20/95
019⚫️’それ’ & 020⚫️ウワバミの苦悩
019⚫️’それ’
’それ’は、南の大陸へ向かっていた。
距離が縮まるにつれ、海岸線の輪郭がゆっくりと形を成していく。
水際から内陸へ伸びる一本の道が見える。
その先には街や城があるはずだ。
’それ’は、ただ静かに観察を続けた。
今日は、このあたりまでだ。
そう判断し反転する。
痕跡を残すことなく、来た方角へと戻っていく。
020⚫️ウワバミの苦悩
「そうだ。高速艦を超える艦を作れ。炎に強く、小回りが効く大型艦だ。」
・・・無茶苦茶な命令だ。
そう喉まで出かかった言葉を、ウワバミは飲み込んだ。
「御意・・・。」
深く頭を下げて退席する。
’風の軍団’から抜擢され、御側御用役を仰せつかった。
だが実際は、ただの使いっ走りじゃないのよ。
あ〜あ・・・。家事もたまってるのよねえ。
一人暮らしだから誰も文句は言わないけど。
イイスギ、いや、お頭はキキスギちゃんの養育を任せきりで、
東奔西走している。
こんな時、前のお頭がいてくれたら相談できるのになあ。
島流しになって、もう随分になる。
生きているのだろうか。
いやいや、現実逃避してる場合じゃない。
工廠の職人もバルハイン将軍もいないんだから、
この無茶ぶりを、いったい誰に伝えればいいの。
ウワバミはため息をつき、
重臣のひとり、ダレオレのもとへ向かうことにした。




