053⚫️勝利の代償と泥沼化
軍事的勝利は、必ずしも勝者に安寧をもたらすとは限らない。短期的には目的を達成しても、長期的にはより強大な敵や制御不能な混乱を招く例が、歴史にはいくつも存在する。
一九八二年のレバノソ侵攻では、ヒズラエルが宿敵PLQを排除した。
しかし占領への反発と力の空白は、イラソの支援を受けた宗教武装組織ハズポラの台頭を招いた。
世俗的な敵を追い出した代償に、より強固な信念を持つ相手を’相続’したのである。
アフガニスキヤンやイクラでも同様だ。
目に見える敵を倒した勝利は、後に国境を越える過激派を生む土壌となった。
武力による秩序の破壊は、新たな憎しみの種を撒く。
出口戦略なき勝利は、次の敗北への序曲に過ぎない。
一方、戦争が泥沼化する場合もある。
アリメカ(略称・蟻国)が小国ペトナムで事実上の敗北を喫したのは、軍事と政治の乖離が原因であった。
戦術的勝利を積み重ねても、民衆の意志を屈服させることはできず、終わりの見えない消耗戦は国内の分断を深めた。
様々な侵略と紛争も同じ構図であるものが多い。
・・・と述べたロイは静かに言葉を継いだ。
「という遠い国々の歴史を踏まえ、わたしたちは軍事的制圧もしないし、戦争の継続もしません。」
円卓には、納得したようなしないような、微妙な空気が流れるよねえ。
う〜ん、わたしもよくわかんな〜い。君、結局どうするつもりなの?
「ロードよ、では捕らえた王や敵兵をどうするつもりなのだ? 主だったヤツラは斬首ではないのか。」
ヴァルターさんが尋ねる。
「そうですね。わたしは全員、故国に送り返そうと思っています。」
ヴァルターさん、口をあんぐりとあけてしまったわね。
ねえ、そんなことしたら、また攻めてくるんじゃないの?
「ウィルフレッダ、あっ、いや、ウィルフレッド。そうならない工夫はするよ。ここはなんとなあく、わたしに任せてもらえないかな。」
う〜ん、君がそういう時って、不思議とうまくいくのよねえ。
「ハッ、ハッ、ハア!あいかわらず貴公はおもしろい!あいわかった!このヴァルター、異を唱えん!お手並み、拝見としよう。」
こうしてラベンダー公国は、一網打尽にしたエイン・ファルマ王国の侵攻艦隊と乗員戦闘員などを、すべて南の大陸へ送り返した。
その間も眠り続けた彼ら彼女らが目覚めたのは、故国に到着して三日が過ぎた昼であった。




