八九、エリクサーに関する件だろう。穏便に済むと良いけど。
「まずは、アークデーモンの討伐、大変助かりました。ありがとうございました」
「いえいえそんな!降りかかる火の粉を払っただけ、って感じでしたので!お気になさらず!」
「危うく、有能な2級探索者を失うところでした。それに、特級モンスターの研究材料は幾つあっても足りないくらいです。WIO日本支部を代表いたしまして、最大限の感謝を申し上げます」
そう言うと、森山さんは90度腰を曲げる。私は慌てて頭を上げさせた。こんなに偉い人の頭を下げさせてたら、小心者の私には心臓に悪い。
森山さんが笑顔で顔を上げると、近くにいた別の女性に何かを持ってこさせる。それを受け取った私は、それが振込明細書であること、その金額が10億円であることに驚いた。
「じゅっ⋯⋯!?じゅじゅ、10億円!?」
「とりあえずの報酬です。特級討伐なんて、早々ありませんから、アークデーモンの討伐報酬額はまだ、内部で調整中なんです。最低でも10億は行くと判断しておりますので、とりあえず10億だけ受け取っておいてください」
10億だけ、とは⋯⋯。いやまぁ、結構とんでもないレベルのモンスターを倒したみたいだし、その報酬が宝くじの1等より少ないのはヤバいか⋯⋯ヤバいのかなぁ⋯⋯分からない。
私がその金額に恐れ慄いていると、女性がまた新しい何かを持ってきた。恭しいプレートの上に置かれていたのは、私たちの探索者証?のようだ。
「今日付けで、西条凛音さん、西条有紗さん、西条紗々さん、西条芹那さんを特級探索者とします。これはその探索者証です。今持っていらっしゃる探索者証は回収いたしますので、帰り際に提出してください」
「!?と、特級!?」
「えぇ。WIOの各国支部長で行われた会議によって、満場一致でフルールの皆さんを特級にすべき、と判断されました」
私は、プレートの上に置かれている、やたら荘厳な雰囲気の探索者証を、震える手で受け取る。アリサたちは、よく分かっていないのか、何も考えてない風に探索者証を受け取った。
「勿論打算もありますよ。WIOは、常に戦力不足です。あなたたちのような有望株は、なるべくガッチリ確保しておきたいんです」
「な、なるほど⋯⋯」
打算がある、というのは私的には安心材料だ。異世界でもそうだったが、借りを作るのが一番怖い。後から何でもかんでも言えたりするので、なるべく借りは作りたくない。
しかし、特級探索者か⋯⋯試験受けてなくて6級にもなってないのに良いのだろうか。各国支部長が良いと言ってるんだから、良いんだろうけど。
そんな事を考えていると、森山さんが「さて」と切り出す。いよいよ本題かな。
「西条凛音さんがドロップいたしました、エリクサーについて、お話があります」
「はい⋯⋯」
やはりエリクサーの話か⋯⋯。気が重たい⋯⋯。
「まずはこちらの一番の要望を伝えますね。⋯⋯エリクサーを、2000億円で売却してくれませんか?」
「嫌です」
ここはバッサリ告げた。私の目的の為にも、エリクサーは集めておきたい。金額云々では無いのだ。⋯⋯オークション額の1/10なのが気になるけど。
森山さんは、分かっていたかのような態度で、特に動じた様子は無い。
「そうですか。では次の要望です。⋯⋯そのエリクサー、オークションに出してくださいませんか?」
「嫌です」
これもまたNOだ。理由は同じ。
「⋯⋯エリクサーは効果が強力すぎて、世界中の権力者が敵になりかねないですよ?」
「大丈夫です!私たちが世界一強いので!」
「⋯⋯そうですか⋯⋯」
私の言葉に、森山さんは納得した様子だ。多分、私たちのことを心配して言ってくれたんだろう。エリクサーを手放しておかないと、下手したらしょっちゅう命を狙われるかもしれない。そうなる前に、エリクサーを手放すよう説得するつもりだったのだ。
「それでは、これが最後の要望です。フルールさんに、WIO日本支部の職員——1級探索者相当を2人、2級探索者相当を10人、護衛として付けさせてください」
「護衛、ですか?」
「あなた達が思っている以上に、汚い手を使ってエリクサーを取りに来る輩は存在します。なので、護衛を付けさせていただきたいんです。1級相当の2人にはフルールの皆さん自身を、2級相当の10人には、皆さんのご家族やご友人など⋯⋯人質に取られかねない方々の護衛をさせて欲しいのです」
そこまで言うと、森山さんは再び頭を下げた。
なるほど、人質か⋯⋯。確かに、私たちはめちゃくちゃ強いから大丈夫だが、私たちの両親や、数少ない友人の桜が人質に取られると少々面倒かもしれない。⋯⋯いや、面倒では無いか。全く問題無いな。⋯⋯しかし、その人たちが人質として誘拐などされたりすれば、心に傷を負う等はあるだろう。救出する力は間違いなくあるが、完全に守るのは難しい。となると、この誘いはありがたい話だ。
「ありがとうございます。護衛のお話、お願いしてもよろしいですか?あ、でも私たちの護衛は大丈夫です。1級の職員さんも、私たちの周りの人を護衛して欲しいです」
「しかしそれは⋯⋯いえ、分かりました。そのように致します」
森山さんは私の考えが分かったようで、私の提案を受け入れてくれた。これがエリートの中のエリートか⋯⋯シゴデキだ。
こうして、10億円・特級探索者証・護衛の方々を手に入れた私たちは、WIO日本支部を後にした。




