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最終話

 人のステータスだけで付き合う人を選ぶとエリオットとルリアナのようなことが起こり得る。ステータスは大事だが、人の中身を見て付き合う人は決めないと、自分自身が不幸になりかねない。ルリアナのようにね。


「僕のことをそんな風に思っていたの? 僕のことを好きって、愛してるって言ってくれたじゃないか!?」


「愛の言葉なんてね、嘘でも吐けるのよ。自分自身が手に入れたい未来があれば、嘘の言葉なんて平気で吐けるものよ。そんなことも知らないの?」


「僕は君を愛しているのに、こんなに愛しているのに、君は僕を愛していなかったということ?」


「ふっ、そうよ。あんたなんか愛するわけないでしょう?顔がいいだけじゃない! あなたの良いところなんて他にどこがあるというの!!」


 陛下の前でギャーギャー騒ぎ始めた二人。これから先が思いやられる。夫婦になるのにね。二人で暮らしていくというのに、協力し合えるのだろうか。


 メロドアダ男爵。娘ではなく、親の方だ。彼はルリアナの猫被りがとれてしまったことに頭を抱えているようだ。


「ルリアナ。こ、公然の場ではその強気な性格を隠せとあれほど言っておいたのに……。絶望だ。王と娘の結婚がなくなるなど、あってはならないのだ」


 ブツブツと独り言を呟いている。その様子はとても不気味であった。彼は、言いたいことが終わると白目を向いて倒れたらしい。



 陛下も人が悪い。こうなるとわかっていて、契約書にそれらの条件を書き込んだとしか思えない。二人の不毛な争いは、バカ王子いや、もうバカ王子ではないので、バカと呼ぼう。バカの髪色が変化したことによって収まった。ルリアナが彼の赤い髪を見て、とても驚き、言葉に詰まったようだった。


「ど、どういうことよ……」


 震える手でバカの頭を指差すルリアナ。黙っていた陛下は王子の髪色について話し始める。


「妃との間に生まれた子は、私の子どもではなかったということだ。私は妃と一度も契ったことはないのでね。妃が死んだ今、どこの誰と妃が契りあっていたのかは定かではないよ。残念だけれど、妃には他に好いていた人がいたようだったから、その人と内緒で契りを交わしていてもおかしくはない。私は妃のことが大切だったから、ゆっくりことを進めていこうと思っていたのだから……」


 淀みなく出てくる言葉に唖然するものは事実を知っている者たちだ。何度も言うが、恐ろしい王様である。語られる表側の真実に絶句するものや、元王子、バカを見て蔑む者が現れた。バカを見る目が変化したということだ。


 いわく、「こんな下賎な者を王族として扱っていたとは屈辱だ」らしい。また、こんなわがままで考えなしが王族であるはずがなかったのだ、という声が聞こえた。

 貴族の中には王族崇拝者がいるから、その人たちがこれからどういう行動に出るかも恐ろしいよね。

 親の不始末は子どもにってことにならないといいけど。


「簡略にいうと、私との子ではないので、エリオットは紫の髪を引き継ぐ可能性は全くなかったということだ」


「ぅう、うそ……。王族である証の紫さえも持っていなかった。王様になる前提条件すら、エリオットにはなかった」


「そういうことだ」


「一生こんなのと……こんなのと……。エリオット、あなたは……疫病神ね!」


 目の前に落とされた爆弾に耐えられなくなったのだろう。癇癪を起こして、バカを責め続けるルリアナ。バカはその爆弾を真正面から受けて呆然と突っ立っていた。彼女に何度も胸元を叩かれていても反応を返すことはなかった。



 彼らは監視付きの自給自足生活をすることになる。寿命以外では死ねない彼らは餓死すらできないだろう。寿命以外でも死ぬことができる方法はあるが、教える必要はない。自分自身の足で地に立ち、前を向いて歩いていくしかない。

 生きる道しか彼らには残されていないのだから。

 バカと腹黒女はこれからどのように過ごしていくのだろうか。それは、彼らの物語である。



 私は、恋の相手を見つけることから始めようかしら。貴族よりは、平民。でも、狙いはあの人にしよう。年齢差はあるけど、良い男だもの。王様を支えるための教育は施されてきたし、王妃教育もしてきた。バカのためだけだったら、きっとすぐに放り出していたと思う。これが耐えられたのは、この未来を信じてきたことともう一つ。でも、それはまだ私の内に秘めておこう。秘密は時には必要なものなのだから。

これにて完結とさせていただきます。お読みくださった方々、ありがとうございます。


Copyright(C)2018-莱兎/世理

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