068⚫️発見現場で
まさか・・・。ここは40万年前の地層だ。
年代測定機は確かにその数値を弾き出している。
オルド・パイライトは震える両手で、
地中から頭を出した“それ”を慎重に掘り出した。
この時代にヒトが存在したことは、
少し離れた区域で見つかった遺物から、すでに確度が高かった。
だが、その’本命の発掘現場’には立ち入れない。
’高名な先生たち’が学生や人員を引き連れ、
ガイドとボディガードに守られながら作業している。
・・・自分は、こんな外れでしか掘らせてもらえんのか。
そう愚痴りながら土を払っていた時、
彼は’それ’を見つけた。
黒い石肌は、まるでマット加工のように光を吸い込む。
掌に吸い付くような心地よさ。
そして何より
明らかに人工物であることを示す文様。
直線、波線、円、楕円、十字。
それだけではない。
何十種類もの特殊な形が繰り返し彫り込まれている。
ヒトの顔のようなものまである。
技術図解か? いや、儀式の記録?
違う・・・。これは、もっと’意図’がある。
胸の奥がざわついた。
ここは、この惑星で初めて火を使い始めた痕跡がある場所。
その同年代の地層から、こんなものが出るなどとはあり得ん。
まさか・・・すでに文字が使われていたのか?
衝撃的な推論に、オルドは打ち震えた。
その時だった。
少し離れた“大発見”の現場から、乾いた連続音が響いた。
銃声だ。しかも複数。
まずい! 何かあったんだ!
オルドは咄嗟に石と年代測定データ、
そして用途不明のガラクタをかき集め、リュックに押し込んだ。
足が震える。
喉が渇く。
だが、走るしかない。
逃げるのだ。
まだ無名の自分がここで死んでも、
何ひとつ後世には伝わらないのだから。




