乙女ゲーム?
「先ずは、自己紹介からしようか?私は宮原咲。ここでは"ミヤ"と呼んで欲しい。」
ミヤさんは、長い髪を後ろに一つに束ねている。目は切れ長で美人さんだ。警察官らしい。
「私は小宮千尋。"ショウ"って呼んでね。」
ショウさんは天然パーマの長髪。目がパッチリの美人さん。中学の先生をしているらしい。
「私は藤宮美樹。"フジ"って呼んでね。」
フジさんは、クリッとしたタレ目。フジさんも長髪で、少し高目の位置で編み上げしてアップしている。可愛い人だ。秘書をしているらしい。
「私は、春ノ宮琴音です。大学の2回生です。"ハル"です?」
4人の自己紹介が終わったところで、ミヤさんが話し出した。
「ハルは、ラノベとか乙女ゲームとか知ってる?」
「えっと…耳にした事はあるんですけど、実際本を読んだりゲームをした事はありません。」
友達がよく、ゲームにはまったとか話には聞いていたけど、私にはいまいちよく分からなかったのだ。
「そっかー…それなら、ハルちゃんにとっては、ちょっと意味が分からないかもしれないけど…」
と、フジさんが少し困ったように話し出した。
さっき、フジさんとショウさんは白いローブの人達と話をして気付いたらしいのだが…この世界は日本で人気があった、スマホアプリの乙女ゲームの世界に酷似しているらしい。
この世界は数百年に一度、大量の穢れが溢れ出し、魔物や魔獣が大量に出現するようになる。その穢れが溢れ出ないように、異世界から聖女となるべく人物を召喚し、穢れを浄化してもらうと言う。
そして、ゲームの内容なのだが、数人の攻略対象者が居る。召喚された聖女達が、聖女として訓練?や浄化の旅を共にする攻略対象者と一緒に成長?しながら恋愛を繰り広げるーと言うものらしい。
「まぁ、乙女ゲームとしては王道物なんだけどね。いやぁ…それがまさか、私達が本当にそんな事になるなんてね…テンプレと言えばテンプレだけど…。」
ショウさんが困った様に笑う。
「でもね、ゲームや本だから楽しいのであって、実際自分がその立場になると…嫌よね…」
フジさんが苦虫を潰したような顔をする…でも、可愛い顔には変わりないよねー。
「本当にそれ!!まぁ…聖女としての能力があるって言われたら頑張っても良いけど、恋愛は要らないわー。日本に彼氏居るし!」
そう、この3人には日本に彼氏が居るらしい。しかも、皆ラブラブなんだとか…。
「ハルは?彼氏は居るの?」
「あ…私…その…昔から男の子にはよくいじめられたりして…苦手と言うか…怖い部類に近くて…」
俯いて両手をグッと握り締める。
「…そっか、変な事を訊いてごめんね?それなら、尚更こんな世界は嫌だよね。」
ミヤさんは、やっぱり優しく私の背中を慰めるようにポンポンと叩いた。
「それで、ちょっと言いにくいんだけどね?そのゲームって、設定では聖女は3人なの。でも、ここには4人居る。と言う事は…1人は巻き込まれただけのモブって事なのよね…。」
ーあぁ…それって、きっと私の事だー
「それ…私ですよね?だって…私だけが、この世界の人達が何を喋っているのか、全く分かりませんから…。」