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巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について  作者: みん
第三章ーパルヴァン辺境地ー

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ピアス

*クレイル=ダルシニアン*




「特に…何もないよなぁ…」


1年前、フェンリルが現れた場所を再度確認する。何処から現れたのか…気が付いた時にはグレン様がやられていた。

でも、やられたのはグレン様だけだった。確かに、あの時のフェンリルの怒りは凄かった。にも関わらず、グレン様以外は致命傷になるような怪我をする者はいなかった。


ーいや、違うかー


あのフェンリルは、暴れてはいたが、攻撃はして来なかったのだ。暴れていたと思ったら急に意識を私達から離して…パルヴァン邸に向かって行った。あの時のエディオルの反応は…恐ろしい程に速かったなぁ…本当に、アイツは素直じゃない。




『いえいえ!我慢…じゃなくてですね?ここに放っておいてくれて…だっ…大丈夫です!それに、私…重いですから!お願いします!』



まさか、この私が女性に断られるなんて…本当に…面白い人…だったな…。本当にアッサリ還って行ったな…。



『色々ありましたが…召喚に巻き込まれただけの私だけど…皆さんに会えて…ダルシニアン様にも会えて…良かったです。ありがとうございました。』



本当に…嬉しそうに笑っていたな…。


「はぁー…」


大きく溜め息を吐く。


ーホント、ランバルトの事…言えないよなー


君は、元の世界に還れて喜んでいる?笑って過ごせているだろうか?きっと、笑って過ごしているだろう。その姿が想像できてしまい、なんだか腹が立つ自分が嗤える。


そこでハッとして、軽く頭を振る。


気を取られるな…今はフェンリルの事に集中しなければ─。


「ティモス殿は、フェンリルに関して何か思った事とかはない?」


確か、このティモス殿もフェンリルがこの森に現れた時、ここに居た騎士だった筈。


「あー、それ、この前思い出したんですけど。あのフェンリル、怒っていたけど、殺気は無かったなと。グレン様は大変でしたけど、何となく違和感を感じましたね。」


流石はパルヴァンの騎士と言ったところか。相手の力量を読み取り咄嗟の判断も目を見張るものがある。


「だよね。本当に、あのフェンリルはよく分からない。実際、私の掛けたあの拘束の魔術も…本当に掛かってるのかどうかも怪しい。私とエディオルには無関心だし。もう、本当に意味が分からない。」


ーこの森での収穫は無しー


そろそろ邸に戻ろうと思った時




「ティモスさん、私、先に帰ってても良いですか?」


「ん?ルディの方は、もう終わったのか?」


「はい。」


パルヴァン邸付きの薬師、ルディ殿がティモス殿に声を掛けていた。


「ティモス殿、丁度私の方も調べ終わったから一緒に帰ろうか。」


「え?本当に終わったんですか?気を遣ってなら…私の事は気にしないで下さい。1人でも帰れるので…」


ルディ殿は、少し焦ったように振り返った。


フードの下から見えたのは、淡い水色の瞳だった。髪はプラチナブロンド。


ー薬師でも、彼女とは違うー


当たり前の事を思ってしまって苦笑する。


「いや、本当に私も今、帰ろうと声を掛けようと思ってたんだ。だから、気にしなくて良いよ。」


「…そう…ですか…?なら、良いんですけど。」


ルディ殿は、申し訳なさそうに言う。


ー何となく似てる?ー


いやいやいやいや……なんだか……今日はやけに引き摺るなぁ…。やっぱり、場所が場所だからか?1年も経ったのになぁ…。


「収穫…無しだ。そろそろ殿下達も戻って来るだろうし。邸に戻ろう。」


「「はい」」


そう言って、無理矢理思考を切り離しパルヴァン邸へと踵を返した。








「ティモスさん、今日も森に付き合っていただいて、ありがとうございました。ダルシニアン様も、お疲れ様でした。それでは、私はここで失礼します。」


パルヴァン邸の門の所まで帰って来ると、ルディ殿はそう挨拶をして1人で本邸の方へと行ってしまった。


ティモス殿は、ヒラヒラと手を振り見送っている。


「2人は付き合っているの?」


「はい?私とルディが?いやいや…それは絶対無いですね。妹みたいな感じですね。」


ティモス殿の目を見る。確かに、そこには恋愛的な感情は無いように見える。

私も()()()()()筈なんだけど…。


「あれ?ダルシニアン様…そのピアス…」


「ん?あぁ…これ?」


私の左耳に着けているピアスだろう。


「どこかで…見たような…?」


ー本当に、よく見ているなぁー











彼女達が還った後──


返還の魔法陣が消えると、そこには誰も居なかった。ただそこには、黒色と水色の魔石の玉が六つ散らばっていた。

彼女達が身に着けていたブレスレットの石だろう。


彼女達の色の石だった。


ランバルトがそれを拾う。


「…丁度三つずつあるな…」


「「……」」


「本当に…あっさりと…還ってしまったな…。」


その言葉と、その時のランバルトの顔を見て初めて気が付いた。ランバルトは、本当にミヤ様が好きだったんだと。“聖女”だからではなく、“ミヤ様”だから好きだったんだと。


チラリとエディオルを見ると…

こいつも本当に…馬鹿だよね…私もだけど…






それから二週間後、その時の魔石をピアスに加工した物が三つ出来上がり、ランバルトとエディオルと私が着けている─。




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