105⚫️救いのない時代
ルドルフとボビーは気が合う。ふたりで声を掛け合いながら問題箇所を次々と特定していく。
「くわあぁ。ボビーさん、いいなあ!話が速い!」
「いやあ、ルドルフさんこそ、よくわかってる!すごいね!」
技術屋魂に火が点いているのだ。
「なんや、このOS、名前ついてるで。F042・・・これが元々のやつやな。」
「こっちには、M035というものがあるぞお!ふん、わたしにだって、これぐらいはわかるのだあ!」
「バーバラさん、それは後からインストールされたもののようですね。」
「えっと、ルナだっけ?うん、お前、仕事が丁寧だな。うちの’ユキカゼ’に来ないか?」
「ちょっとお!うちのかわいい’もひとつ’、引き抜かないでよ。」
「マリカさん、大丈夫ですよ。わたし、調査艦隊が好きだもん。」
「航海日誌を見つけた。モニターに出すぞ。」
マチルダの操作で現れる記録に、全員が注目する。
それは遥かに遠い昔、その超巨大戦艦の進水式から始まり、乗員が全員退避退艦するところで終わっていた。
「航行中にコンピュータがバグったんですね。F042が沈黙、右舷側のコントロールが不調とあります。」ボビーが確認する。
「そこで技術部の個人が持っていたM035を入れ込んだのか。うーん、緊急対応だなあ。わからなくはないけど。」ルドルフが呟く。
「で、結局、全体のバランスが崩れどうしようもなくなった、ってことよね。操縦するのは厄介ねえ。」マリカが言う。
「それで沈黙しても、次の目標地点を勝手に決めるF042を制御しようとM035が何度も干渉してる。」トーマスが声を落とす。
「これ・・・なんか悲しいよな。エネルギーの消費量なんか無視して、どんどん突っ走るF042。バグのせいだけど、プログラムどおりに動こうと必死だったんだな。」トーマスが低い声を出す。
「M035も・・・何とかF042を支えようと・・・。」
「どうしてクルーは逃げ出したんだ?この状態で艦をほっぽりだすなんて。」
「一時期、大量造船ブームみたいなものがあったらしいで。その世代艦船が動作不良になった時、数の多さに対応が後手にまわったんや。」
「あのステルス増税の闇の時期かあ。」
「そうだな。貧富の差も拡大し、人口の減少が始まった時代だ。」
「誰もこういう艦船を真剣に助けようとせず、戦争だけを続けていた・・・。」
「大量生産、大量廃棄。それでは持続可能な社会どころか、この’幽霊船’のような問題が続出じゃないのかあ!」
救いがない。’幽霊船’を内部破壊で沈めることになるのか。
止める手立てはないのか。
一同は考え込む。




