第17話 〜盗賊〜
久しぶりの投稿です。
最近、バタバタしていて小説を書く時間が取れないので更新は不定期になると思います。
いやいやながらも5大精霊のエラと契約した俺は旅の準備中だ。
「……えっと、あと他にあるものは……」
咲が自分の荷物を確認しながら呟いている。
それほど物も多くないから忘れ物は大丈夫だろう。
旅の基本は最低限の荷物しか持って行かないことだ。
「堂川、準備はまだか?」
堀井は早く行こうと扉の前で待機中だ。
心なしかイライラしているようにも見える。
「まあ、待て堀井よ。今はまだ、咲が荷作りをしている。それまでの辛抱だ……」
「なによ。その口調。気持ち悪いからやめて」
「すみません……」
咲に聞かれているとは思わずについつい厨二病風な口調をしてしまった。
咲がガチの哀れむ目で俺を見るから咲の前では封印していたのに……。
「それよりも、早く行こうぜ!」
「おう!そうだな」
俺は咲から逃げるように外へと出る。
「はあ、昔からりゅーくんって立場が悪くなるとどっかに逃げるよね」
咲がそんなことを呟きながら出てきた。
俺は思う!
世の中にある男性は気まずくなると逃げるであろう!
こんな事を言ったら後からどんな仕打ちが来るか……。
「やあ、レッドムーンさんよ!今日、旅にでるのか?」
「はい!えっと……」
突然だれかに話し掛けられた。
ギルドで顔を見たことをあるがそれほど仲良くした覚えはない。
まず、仲の良い冒険者なんてフランク兄弟ぐらいなものだ。
「寂しいな。お前たちが居なくなるのは……」
髭を蓄えたおじさん冒険者は今にも泣き出しそうなぐらいだ。
本当に俺たち初めて話したよね?
「それでは……失礼します」
「それじゃあな。また、この町にも顔出せよ」
「あ、はい……」
そのまま、髭のおじさんとも別れる。
それほど、この町に思入れはないがやはり少し寂しくなるな。
「りゅーくん、さっきの人って誰?」
「うーん、俺も分からないんだよな。堀井は知ってるか?」
「いいや、知らない」
「本当に誰だったんだろ」
そんな話をしているうちに、町の出口までやってきた。
ここから先は魔物もでる。
気をつけて行かなくてはならないのだ。
「それではお気をつけて」
町を護っている衛兵に見送られて町をでる。
それから、2日が経った。
次の町まではあと3日と言うところだろう。
いろいろな魔物に襲われながらも苦労なく倒す事ができた。
この世界で、俺たちの強さはチートなのか周りの冒険者を見ているとそんな過信をしてしまいそうだ。
堀井も魔物が出たら1人で倒して自慢するように俺たちに死骸を見せる。
気持ち悪いがその魔物が俺たちの食料になる。
町で買った魔物図鑑は本当に使える。
魔物の名前や弱点、生息地域、調理方法など色々載っているのだ。
ご飯は咲が作ってくれる。
図鑑を見ながら作って俺たちと食いながら「美味しくできない」とずっと言っている。
十分美味しいのだが。
しかし、日本で食べていたのと比べると味は落ちるかもしれない。
それは、食材の問題なので仕方ないと思うが。
本当に咲は完璧主義だ。
それのおかげで、毎日ご飯は美味しくなっているのだが。
「りゅーくん、あそこに誰かいない?」
「そら、誰かはいるだろ、次の町のステイルにはこの道とあと一つぐらいしか道が無いんだから」
「うん、そうなんだけど……」
今までも商人や冒険者とすれ違って来たが、咲は何も言わなかった。それを考えると少し心配にはなってくる。
「やっぱりあの人たち危ないよ」
咲は怯えた声で指をさす。
俺は指にさされた方向を見た。
……盗賊か……?
それは衛生的に良くない格好をした人の集まりだった。
肌は黒く汚れて何日もお風呂に入っていないようだ。
町にいるホームレスを思い出してしまう。
この世界には人の物を盗んで生活をする盗賊がいるとはキリシュさんから聞いていた。
それに、盗賊は躊躇せずに人を殺すとも言っていた。
もし、盗賊と出会ったら捕まえて冒険者ギルドに連れて行くと報酬を貰えるが自分が危険な状況になると自爆をする事もあるみたいなので殺すのが得策みたいだ。
堀井はまだ盗賊の存在に気づいていないのだろうか、気にせず盗賊の方角へ進んでいく。
「堀井!ちょっと待ってくれ」
「なんだ堂川、お前もう疲れたのか?体力ないな。俺は先に行くぞ」
堀井は歩くペースを速める。
「堀井!待てって!」
「悔しかったらお前も早く来いよー」
堀井は俺たちを見ながら後ろ走りでどんどん先に進んで行く。
「咲、追いかけないと」
「うん」
俺たちも堀井を追いかけて走る。
盗賊との距離はあと200メートルぐらいか。
堀井はまだ気づいていない。
「堀井、止まれ!それ以上は危ない!」
堀井に俺の声は聞こえていないようだ。
あと70メートルほどの所まで来ても気づかない。
それに後ろ走りであの速さって……。
50メートル5秒台ぐらいの速さで走っているぞ……。
「堀井!待てって!」
俺はあと10メートルぐらいの距離で堀井の手を掴んだ。
「ふはは、オメェたちは元気だな!」
「それはどうも……」
俺は笑顔を作りつつも相手の顔を見る。
相手は2メートルはあるだろうかお世辞にもオシャレとは言えないヒゲを生やしたおじさんだ。
「キャッ!」
「こいつを返して欲しければお前たちの持っている金を全部置いていけ」
後ろで咲が捕まってしまった。
警戒を怠った俺の責任だ……。
「わかりま……」
「おい、お前!その子を離せ!」
ばか!
こうゆう相手にその手の挑発は……
「なんだ小僧!」
堀井は自身満々の顔で剣を構える。
「命が欲しければその子を離せ!」
堀井は更に挑発を続ける。
「ほう、いい度胸だな。ここら辺じゃ俺たちに敵う冒険者なんて居ないんだぜ。俺たちも舐められたもんだな」
いつの間にか俺たちは50人ほどの大群に囲まれていた。
咲を掴んでいる奴は完全にキレている。
危ない状況だ。
俺に話かけたやつはニヤニヤしながらこの様子を見て楽しんでいるようだ。
「早く咲を離せ!」
「黙れ!」
咲を掴んでいる男は咲を右手で持ったまま堀井の剣を蹴った。
あっけなく堀井は剣を吹き飛ばされた。
「くそ!」
堀井にもうできる事は無い。
堀井は無力に地面に手をつく。
「ごめんなさい、うちのアホが……」
「いやいや、俺は寛大だからな。殺さないでいてやるよ」
「それはありがたきお言葉。それではこいつらと共にこの場を去らせてもらいます」
俺は堀井を脇に抱えて咲を取り返そうと男の前に出る。
「ちょっと待て。お前はさっきの話を聞いていなかったのか?」
「聞いていましたよ、たしかお金を置いていけとの事でしたよね?」
「おう、そうだ。わかっているなら早く出せ」
「すみません。私たちはお金が無くて困っている身でございます。どうか、ご容赦ください」
「そうゆうわけにはいかん。お金かこの女の命どちらが大切だ?」
咲はもう力が入っていない。
いくら、剣道がつよくてもこんな状況には慣れていないのだから仕方ないが。
「私の身はどうなっても構いません」
「俺たちに男の趣味はない!早く金を出せ!」
そろそろ限界なようだ。
「それでは仕方ないですね……『サイクロン』!」
俺は風魔法で竜巻を起こす。
範囲は咲を持っていたる男に被害が出ないギリギリだ。
マナで風を作り出し、魔力によってベクトルをつける。
台風目と同じように中心にはほとんど被害が出ない。
仲間にダメージを与えないで使える範囲魔法だ。
「なんだと……」
周りにいた雑魚野郎共は竜巻によって吹き飛ばされた。
範囲に入っていたはずの親分らしきやつはまだ生き残ったようだが。
この場に居るのは俺と咲、堀井、咲を持っていた盗賊、盗賊のリーダーらしき人だ。
「やるではないか。そこら辺の盗賊だとひとっ飛びだったぞ。それに俺の仲間も飛んでいってしまったし。これに耐えれたのは俺だけだったな」
「ボス!俺もいます!」
「お前はその女を持っていたから助けられたんだよ!そんな事も分からないアホなのか?」
「すんませんでした。それにかつての4英雄のボスいいや若き騎士エヴァンに敵う相手なんて居ませんよ」
「それは捨てた名前だ。今は関係ない!」
「は、はい!すんませんでした」
たしか聞いた事がある。
この地に伝わる伝説を……。
今から50年前、魔王が暴れた時代がある。
魔王に立ち向かうべく、国内で最も強いものを決める大会が開かれたらしい。
その大会での上位4人が英雄として魔王に立ち向かうのだ。
そうして、選ばれた4英雄は魔王のもとへと向かった。
4英雄は魔王に挑む事は出来たものの呆気なく負けて帰ってきたらしい。
しかし、その後は魔王も大人しくなりその4人は本物の英雄として大量のお金をもらい裕福に暮らしているはずだ。
たしか、2人は死んで1人はどっかの田舎で貴族をやっている。
最後の1人、エヴァンは行方不明でもう死んだのではないかという噂も立っていた。
まさか、盗賊をやっているとは……。
「それって……」
咲が口に手を当てて驚愕している。
嬉しそうに盗賊のボスは咲の方を見る。
「なんだ?」
「それって、今何歳ですか?60歳ぐらいですか?」
まさか年齢のことを聞くとは……。
確かに50歳を超えているようには見えないが、今聞く質問としては間違っている気がする。
「俺を前にしてそんなことを聞いたやつは初めてだ。まあ、教えてやろう……」
教えるんだ!
思わず心の中でツッコミをいれてしまった。
「俺は今年で75歳だ!」
「えっ!?見えない!」
「そうか、そうか、ちなみに何歳に見える?」
「うーん、45歳ぐらいかな?50年前の大戦の時には生きていたのだからそんな事はないと思ったけど……」
「おー、それは嬉しいな」
お前は女子か!
だが今は咲が危険な状況だ。
いつ頭を胴体から引き離されてもおかしく無いのだ。
よく咲はこんな状況であんな質問ができたな。
もし、間違えて80歳とでもいったら今頃殺されている気がする。
「そんで、そろそろ金を置いっていってくれないかね?将来有望なひとを傷つけなたくないんだよ」
「『ウォーターブレット』!」
俺は水の弾丸を俺の出せる最高速度で打ち込む。
エヴァンは剣を抜き水を切った。
銃弾を切っているようなものだ。
「いい魔法だ。しかし、詰めが甘いなこの弾丸を3発同時にでも撃ってたら俺にダメージを与える事が出来ただろう。でも、1つなら対応できる」
「あなたには敵いません。大人しくお金を置いて行くので見逃してください」
俺たちはお金を3分の1置く。
盗賊たちはすんなり道を開けてくれた。
いつの間に帰ってきていたのだろう。
「お前には素質がある。強くなる努力をしろよ」
「は、はい……」
急にそんなことを言われても反応に困るのだが、心に置いておこう。
堀井は未だに力が入らないようだ。
それにしても、なんで4英雄のひとりが盗賊なんてやっているのだろう……。
俺たちは少し寂しくなった、財布を撫でながら次へと向かった。もうトラブルは起きて欲しくない。
自分の力がまだまだと分かったのでいい経験だった。
この経験がなかったら俺は天狗になって簡単に命を落としていただろう。
堀井はまたもや何も出来なかったのが相当ショックだったようで俺が話しかけると「あっち行ってくれ」と突き放される。
こうゆう時はそっとしておくのが一番だろうか……。
加藤咲
種族:人族
年齢:17歳
容姿:顔は整っておりクラスに1人居るか居ないかのレベルの美人。黒髪で肩ぐらいまで伸ばしている。モデルのスカウトも何度か受けたらしい。
性格:真面目。厨二病的な発言をすると目に見えるように引く。




