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二十八話 機動鋼翼の力

ネオンとシルヴァーナにとって、中型戦闘艦と小型戦闘艇七隻というのはそれなりに苦戦する相手であった。


戦いにおいて数は力だ、とは言いつつも七隻の小型戦闘艇と中型戦闘艦の攻撃を受けながらも、無傷どころか三隻の小型戦闘艇を撃ち落としたシルヴァーナに、傭兵たちの方が戦慄していた。


『お、おい、あの銀色のやつヤバくないか?』

『落ち着け、所詮は一機のARMSだ、ミサイルの飽和攻撃には耐えらないはずだ!』


傭兵たちがそんな通信をしているとは露知らず、ロックオン警報が鳴り響くコックピットの中で、ネオンは冷静に、迎撃する。


格闘形態に変形させたシルヴァーナの頭部ビームバルカンで迫るシーカーミサイル群を破壊する。


ミサイルの爆発をシールドを展開しながら突っ切ったシルヴァーナのライフル口から、放たれた閃光が一隻の小型戦闘艇を貫き、爆散させる。


『敵艦より巡航ミサイル二』

「ん」


ネオンは、六枚の機動鋼翼のうち二枚を展開し、剣へと変形させ、二発の巡航ミサイルに、突撃させる。


巡航ミサイルが派手に爆発し、無傷の二枚の機動鋼翼が現れる。


それを回収しながら、高エネルギービームライフルを放ち、敵の母艦を牽制する。


『ネオン、ジーベックが敵船に強制ドッキングさせられている模様です』

「ーー」


激しい戦闘の最中、冷静なシルヴィの報告と共に、突撃揚陸艦に張り付かれたジーベックの映像が、ディスプレイに映る。


「そう」


返事をしたネオンの声音は極めて平静を保っていたが、付き合いの長いシルヴィには分かった、ネオンは今キレていると。


ネオンは、機動鋼翼一枚一枚を、ビームを放つ銃口へと変形させて、射出する。


シルヴァーナから、展開された六枚の機動鋼翼は、三隻の小型戦闘艇を取り囲む。


「撃て」


ビーム砲の機動鋼翼が目覚めたように、一斉にビームを放ち、三隻の小型戦闘艇を、蜂の巣にし瞬く間に撃沈させる。


突然のオールレンジ攻撃に、小型戦闘艇のパイロットたちは、反応することすらできなかった。


飛行形態に変形したシルヴァーナは、六枚の機動鋼翼を従え、中型戦闘艦に突撃する。


中型戦闘艦のレーザー砲が、迎撃に動くが高機動で動くシルヴァーナにはかすりもしない。


『化け物か!?』

「撃て」


縦横無尽に動く六枚の機動鋼翼が、中型戦闘艦を襲い、ミサイル発射口、レーザー砲、メインスラスター、サブスラスターを破壊し、航行不能にしてしまう。


「シルヴィ」

『エルカノは三隻の小型戦闘艇と戦闘中、ジーベックは後方の中型戦闘艦にも攻撃を受けてます』

「ジーベックが先」


六枚の機動鋼翼を収納したシルヴァーナを加速させたネオンは、ジーベックを追う中型戦闘艦の照準を向ける。


ネオンは格闘形態に変形したシルヴァーナの高エネルギービームライフルに、分離した二枚の機動鋼翼を合体させ、威力と射程を向上させて放つ。


青いビーム光が中型戦闘艦のシールドを一瞬でオーバーヒートさせ、装甲を貫通する。


一撃で船首に風穴を開けられた中型戦闘艦が大きな爆発を上げる。


「アレン、あとは全部任せて」

『ネオン、無理はするなよ』

「ん、約束はできない」

『格納庫にリオンがいるから』


「ん、待ってて、すぐに行くから」


ブリッジ越しにアレンと会話できたネオンは、自分の心身が落ち着くのを感じながら、三隻の小型戦闘艇と戦うエルカノに、目を向け、高エネルギービームライフルの引き金を引く。


青いビームの襲われた小型戦闘艇たちは驚き、その隙をついたゼナに撃ち抜かれて、爆散する。


これ以上の援護は必要ないと判断したネオンは、格納庫への緊急着陸を試みる。


事前の予想通り、アレンは艦内ネットワークは守り切ったようで、ハッチが開き、シルヴァーナを片膝を着く形で、格納庫内に着陸させる。


剣とレーザーライフルを手に取ったネオンは、コックピットから降りる。


「ネオン殿」


着陸した時に確認していたが、二本の剣を腰に差し元々着ていた羽織のように袖が広いスペーススーツを着たリオンが待っていた。


「リオン、ケイトは?」

「カルラのコックピットでござる」

「そこなら安全」


ARMSのコックピットは安全性を担保するために、ハッチのロック機能が強固なので、非戦闘員をかくまうにはうってつけの場所だ。


「殲滅する」

「是非もない」


戦闘態勢の二人は、格納庫を出ていく。


「ネオン殿、こちらアレンから」

「ん、ありがとう」


敵の現在地をミニマップと一緒にヘルメットのHUDに表示させ、さらにヘルメットのタッチセンサーに触れて、敵の現在地までの最短経路を表示させる。


ネオンとリオンの二人は、特殊部隊の兵士もかくやという速度で、船内の通路を走り抜ける。


「近い」


レーザーライフルの出力を調節したネオンは、セレクターレバーを操作してセミオートに切り替える。


破壊された隔壁の跡を通り抜けると、ネオンはレーザーライフルのセーフティを解除する。


通路の角に片膝をついたネオンと、腰を落としたリオンはタイミングを合わせて、飛び出す。


「敵だ!」


リオンに気付いたパワードスーツを着た傭兵が、レーザーライフルの引き金を引こうとするが、それよりも先に、ネオンのレーザーライフルに脳天を貫かれる。


「シッ!」

「っ!?」


鞘走りで、抜刀されたリオンの刀は、パワードスーツの装甲をものともせず、容易く切り裂き、一撃で斬り捨てる。


「なっ!!?」


リオンは、止まらずレーザーガンを構えた傭兵を斬り捨て、一歩前に出た時、後ろで構える二人の傭兵のレーザーに、襲われるが、リオンの踏み込みは速く、レーザーライフルを斬り捨て、返す刀で、袈裟に斬る。


ネオンの援護も的確で、的確に急所を狙って飛んでくるレーザーにより、パーソナルシールドを展開せざるおえなくなる。


対人用のパーソナルシールドは、防御力は絶対的な反面、シールド越しに攻撃できないという欠点がある。


「クソ!、剣士を殺せ!、剣士が死ねば後ろのやつも終わりだ!」


リオンを攻撃しようとパーソナルシールドを切った傭兵の脳天を、レーザーが貫く。


「馬鹿な!?」


傭兵が驚いたのは、パワードスーツのヘルメットを容易く貫いたレーザーの威力だ。


そう簡単に貫通されては、パワードスーツを着る意味がない。


ネオンが持つレーザーライフルはアレンがネオンの為に設計したこの宇宙に一丁しかないネオン専用レーザーライフルだ。


アレンが設計したとあって、その性能は通常のレーザーライフルを優に超える。


「くっ!」


既に半数以上の仲間を失っている、傭兵たちのリーダーは決断を迫られた。


「降伏する!」


リーダーが武器を捨て、両手を上げる。


それを見た部下たちも、武器を捨てて、両手をあげる。


彼らだって命は惜しいのだ。


『ネオン、如何する?』

『…アレンに聞く』


通信越しに連中の降伏を受け入れるかどうか聞かれたネオンは、アレンに指示を仰ぐことにした、何故なら自分であれば、アレンを危険に晒した連中を許せないと思ったからだ。


『降伏?』

『うん、六人排除したらそう言って武器を捨てた』

『ジャミングを停止させて、武装を完全放棄したら受け入れると伝えてくれ』


『分かった』


「ジャミング装置を停止、もしくは破壊し、パワードスーツを脱いだら降伏したと認める。もし何か妙な真似をしたと判断した場合は容赦はしない」


剣とライフルを持つリオンとネオンに脅された傭兵たちは、言う通りにする。


一方アレンは、ジャミングが解除されたことで、ゼナに通信を入れる。


「ゼナ」

『アレン!!、無事なのか!?』

『無事だ、乗り込んできた奴らもネオンとリオンのお陰で、降伏した。そっちの状況は?』


『ネオンのお陰で、何とかなったよ、二隻の中型戦闘艦はどっちも継戦は無理だな、小型戦闘艇の方は全て撃墜した』

「ゼナとエルカノは?」

『久しぶりに冷や汗をかかされたが、大きな損傷はない』


「それは良かった、降伏した連中を突撃揚陸艦に戻してから、船体を修理してからこの宙域を離脱するから、しばらく周囲の警戒を頼みたい」

『任せろ』


ゼナと通信を切ったアレンは、改めて通信を繋ぐ。


「ケイト、スターリングが勝ったから安心してくれ」

『その言葉を聞いて何よりも安心したよ、君たちと出会えた幸運に感謝しなければいけないね』

「まだ何も終わってない、とりあえずは隠れててくれ、全部片付いたら改めて迎えに行くから」

『分かった、待ってるよ』


全部の通信を終えたアレンは、息を吐く。


「アレン様、お疲れ様でした」

「エレンも、ありがとう」


最後にエレンと会話し、アレンは艦長席に深く座り直した。

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