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第49話 脱出に向けて

本日の更新4話目です。

 南側9階の病室、メイジーがベッドに寝かされている。消毒と止血、鎮痛剤と最低限の処置が施された。

 外科医がおらず、保安部の隊員が治療した。元アメリカ陸軍の衛生兵が、偶然居てくれた。

 とりあえずの対処は出来たが、このままにはしておけない。輸血のパックが、足りていなかった。

 最近事故で大怪我をしたスタッフの治療で、メイジーと同じ型のパックを消費したばかりだ。

 追加の輸血パックは、昼にならないと届かない。待っていては、メイジーの命が危険である。


「メイジー……」


 眠っているメイジーを、彰人が見守っている。彼女の顔色は、あまり良いとは言えない。

 多少の輸血で少し血色は良くなったが、今もまだ傷口には、痛ましい歯型が残ったままだ。

 時間が経つ程に、死ぬ可能性が上がっていく。助ける為には、ハワイへ連れて行く必要がある。

 だが今の彰人(あきひと)には、どうする事も出来ない。外ではアルファが、人間達を狙っている。

 とても船で運ぶ事は、出来そうもない。自ら殺されに行くようなものだ。


「アンタが、アキヒトって日本人だよな?」


 病室に入って来た保安部の隊員が、彰人へと声を掛ける。ルーカスに伝言を頼まれた人物だ。


「そうですけど、何か?」


 メイジーの手を握り、入り口に背を向けていた彰人が振り向く。相手は見た事のある人物だ。

 4階へ上がった時に、ストレッチャー等を準備してくれた。彼の名前を彰人は知らないが。


「ルーカスって人が、ここを出る準備をしろってさ」


「……出るって、アルファ達はどうするんですか?」


 彰人の疑問に、隊員が最新情報を伝える。ガンマはルーカスが銛で貫き、デルタはバートが感電させた。

 残るアルファは、これから倒すらしい。ルーカスがその為に、機雷を作っている事も彰人は知った。

 準備が進んでいるのは分かったが、機雷だけで倒せるのかと彰人は疑問に思う。


「それで倒せますか?」


「所長が戦闘用のヘリを出すってさ。俺達も武装して同乗する」


「何だって? ヘリがあるのかい?」


 ならそれで、先にメイジーをハワイへ連れて行って欲しい。彰人は真っ先に考えた。

 しかし隊員に伝えても、決定権がないと苦笑する。仕方がないので、彰人は言われた通りに、メイジーを移動させる。

 負担を掛けないように、慎重にストレッチャーに乗せる。気休めの点滴と共に、1階を目指す。

 どこに行けばバートに会えるのか、探し回ろうとした彰人。しかしちょうど、ルーカスとエントランスで会話していた。


「すまないバートさん! 1つお願いがあります」


 普段の彰人であれば、会話に割って入るのを躊躇う。しかし今は、メイジーの命が懸かっている。

 失礼なのは承知の上で、彰人は声を上げた。会話を中断したバートが、彰人に返答する。


「今は忙しい、手短に頼む」


「ヘリがあるなら、先にメイジーをハワイへの病院へ連れて行って欲しい」


 その発言を聞いて、ルーカスも確かにその通りだと思った。戦闘の直後だったせいで、戦う事ばかり考えていた。

 良い意味で冷静になれたと、ルーカスは意見を変える。まずは何よりも、人命を優先するべきだと。


「彰人の言う通りだ。アルファを倒すのは、それからでも良くないか? 何なら、追加の武器も持って来られるだろう?」


 「……」


 バートは黙り込んでしまう。何か不都合な事でもあるのかと、ルーカスと彰人は疑問に思う。


「アルファと死んだベータは、成功例として施設の外に何度も出している。その際に、ヘリから指示を出していた事もある。奴は、ヘリに人間が乗っていると知っている」


「それは……本当ですか?」


 彰人の確認に、バートが重苦しい表情で頷いた。だからこそ、自らが釣り餌になると確信していたのだ。

 もしメイジーを運ぶ為に、ハワイまで向かったら。そのままアルファも、ハワイまで着いて行く。

 そんな事になれば、より多くの人間が犠牲になるだろう。ビーチを利用している観光客は多い。

 アルファなら簡単に沈められるような、小さな漁船だって沢山ある。ヨットに乗っている客も居る。

 それ以前に、ヘリを攻撃して来る可能性だってある。怪我人が乗っているなど、アルファは気にしない。


「そ、そんな……」


「悪いが、倒すしかないのだ。安心したまえ。私が直々に、裏切り者を処分する」


 メイジーを助けられるかもしれない。そんな希望を抱いた彰人は、膝から崩れ落ちてしまう。

 バートはすぐに済むから、待っていろと言い残し歩いていく。ルーカスは、彰人の肩に手を置いた。


「彼女、アンタにとって大事な女性だったのか?」


 ルーカスは少し離れた位置で、ストレッチャーに寝かされているメイジーを見る。

 バタバタしていた為、彰人とメイジーの関係性を詳しく聞いていなかった。ただ、単なる友人ではないと分かった。

 その程度の関係なら、ここまで落胆はしないだろうとルーカスは思う。彰人の落ち込み具合は、明らかに大きい。


「……大学時代から、数年間付き合っていた。だいぶ前に、別れたけどね」


「そうか……その……なんだ。俺も手伝うからさ。すぐに倒して、ハワイまで行こう。な?」


 膝立ちだった彰人へ、ルーカスが手を伸ばす。彰人はゆっくりと手を取り、立ち上がる。


「……メイジーの為だ、僕もやるよ」


「お、そうか? なら行こうぜ」


 改めて固い握手を交わし、2人で機雷の製作を続ける。メイジーはまだ、眠り続けていた。

残り2話で完結します。

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