04諦めていた学生生活が?
「では早速、いくつかの案を」
香奈さんが、コホンッと一呼吸置いて話し始める。
「まず一つ、膨大な総魔力量を秘匿し政府の監視のもと、ストレスや危険を排した人里離れた土地で生活する」
ぐへー、いきなりヘビーですよ。
「そ、それは…」
「論外ですわ」
「論外ですね」
私が何か言うより先生と香奈さんが先に言葉を続ける。
「まぁこれは人格に難があったり精神的に不安定な方に対する非常措置です。御免なさいね?伊織ちゃん、一応説明しとかないとダメなの」
「いえ、大丈夫ですよ。魔法省も大変なんですね」
「ふふ、ありがと。次に二つめ、Aクラス以上の冒険者達のギルド等に所属し、戦い方や魔力のコントロール、魔法の習得をしながら生活する」
ふむ。なるほどー。
魔力のコントロールを覚えながら自分の生活費も稼ぐのか。
悪くないのかな?
「そ、それなら…」
「駄目ね」
「駄目ですね」
ハモりデジャヴ。
「そうですか?そんなに悪くない気もします。お仕事も出来ますし」
「危ないわ」
「危ないですね」
…いやそうでしょうけど。
なんか私の意志より私情を挟んでないかな?この2人?
「それに上位ギルドに所属すれば要請に応じて全国各地に赴く事になるの。私や、メイリー孤児院の先生方の目が届かない事になっちゃう」
「孤児院の子達もこの子にとても懐いていますし、あまり生活様式が一変してしまうのは困ります」
なるほど、香奈さんと先生の話を聞くと納得する。
私も孤児院からあんまり離れるような生活になるのはヤダなー。
「なので、最後の案、本命ですね」
そこで香奈さんが一区切り。
「国立ラウル魔法養成学校に特別枠として編入し、魔力のコントロールを学び魔法も習得し、勉学に励み学友を作り、青春を謳歌して卒業する」
「ラウル魔法養成学校って…」
「この国の最高教育機関の…?」
私と先生あんぐり。
ある意味1番リアリティが無い。
ラウル魔法養成学校といえば、生まれついて強力なスキルを持っていたり、希少な魔法、属性の扱いに特化していたり、代々強力な魔術師を輩出している家系、果ては勇者や聖女の素質があるものが入学できるまさにエリートの為の機関。
孤児院育ちの私には生涯縁の無いものだった…はず。
「今二人が思っている通り、ラウル魔法養成学校とはそういう場所でした。以前までは」
「…と、言いますと?」
「今は魔力測定器のおかげで、今までわからなかった潜在魔力まで量れるようになりました。従来通り、強力スキルや希少魔法所有者は勿論のこと、これから総魔力量も入学の基準にするようになったのです」
知らなかった。
孤児院は15歳を過ぎると国からの補助が無くなり、自分で食費や家賃を稼がなくてはならない。
だからスキルも魔法もろくにない私は中学を卒業したら孤児院で住み込みで働くことばかり考えていた。
それに自分の総魔力量が多いことなんて夢にも思っていなかったから尚更だ。
「で、でも今はもう5月ですし、入学式も終わってますよね?」
そうなのだ。
私の魔力測定の番が回ってきたのはもう、5月。
もう同級生の皆んなはすでに入学式して一月たっている。
ましてや国の最高教育機関である。
途中編入など出来るのだろうか?
「大丈夫よ?心配しなくて」
こちらの心配を察してか、香奈さんが微笑む。
「どうしてですか?」
「魔法省として、そして私個人との強いコネクションがあるのよ、あの学校には」
う、裏◯入学?だ、大丈夫なのかな?