幸せ
―何故――
結月の頭には、助けを求むのと同時に、疑問も浮かんでいた。
今、翔に結月の姿は見えない筈。
―もしかして、悪霊になり始めたから?
じゃあ、翔には私の醜い姿が見えてるの――?
「やっ、やだっ!」
結月は反射的に翔から身体を遠ざけ、身体を手で隠した。
しかし、翔は意に介さずに話しかけた。
「多分今、ユヅは不思議に思ってんだろ? 俺もよく分かんねんだけど……」
「え?」
結月には、翔の言葉の意味がよく分からなかった。
しかし翔は尚も話し続けた。
「いやぁさあ、実は俺、ユヅの姿は見えてねえんだよな。でもなんか……今、ユヅに何か大変な事が起こってるっつうか、嫌な予感がして、そしたらユヅの存在を感じれたんだ」
「え……」
結月は「姿は見えない」という言葉に、身体を隠すのを止めて訊いた。
「存在を、私の存在、感じてるの?」
しかし翔は、言葉は伝わらないのか、それには応えずに言った。
「ユヅ、そこにいるなら、聞いてくれ」
結月は翔の言葉に、話を聞く体制をとった。
「ユヅは俺にとって凄い大切な存在だし、ユヅがいない間、凄い淋しかった。だから何があったのかは知らねえけど……元気出せよ。お前の姿は見えなくても、元気だって分かったら俺も幸せだから」
そう言って、翔は笑った。
「か……かけ……」
結月は、嬉しさに泣きそうになった。いや、泣いていた。
涙は出ないが、先日とは違う、幸せな涙。
「翔……翔がそう言ってくれるだけで、幸せだよ……」
―私の幸せを願ってくれる人がいた――。
ずっと孤独な日々を送って、誰に愛されてるかも分からずに、淋しさに凍っていた心。
しかし、翔の言葉が、結月の心を溶かしていっていた。
知らぬ間に、結月を蝕んでいた感情は消えていた。
今度こそ、結月は翔の幸せを心から願えたのだ。
「じゃあな……」
翔は儚く笑うと、その場を去っていった。
「うん……バイバイ……」




