035⚫️思い
ウワバミ、最近少しつけ上がっているんじゃないの?
私、直属の’風の軍団’を束ねる頭なのよ。
あなたは軍団を出て、陛下の使い走りになっただけに過ぎない。
それなのに、大層な御用を仰せつかって、大きな船まで造らせてもらって。
何だか、自分が特別な存在にでもなったつもり?
つけあがるんじゃないわ。
私のキキスギは、実は陛下のお子なのよ。
誰にも言えないけれど。
陛下には他に世継ぎがおられない。
だからこそ・・・。
ええ、そうよ。陛下は、ちゃんとあの子のことを気にかけておられる。
時折あの子の様子を陛下にお伝えしているのだし。
皇太子なんて、そんな大それたことは望まない。
でも、せめて貴族の末席にくらいは加えていただけるはずよ。
陛下のお血筋を引いているのだから。
公爵は無理でも、侯爵・・・いいえ、伯爵で構わないわ。
そうなったら、見栄えのいい屋敷を構えて、そこで暮らすの。
部屋には古い暖炉があって、私は揺り椅子に座って、レースを編むの。
きっとそうなる。そうに決まっているわ。
だから・・・あともう少しの辛抱。
陛下が公国を討ち果たし、凱旋された暁には、
相応の論功行賞があるはずだもの。
これだけ尽くしてきたんだもの。
大丈夫。絶対、大丈夫よ・・・。
自分を必死に言い聞かせていたイイスギの耳に、
冷酷な一報が届いた。
ウワバミが、子を宿した。
それは他ならぬ、王レグナスの種であった。




