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三十一話 目的地手前と賠償金

ケイトの身柄を狙った傭兵団との激しい戦いの後は、特にこれといったトラブルもなくと言いたいところだったが、この一週間で三回宙賊に襲われた。


『アレン、全部撃ち落としたから帰投する』

『こっちも終わったから、戻るわ』


「了解」


ネオンとゼナがそそくさと片付けてしまうので、まったくもって大した脅威ではなく、むしろ討伐報奨金と懸賞金が手に入る分嬉しいぐらいなのだが、疑問は覚えてしまう。


「遠回りの航路を選んだはずなんだけどな、宙賊がそれだけ多いのか?」


「星系ネットワークから仕入れた情報になりますが、最近リノレス星系では宙賊の活動が活発化しているようで、星系軍と行政府は頭を悩ましているそうです」


「お偉いさんは大変だろうけど、傭兵としては仕事に事欠かなくて働き甲斐があるな」

「ジーベックの改修を終えたら、しばらくはリノレス星系で活動するのですか?」


「一応はその予定だな、出ていったレボルを稼がないといけないからな」


ジーベックの改修費でかなりの出費を予定しているので、暫くはレボル稼ぎに専念することになるだろうとアレンは考えていた。


(あとは無事にリノレスセカンダスコロニーに到着できれば御の字だな)


口には出さなかったが、アレンは内心切に願っていた。


◆◆◆◆


そんなアレンの願いが通じたのか、無事にリノレスセカンダスコロニーの防衛圏に入ることができた。


「ふぅ、一安心だな」

「そうですね、ここからの手順としてはリノレスセカンダスコロニーに停泊し、リノレスⅠへの降下申請をするのですよね?」


「ああ、ケイトがいるから申請に時間が掛かることはないとは思うけど…」

「むしろ護衛依頼はこっからが本番だぞ、アレン」


「ゼナ」

「リノレスセカンダスコロニーは、奴さんの縄張りだ、アイレーンコロニーとは違って船に隠れるって手は通用しないと思った方がいいな」


コロニーに入港する際は、港湾管理局に搭乗員名簿を提出する義務があり、搭乗員名簿を偽ることは連邦法に違反する違法行為なので、避けることはできない。


故にもし港湾管理局のデータベースにアクセスする権限を持っていたら、ケイトの居場所は容易にバレてしまう。


「やっぱりケイトにすぐに父親に連絡をとってもらって助けてもらうのが一番だよな?」

「それが一番確実だろ、同じ立場の人間ならコロニーでの影響力は同じくらいあるだろうし、少なくとも私たちだけで戦うよりかはマシなはずだ」


「そうだな、その件を話してみるか」


アレンはすぐに通信で、ケイトに連絡する。


「ケイト、もう少しリノレスセカンダスコロニーに入港できる見通しだ」

『おっ、それは朗報だね』

「朗報なんだが、コロニー内で敵が待ち構えてる可能性が高いから、父親に連絡してくれないか?」


『そうだね、この二週間で状況が変わったかもしれないし、連絡してみるよ』

『頼む』


「エレン、ここは任せる」

「かしこまりました」


「ゼナ、行こう」

「おう」


アレンとゼナの二人は、ブリッジを後にして、ケイトがいるリラクゼーションルームに向かう。


リラクゼーションルームのハッチを開けると、ちょうどテーブルのホログラム越しに、男性とケイトが通信していた。


「それじゃあ私が誘拐される危険性はなくなったということかな?」

『そう思ってくれて構わない、レビックは既に私との戦いに敗北した。お前を誘拐しても何も変わらない』

「父さんへの復讐の為に私を誘拐をする可能性は?」


『そんなことをするよりも残った自らの地位を維持することの方が奴にとって大事だ』

「本当に?」

『信用しろとは言わんが、少なくともコロニー内で襲われるようなことはないと思ってくれていい』


「その言葉は信じようか。それと私に対する賠償金を支払ってもらおうか」

『…いくらだ?』

「2億レボル、賠償金の内訳は送ったデータに入ってるよ」


『ふむ、妥当な額と言いたいところだが、これはお前が乗る航宙艦が新造されたばかりのものであった場合だ。1億3000万レボルにしなさい』

「父さん、2億レボルには私を雇ってくれた傭兵たちへの危険手当も含まれてあるのだよ」

『7000万レボルもか』


「妥当だよ、私が勘定を間違えないことぐらいは知ってるだろう?」

『…その傭兵団の団長に会わせなさい』

「構わないよ」


通信をミュートにしたケイトが立ち上がると、通信を聞いていたアレンと目が合う。


「あっ、ちょうどいいところに、話は聞いていたね?」

「ああ、話せばいいのか?」

「うん、そう身構えなくても大丈夫だよ。今通信してるのはあくまでケイト・エルフォードの父親だからね」


頷いたアレンは、ケイトと変わるようにソファーに座り、ミュートを解除する。


「代わりました、ブロンズランクの傭兵団スターリングの団長アレン・リードと申します」

『ケイトの父、オーベル・エルフォードだ。失礼ながらブロンズランクと言ったのかね?』


「はい、傭兵になったのはつい最近なので」

『そうか、アレン君は何故ケイトの護衛依頼を引き受けたのかね』


「半分は成り行き、半分は下心です」

『成り行きと下心か、正直者は嫌いではないが成り行きか、君たちの実力の高さも含めてケイトは幸運だったようだ』

「そうかもしれません』


『私とケイトの関係は一般的な父と娘の関係とは言い難いが、それでも娘であるケイトを守ってくれたことには素直に感謝する、ありがとう』

「それがケイトからの依頼でしたから、それにまだ依頼は終わっていませんし」


『そうだな、ケイトを無事にリノレスⅠまで送り届けてくれ』

「はい」


言葉を返したアレンは、後ろに立っていたケイトと代わる。


「お連れ様、団長殿」

「茶化すなよ、ゼナ」

「はは、悪いな、お偉いさんと話すのは疲れるだろ」

「それなりにな、今回は向こうもケイトの父親として話してたみたいだから、あまり圧は感じなかったけど」


「私をお偉いさんとかの話し合いの場に同行させるのは止めてくれよ、まどろっこしいことを話してると手がでるから」

「手がでない努力ぐらいはしてくれよ」


「自制ができるなら私は軍を不名誉除隊になってないぞ」

「嫌な説得力の高さをしたエピソードだな」


「まぁ、手が出る云々は半分冗談だが、こっちには武力があるんだ、あまりスターリングが舐められるような交渉をするなよ」


「クルーが不利益にならないようには努力するよ」

「そのクルーを頼るのも忘れるなよ、私とネオンは交渉事に長けてるとは言えないかもしれないが、エレンは十分戦力になるだろうしな」


「ああ、エレンには彼女のできる範囲でお願いするよ」


そんな話をしているうちに、ケイトは父親との通信を終えたようだった。


「やぁ、きっかり父から賠償金をせしめておいたからスターリングの分は後で送金させてもらうよ」

「賠償金って、自分の父親から取るのか」


「肉親であれ、迷惑をかけられた分の補填はしてもらわないとね」


オーベルの言う通り、ケイトとオーベルの関係は普通の父親と娘の関係とはかけ離れているのだと、アレンは強く理解した。


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