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第23話 悩める招待者達

 強引な手段でルーカス達を黙らせたバートは、満足そうに微笑んでいる。

 対して招待客達は、トミーを除き苦い表情だ。人質を取られては、軽率な行動は取れない。

 そもそもまだ、銃口を向けられている。とてもではないが、楽観的に考える事は出来ない。

 

「……俺達にどうしろと言うんだ?」


 ルーカスは絞り出すように、バートへ問い掛ける。少なくとも今は、従うしかないと考えて。


「すでに伝えただろう? 改良に協力して欲しいだけだ。それ以上の事は望まない。積極的に協力するというなら、もっと深い話にも応じるがね」


 バートは相変わらず余裕を見せており、口調だけは丁寧で、実としては横柄な態度を崩していない。

 こんなやり方で、積極的な協力なんて出来る筈がない。脅迫でただ黙らせただけだ。

 仕方なく言う事を聞くだけであり、協力すると断言するつもりが、今のルーカス達にはない。

 少なくとも、銃口を向ける行為だけは止めさせたい。でなければ、会話するだけでもストレスだ。


「話は聞こう。出て行こうともしない。だから、銃を下ろさせてくれ」


 ルーカスはあくまで冷静に、バートへと訴える。彰人(あきひと)達にも視線で合図を送り、メイジー達も元の位置へ戻る。

 怪しい真似はしないと、両手を上げて態度で示す。トミー以外が、張り詰めた空気の中で行動した。


「よろしい、ならば話の続きと行こうじゃないか。今後の予定も含めて、話させて貰おう」


 バートが握った左手を上げると、保安部の私兵達が一斉に銃口を下ろした。

 とりあえずの危機は去ったが、まだ状況は好転していない。少なくともルーカス達にとっては。

 終始ご機嫌な様子のトミーは、彼らの味方とは言えない。彼らはトミーと少し距離を取る。

 そんなルーカス達の姿を眺めながら、バートは話の続きを始める。窓の向こうで泳ぐ、巨大な化け物についてだ。

 

「まず成功例の個体、アルファの完成度を高めたい。子供達であるガンマとデルタは、後回しで構わない」


「……子供だって? まさか、無性生殖を?」


 バートの言葉が引っ掛かった彰人は、繁殖している事について問う。成魚はどう見ても、1匹しかいない。

 シュモクザメやトラフザメ等の一部では、単独での繁殖が確認せれている。有り得ない事じゃない。

 オオメジロザメでも、無性生殖は確認されている。しかしシャチのDNAを混ぜたのであれば、その可能性は下がる。

 シャチは現状、有性生殖しか確認されておらず、メス単独で出産をした例は確認されていない。

 しかもメガロドンのDNAも保有している以上は、普通の生物を基準には出来ない。


「ベータというオスの個体も居たのだがね、作業中のミスで先月死亡してしまった。子供を残していた点は、不幸中の幸いだな」


「酷い話だわ……」


 メイジーは死んでしまったオスを悼む。例え化け物として作られたとしても、生命である事は変わらない。

 非道な実験のさなかで、失われてしまった事を悲しむ。それにシャチは、深い愛情を持つ生物である。

 3分の2がサメだったとしても、高い知能を持っているなら悲しんだ筈。そうメイジーは見ている。


「あ~ほら、暗い話ばっかもアレじゃない? 皆でコイツらの名前でも決めようよ。メジロドンとか、どう? 結構個人的に良い線行っていると――ごめん、忘れて」


 システムエンジニアのメルビスが、空気を変えようとした。しかし、全員から冷めた目を向けられてしまう。

 メルビスは気まずそうにそっぽを向き、ガリガリと頭を掻いている。彼の味方は1人も居なかった。

 微妙な空気に包まれた研究室で、バートは再び説明を再開する。流石の彼も、今の一幕には参ったらしい。

 メルビスは空気を読むのが、絶望的に下手な男だ。部下の言動に呆れながら口を開く。


「名前なんて、どうでもいい話は後にしよう。君達の専門分野を、是非とも活かして欲しい。ルーカスには生きたドローンとしてみた時の意見を。筑波(つくば)先生ならば、サメの専門家としての意見をね」


 バートが一旦そこで話を終わらせる。求められている事は、ルーカス達も理解した。

 だが素直に協力出来るかどうかは、また別の話である。人質は守りたいが、協力したくはない。

 金を返せというなら、全額返そう。少なくとも和美以外は、特別金に困っているわけではない。

 普通に生活する分には、何とかやっていける。悔いが残るとするなら、ここに来てしまった事だ。

 こんな事になるのなら、最初から引き受けなかった。まさに後悔先に立たず、といったところか。


「まだ素直にはなれないかな? 時間ならまだある。監視はつけさせて貰うが、本日はゆっくり考える時間とすればいい。アルファ達が見たいなら、いつでもウェルカムだ」

 

「……そうさせて貰うよ」


 ルーカスは考えをまとめる為に、1人になりたかった。少なくとも元上官の顔は、これ以上見たくない。

 昔はまだ、尊敬出来る相手だった。少し思想は強いものの、国の為に戦って来た戦士だった。

 だが今は、おかしくなってしまっている。あまりにも行き過ぎた発想に、ついて行けない。

 彰人達もルーカスの後に続き、研究室を出ていく。言われた通り、全員に保安部の私兵達が同行すっる。

 部屋に残ったのは、トミーただ1人。彼だけは楽しそうに、投資額の話に移っていた。

もう1話、後程アップします。

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