最終話 2人の漢達
ラスト更新です。
南側で大爆発が起き、炎上しているアクアノート。北側の海上には、破壊されたヘリの残骸が浮いている。
悠々と泳ぐアルファは、勝者として勝ち誇っているかのよう。最も憎い相手を、食い殺したからか。
その様子を、ルーカスと彰人は見ている事しか出来ない。まともな攻撃手段は、もう残っていない。
北側10階に戻れば、追加の機雷は作れるだろう。今度は仕組みを変えれば、効果が出るかもしれない。
だがそんな事をしていれば、メイジーの命は助からないだろう。まだ生きているかもしれない人々も。
「……冗談じゃないぜ。母の愛は強しってか?」
「こんなものじゃ、豆鉄砲にしかならない」
ルーカスは泳いでいるアルファを睨み、彰人は手に持ったサブマシンガンを見ている。
2人の手元にあるのは、壊れた機雷と起爆装置。そして100発もない小さな銃弾。
どちらも、アルファを倒すには弱すぎる。機雷だけは唯一、倒せるかもしれない。
だが上手く誘導して、手動で起爆せねばならない。たった1個では、確実性に欠ける。
「機雷をボートのケツに繋いで、誘ってみるのはどうだ?」
「多分もう、機雷は効果がないだろう。また弾き飛ばされて終わりだ」
倒す手段を模索する2人だが、そう都合良く代案は浮かばない。そもそも、手持ちのカードが少ない。
戦車でもあれば、また違うかもしれない。駆逐艦でも停泊していれば、戦えるかもしれない。
だがどちらも、アクアノートにはない。北側10階の保安部には、ロケットランチャーなんてない。
倒せる可能性がある物は、2人の目の前に提示されていない。強いて言えば、機雷に使っている爆薬か。
どうにかして、アルファの体につけられたら。尾びれや背びれにでも、引っかけられたら。
「ああクソっ! また潜りやがった!」
「……」
アルファは再び、アクアノートへの攻撃に戻ったのだろう。子供を殺された怒りも、恐らくあると思われる。
アルファの体に引っかけるという手段は、もう失われてしまった。潜られてはどうしようもない。
このままでは、アクアノートと共に海の藻屑となるしかない。どこまで建物が、耐えられるか。
そもそも彰人には、余裕や時間が残されていない。もう、メイジーを乗せるヘリはない。
ならば海上を移動するしかない。だがアクアノートから、船で逃げられるとは思わない。
どうにかして、アルファを倒さないといけない。メイジーを助けたいのであれば。
既に時刻は、9時を過ぎている。これで彼女が重症を負って、2時間も経過している。
出来るだけ早くアルファを倒して、メイジーを病院へ。彰人はもう、それしか考えていない。
彼女を助けられるなら、何でもやるつもりだ。それが例え、巨大な化け物との戦いであろうと。
「すぐ戻るよ」
「え? あ、ああ……」
彰人は1人で、エントランスへ入っていく。北側の入り口、すぐそこにストレッチャーが置かれている。
その上で今も、メイジーが眠っている。顔色はまた、悪くなり始めている。
彰人は首から下げていた、御守りを外す。彼が今まで、サメに襲われなかった幸運の御守りだ。
交際していた時にも、メイジーに自慢していた代物。だけどもう、これは自分に必要がない。
彰人は御守りを、優しくメイジーの手に握らせる。きっとこれがあれば、助かる筈だと信じて。
「こんな方法しか、僕には思いつかないんだ」
彰人はメイジーの側を離れて、北側の海へと向かっていく。呆然と座っているルーカスが居る。
彼の側を通り過ぎ、彰人は壊れた機雷を触り始める。作成を手伝ったから、外し方も知っている。
「彰人? 何をやっているんだ?」
ルーカスはごそごそと、機雷を触り始めた彰人が、何をしようとしているか分からなかった。
「メイジーを頼む。必ず病院へ、連れて行ってくれ」
「は? 何を――待て彰人! お前、何をするつもりだ!?」
彰人は機雷に使用していた、爆薬の入った箱を抱えている。起爆装置の、受信機と共に。
「君には家族が居る。でも、僕には居ない。だからこれは、僕の役目だ」
「ま、待て! よせっ! 他にも方法が――」
唇を噛み、彰人は走って跳躍。海へ飛び込む。切れた唇から、血が滲む。彰人は知っている、アルファの性能を。
45階へ戻ろうとしていたアルファが、血の匂いに気づく。どのサメよりも、鋭敏な感覚が察知する。
巨大な影が、立ち泳ぎをしている彰人へ向かう。ルーカスが陸上から、戻れと彰人に叫ぶ。
だが、彰人の決意は変わらない。確実にアルファを殺し、メイジーを助ける為に必要な事だから。
「君に恨みはないけどね。でも、死んで貰うよ」
下から猛スピードで上昇して来たアルファが、真下から彰人を飲み込む。致死量の爆薬と共に。
「クソっ! 何て事だ! ああクソ!」
ルーカスは嘆きながらも、起爆装置のスイッチを押す。しかし――起動されない。スイッチのランプは赤いまま。
何度もスイッチを押しているが、やはり変化は見られない。壊れてしまって、遠いと受信出来ないのか。
海面ギリギリの位置に立っていたルーカスと、泳いでいるアルファの目が合った。
「なあ彰人――俺もカミカゼに、付き合わないといけないらしい!」
ルーカスの存在に気づいたアルファが、大口を開けて陸地へダイブする。ルーカスはギリギリで躱した。
巨大な胸ビレを掴み、しがみつく。腰に差していた、愛用のサバイバルナイフを抜く。
振り落とされないよう、アルファの脇腹に思い切り突き刺す。肉厚な肉体に、しっかり食い込む。
「さあ、勝負といこうか!」
海中へ戻り、ルーカスを振り解こうとするアルファ。猛スピードで泳ぎ、回転し、海面を跳ぶ。
途轍もない圧力に晒されながらも、ルーカスは手を離さない。起爆装置が起動するまで、スイッチを押し続ける。
なるべく腹に近い位置で、ランプが緑に光るまで続ける。自分のタイミングで息継ぎが出来ず、苦しむルーカス。
そろそろ限界だという頃に、やっとランプが緑色に光った。爆発までは、数秒の猶予しかない。
ナイフを引き抜き、手を離すルーカス。海上へと大きく跳んだアルファが、空中を舞っている。
「くっ!?」
海へと落下しているルーカスの頭上で、大爆発が起きる。アルファの体が弾け飛び、衝撃がルーカスを襲う。
海面に思い切り叩きつけられ、ルーカスが沈んで行く。最後の戦いは終わり、静けさが戻る。
誰もいなくなったアクアノートの北側。破壊の後が、あちこちに残されている。何かが燃えているのか、黒煙が上がっている。
北側の船着き場、コンクリートの波止場に、人間の腕が海中から突如生えた。白人の厳つい男性が、陸に上がる。
衝撃で一時的に意識を奪われたが、ルーカスは生きていた。まだ少し耳鳴りがしているものの、五体満足だ。
「……約束するって、誓う前に行きやがって。なあ、彰人……」
ルーカスは地上に戻り、メイジーを迎えに行く。まだ意識がない彼女を、中型の調査船に乗せる。
船舶免許を持っている彼は、大体の船を操縦出来る。アクアノートの北側から、1隻の船が離れて行く。
静けさを取り戻したアクアノート。その海中に、1匹の黒い肌を持つサメが、腹を上に向けて浮いている。
6メートルもあるそのサメは、両親と兄を失った妹だ。大量の電気を浴びた彼女は、ゆっくりと目を開いた。
よくこんな狂った作品を、最後まで読みましたね?(ありがとうございます)
なお続編として「ハイブリッドシャーク2~メジロドンVSアルティメット・メルビレイ」、「ハイブリッドシャーク3~メジロドンVSメカモササウルス」、「ハイブリッドシャーク4~復讐のメジロドン&最凶シャチ軍団」まで考えてあります。
いつか書くかもしれません。
こんな頭のおかしい作品を書いていますが、普段はとても真面目なホラー「その美女は人間じゃない」という作品を書いているんです!
本当なんです信じて下さい!私は武器を持っていません!
というわけで、お付き合い頂きありがとうございました!




