表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊恋  作者: ベリー
3/5

悪霊


 次の日、結月はいつものように翔の後を追っていた。

 しかし、結月は先日のショックから、まだ完全に立ち直れてはいなかった。

 だから、翔の変化にすぐには気づけなかった。


 翔の部活動が終わり、結月は帰る翔の後を追った。

 しかし――


「あれ……? 今日は一人……」


 いつもなら友達と帰る翔が、今日は友達に「先に帰る」と言って、一人で体育館を出て行ったのだ。

 不思議に思った結月は、いつもより翔の近くに行って追った。

 翔は昇降口を出ると、真っ直ぐに一人の女子生徒のもとへ行った。


「紗由里」


 紗由里と呼ばれた女子生徒は、ゆっくりと振り向き、翔の姿を確認してふわりと笑みを浮かべた。


「翔くん」


 結月は、その女子生徒の事をよく知っていた。

 地毛で腰までのふわふわな茶髪。

 琴長紗由里ことながさゆり。学年一の美人と呼ばれてる女だ。

 告白はたくさんされてるが、その全てを断っている、という噂がある。

 その美人と翔が仲良さげに話している。


「……?」


 結月の頭には、疑問符ばかりが浮かんでいた。

 今まで、翔と紗由里の間に大した接点は無かったのだ。


「なんで……」


 やがて二人は、並んで歩き始めた。

 校門から出て少し歩くと、二人は手を繋ぎ始めた。


「……っ!!」


 結月は後を追うのも忘れ、その場に立ち尽くした。

 二人の頬が赤く染まっている。

 紗由里が翔に話しかけている。


「翔くん、今度の日曜日、空いてるかな?」

「ああ。空いてるよ」


 翔の返答に、紗由里は嬉しそうに笑うと


「よかった。じゃあ、お出かけしようよ」


 と言った。


「……ああ。いいよ」


 と翔が笑った。

 明らかに、恋人同士の言動だった。


「ま……まっ……」


 結月は二人のもとへ走った。

 しかし、結月は何を言うことも出来なかった。

 別に結月と翔はつき合ってる訳ではない。

 だから翔が誰とつき合おうと、結月に口を挟む権利はないのだ。

 やがて二人の歩みが止まった。

 こっから先は、紗由里と翔の帰り道が違うのだ。


「じゃあ、また明日ね」

「ああ。じゃあな」


 そう言って二人は、周りに人がいないのを確認し、抱き合った。


「っ!!」


 結月を胸が締め付けられる感覚が襲った。

 やがて二人は離れ、今度こそ別れた。

 二人は三秒程しか抱き合ってなかったが、結月には何時間にも感じられた。

 結月に黒い感情が込み上げていた。


「いや……やだ! 翔! 私以外とつき合わないでよ!」


 勝手な言い分だと分かってはいたが、結月は感情を抑えられなかった。

 それも無理はない。

 何故なら、告白寸前で、想いが届く寸前で死んでしまった挙げ句、成仏出来ずに孤独な日々を送りながらも、ずっと翔を見守ってきた結果がこれなのだから。


「あ……ああ……」


 結月の身体を、どす黒い煙のような感情が飲み込んでいく。

 やがて、右手が細く、痩せてしわだらけの手に変形していく。感情は手だけではなく、足をも変形させていく。


「う……ああ……いや……いや……」


 やがて身体の半分以上を飲み込み、顔までも蝕んでいく。


―このまま、悪霊になってしまうのか。

 悪霊となって、悪事しかする事の出来ない身体になってしまうのか。

 嫌だ。嫌だ――。


「うっ……や……!」

「ユヅ?」


 結月が悲鳴をあげようとしたとき、誰かの声が結月の名を呼んだ。


「ユヅ! 大丈夫か!?」


 心配そうな顔で結月の名を呼んだのは――


「あ……か、翔……」


 結月は翔に右手を伸ばした。

 その手を翔がとることは無かったが、かわりに言葉を発した。


「ユヅ……お帰り」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ