6/95
005⚫️シャルロットの黒い炎の理由 *
『源氏物語』において、光源氏の最期を象徴する巻「雲隠」は、本文を持たぬ空白の章として知られる。描かぬことそのものが、底知れぬ無常を語る。
ここでも同じく、シャルロットの「黒い炎」の詳細は語られない。
ただし、その巨大な影だけは、彼女の瞳の奥に焼き付いている。
彼女が男という種に向ける憎悪の根には、あの’リングサイドのマネージャー’が深く、暗く関わっている。
地獄の底を這った彼女は、復讐心だけを唯一の燃料にしてその誘いに乗り、通称’虎の穴’と呼ばれる養成施設へ身を投じた。
常人の限界を超える、死よりも過酷な訓練が繰り返される。
だが、彼女の狂気にも似た動機は、やがて脆弱なむすめ時代を焼き払い、非情なる’勝利の女神ニケ’を造り上げたのである。*
* をつけました。




