31.救出
シャービルを追跡し、撃破する実戦練習。
サーチ能力を持つ、明月ほたると逢坂涼子。この二人が、異界の化け物であるシャービルの場所を特定し、「ひかり」という攻撃能力を持つ俺が、ヤツを仕留める。
そんな実戦も、もう何度目だろうか。俺たちは大分慣れてきて、初めの頃よりうまく立ち回れるようになったと思う。人ってのは、どんなことだって、繰り返すうちに成長するらしい。学校の勉強だって、もしかしたら、おんなじなんだろうか。そんな思いが頭をよぎる。いやいや、しかし、あれはそれ以前に、繰り返す気が起こらないのだ。
ともかく、シャービルを片っ端から探し出して、倒す。それが当面の目標だった。
全国的に見ると、それほど出現する数は多くない。だけど、シャービルは、基本的に俺を狙っていて、俺の周りの出現率は高くなっているようだった。
もちろん、それでもシャービルが見つからない日もある。今日はどうやらその日に当たったようで、シャービルを発見できそうになかった。かれこれ二時間弱は探しているだろうか。
もう見つからない、とあきらめて帰ろうとしたそのとき。
「いた!」
涼子が叫んだ。
「どっち? あっ、ほんとだ!」
ほたるも同意する。
俺たちはその方向へ急いだ。三人の足音と息遣いが夜道を走る。慣れてきたとは言え、相手はするどい歯を持つ化け物。一歩間違えれば大怪我を負わされかねない。緊張感が張り詰める。
「誰か襲われてる!」
ほたるの声だ。あたりは暗くなって、よくわからないが、女性が倒れているようだった。
「助けないと!」
「なるべく顔を見られないようにしろよ」
俺はそう忠告した。俺たちの持っている能力は、この世界では特異だ。危険とみなされるかもしれないし、実験対象にされるかもしれない。身元を特定されるのは得策ではなかった。
その女性を二人に任せて、俺はシャービルの後を追った。奴のぎこちない足音が、道の向こうへ向かっていた。
「待て、シャービル!」
俺の声に気づいたのか、足音が止まる。俺は暗闇を睨みつける。
今、シャービルはその首をこちらへ振り向けているのだろう。暗いおかげで、グロテスクな顔を見ずにすむ。それはありがたいが、その暗さのせいで、位置が特定しづらく、危険だ。俺は「ひかり」を発動させ、体の周りに八の字を描く。
奴の姿が見えた。間髪入れず、「ひかり」を奴に向けて放つ――命中した。
化け物が上げる断末魔の叫び。
毎度ながら、シャービルの鳴き声は、耳障りだ。
倒れていた女性の元へ戻る。涼子とほたるは、見られないよう、顔を背けながら介抱していた。
「どうだ?」
「驚いて倒れただけみたい。大丈夫だと思う」
「そうか」
うーん、と女性が呻く。俺は慌てて背中を向ける。ポーティはその俺の陰に隠れる。
「すみません、僕ら行かないといけないんです。救急車、自分で呼べますか?」
「ええ……」
と女性は言った。
「あの、お名前を……」
「もう行かないと。気をつけて」
「ごめんなさい」
俺たちは、その場を走り去った。
……と、見せかけて、実は角のところに隠れて見守っていた。やっぱり放っては置けない。様子を見て、女性の怪我が酷いようなら、病院に運ぼうと思ったのだ。その際正体がばれてしまうのは、もう仕方ない。
けれど、心配には及ばないようだった。しばらくして、遠くの街灯に照らされながら歩いて行く女性が見えた。しっかりとした足取りだった
。
ほっと胸をなでおろして、今度こそその場を去った。
だが、俺たちは知らなかった。その女性が、雑誌の記者であるということを。




