マジックテニスは……
あれから1週間。夏休みもそろそろ終わる頃の部活動。
新学期が始まろうとし部活もより一層励もうという時期に、俺と紅玉はフェンスの外でみんなの練習を眺めていた。
「まさか私がこんな惨めなことになるなんてね」
「マジックテニスが続けられるんだ。安いもんだろ」
怪我による見学。
あの試合で俺は全治1週間、紅玉は3週間の軽傷を負った。
紅玉はヒビの入った手首、俺は目が特に酷く治るのに時間がかかるらしい。
魔眼を出したのがダメだったらしく、あと少し出し続けたら失明してたと医者から怒られてしまった。今は右目に眼帯をつけて視力が戻るのを待っている。左目もだいぶ治ったがまだ見えづらい。
「目、ちゃんと元に戻るの?」
「前よりも視力は落ちるけど、マジックテニスに支障が出るほどじゃない」
「魔眼にも掛け合わせがあったのね。知らなかったわ」
医者から聞いた話だが、あの試合で使った魔眼は神眼ではなく、混合眼という透眼、未来眼、思眼が組み合わさったものだった。
信介と習得のために練習したのが原因らしく、試合の時にがむしゃらに目に魔力を流したことでこの3つが覚醒してしまった。
3つの魔眼を使えるという風に言えば便利で強力そうだが、3つ全てを最大限まで伸ばすことはできないらしく、その上3つをそれぞれ分けて使うことはできない。しかも、3つの魔眼を同時に使用することになっているので消費魔力も目への負担も3倍になっていて、デメリットが大きすぎて今の俺では使いこなせない。というより、どんな魔法使いも使いこなすのは難しいようで、おそらく今後この魔眼を使うことはないだろう。
せっかく新しい能力に目覚めたのに喜べないとは、どこまでも運命というものは俺を苦しめたいらしい。
恨めしく思っていると、信介の驚愕する声が耳に入ってきた。
「すげえ⁉ ラケットがヌンチャクになってる⁉」
信介は試合相手の高橋幸の武人のごとき動きにさっきからずっとあのテンションだ。
「あの子、毎日のようにあなたを勧誘しに来てるわね」
高橋幸がウチの学校に来た理由は、俺を東法へ誘うことだった。
彼女に諦めという言葉はないらしく、紅玉に怒鳴られても眉一つ動かさずに来る。
そこに目を付けた信介が練習に誘い、今の状況になった。
練習試合だが、今のところ高橋幸が1ポイントも取られず全勝している。信介も部長も高橋幸には勝てない。
俺も1対1で試合をしたら絶対に負ける。改めて考えると、あの試合で俺たちが勝てたのは奇跡だったんだ。
己の実力不足を嘆きつつ、俺は目を瞑る。
最近、変化してきたことがある。
嫉妬の対象が信介以外にも広がったのだ。
嫉妬とは、その対象にある程度自身も近づかないと湧き出てこない。
「ふふ……」
己の成長に歓喜せずにはいられない。
紅玉、そして蒼葛…………今のまま俺を見下ろしていたらその玉座、引きずりおろしてやる。
「ああ、面白い」
マジックテニスは、面白い。




