13.朝食
「起きて! 朝よ」
その声に叩き起こされた俺は、一度目を開けるが、すぐにまた布団の奥へもぐり込む。
「うーん、もうちょっとだけ……」
「寝ぼけてないで、早く起きる!」
あれ、母さんの声じゃないな……俺はハッとして起きあがる。そうだ、俺は別の世界へ来ているのだった。
「よっしゃ」
俺は軽くガッツポーズを取った。とりあえずは学校に行かずに済む。あの退屈な時間を過ごさすに済むのだ。異世界バンザイ。だが、ポーティの言葉が、俺に恐ろしい現実を突きつける。
「さあ、魔王を倒しに行くわよ」
「げっ」
そうだった。こっちは命がけなのだ。まだ学校の方がマシかもしれない。ただ座って時間が過ぎるのを待っていればいいんだから。退屈かもしれないが、死ぬ危険はない。
そうだ。俺は死ぬかもしれない。そう思うと恐怖が喉をせりあがってくる。
そのとき、扉をノックする音がした。
「はい」
「あの、朝食をお届けに来ました」
「あ、どうぞ」
あの女の子だった。お盆に食事を乗せて持ってきてくれたのだ。
ごはんと汁物、二・三のおかずだけだったが、どうせ、うまいに決まっている。ここの食べ物で、まずかったためしがない。
「ありがとう」
お礼を言うと、女の子は嬉しそうに、しかし伏し目がちに微笑んだ。そしてお辞儀をして、恥ずかしそうに言った。
「ごゆっくりどうぞ」
「うまい!」
ちくしょう、やっぱりうまいじゃないか。この世界は食の天国だ。それは間違いなかった。何というか、「本物」の味がする。これを食べると、正直、俺のいつも食べているのはまがい物ではないか、と疑いたくなる。妙に手を加える必要もなく、素材が抜群なのだ。この出汁もうまい。この煮物もうまい。こうなったら死ぬ前に、味わえるだけ味わってやる。
「ん、何だこれ」
小皿に何か入っている。どうやら蜂蜜らしかった。だが、どれにかけるのだろうか。ご飯に蜂蜜? それはないか……。
「あっ、それ私のだ!」
ポーティは飛んでくると、蜂蜜をちゅうちゅう吸い始めた。
「ふーん。妖精は蜂蜜を飲むんだ」
妙に感心していると、ポーティもこう叫んだ。
「おいしい!」




