031⚫️雲間より
国王レグナス・ザルン・エインに、待望の新造艦が披露された。
知り得た’最新’の流体力学をもとに設計されたその船体は、山のごとく堅牢でありながら、水面を滑るイルカのような優雅さを併せ持っていた。
王は身を乗り出し、満足げに頷いた。
ウワバミが一歩前へ踏み出し、凛とした声で説明を始める。
「陛下。この艦の容積率は旧来の艦を遥かに凌ぎ、その堅牢さはあの海獣艦すら過去のものといたします。徹底した火炎防御を施し、なおかつ疾風のごとき船足を両立させました。想定し得るあらゆる脅威を退けるべく、建造した次第にございます。」
「うむ、見事だ。」
レグナスは重厚な声で宣言した。
「直ちに進水式を執り行う。この艦を、我が王国の威光を示す象徴として、’ファルマ・ザ・グレイト’と命名する。」
着水した’ファルマ・ザ・グレイト’は、巨大な帆が風を孕むや否や、驚くべき鋭さで湾内を駆け抜けた。
岸壁を埋め尽くした貴族や民衆は、そのあまりの迫力に歓声すら忘れ、ただ圧倒されて立ち尽くす。
これでよい。あとは数を揃え、蹂躙するのみだ。
王の脳裏には、既に公国が炎に包まれる未来図が描かれていた。
だが、祝祭に沸く地上とは対極の場所。厚く垂れ込めた曇天の、さらに遥か上空の雲間を、音もなく微かな影が横切った。
しかし・・・それに気づく者は、地上には誰一人としていなかった。




