21.襲撃
もう、変わり映えしない毎日とは言えなかった。
シャービルが出たのに、平凡な毎日であろうはずがない。あの日、全てが変わってしまった。
俺は新聞によく目を通すようになった。何物かに人が襲われたというニュース。行方不明者や、犯人不明の傷害事件。
最近その手のニュースが増えていた。
今日も、いくつか記事を見つけた。夕刻、背後から襲われ、怪我をした人の話。夜出て行ったきり、行方不明になってしまった人の話。街に不穏な空気が漂い始めている。
テレビ番組でも取り上げられるようになった。それらの襲撃事件についての見解は、大部分が見当はずれの組織犯罪説だが、ごくたまに、化け物を見た、という証言があった。ほとんどの人が一笑に付したが、俺は笑えなかった。シャービルに違いなかった。
俺は、あれから三匹のシャービルと出会った。
何とか「ひかり」で撃退することはできた。しかし、事件が増えているとはいえ、これはどう考えても多過ぎる。そういう事件は、日本全国でも、週に数件といったところだ。ニュースで取り上げられないものがあるとしても、一人の人間が、二回も襲われた、という話は聞かない。何故俺ばかりが三回もシャービルと出くわすのだ?
もしかして、シャービルは、俺を狙ってやって来ているのか? だからこう何度も襲われるのだろうか。
その考えは当たらずとも遠からずな気がした。それは異世界での戦いの報復なのだろうか。だとしたら……。
俺は、学校から帰るとなるべく人の少ないところにいるようにした。格好つけるわけじゃないが、関係のない人を巻き添えにしたくない。俺を狙ってきているのなら、俺に近寄ると危険が増すわけだ。それに俺には「ひかり」があるが、一般の人は無防備だ。
今日もまた、俺は放課後、人気のない公園のベンチで一人悩んでいた。頭の中は異世界と魔物のことで一杯だった。どうやってヤツらは、こっちへ来たのだろう。何のために、来たのだろう。目的は、俺への復讐だけなのか? 一体、俺はこれからどうするべきなのか……。
考えが堂々巡りを始めたそのとき、どこかで悲鳴が上がった。




