歓迎会
翌日はどこか早足で過ぎ去り、歓迎会当日。
僕らは食堂に集まっていた。
開始時間の12時には少し早いが、エドさんをはじめ、村の皆が既に集まっている事。キャロ師匠が来ている事。料理が殆ど出来上がった事を踏まえて、父さんであるベン村長の口上が始まった。
「キャロ師匠。何もない村ですが、テッサの師となって下さり、感謝しております。心ばかりの歓迎の宴を準備しましたので、楽しんで頂けたら幸いです」
「キャロ・ムーンリバーです。こんな素敵な歓迎会を開いてくれてありがとう。テッサの師匠として、これからも精進していくのでテッサともども宜しくね。では、乾杯!」
「乾杯!」
大人達はエールのかわりにビールで、子供達はコーラで乾杯をした。
ビールは常温だったけれど、十分美味しかったようで、キャロ師匠に褒めて貰えた。
「これも、異世界のお酒でしょう。凄く美味しいわ」
「他にもいくつか出してあるので、楽しんで下さい」
ありがとう、とキャロ師匠が向かったのは料理の棚だ。今日は鳥の丸焼きがあり、ニネさんがそれを切り分けている。キャロ師匠はモモを丸ごと一本貰い、笑顔でかじり付いていた。
「さて、僕らも食べに行こうか」
「さんせーい♪」
「俺も鳥の丸焼き食いてぇ」
「皆で並ぼうぜ」
というわけで、鳥の丸焼きに並んだ。
モモ肉を切り分けて貰い、ソースをかける。
口に入れると、皮がパリパリしていて香ばしく、肉は柔らかくジューシーで肉の旨味たっぷりである。油が強いので酸味のあるソースと合い、さっぱりと食べられる。
「ニネさん、すっごく美味しいよ」
「そうか。たくさん食べなさい」
お代わりのモモ肉を貰い、端っこの席に座る。
このあたりは人もまばらだった。
次は何を食べようかと思案していると、宿屋のゲンさんとトモロさんが連れ立ってやってきた。
二人のお目当てはビールだった。宿屋で飲めるようにしたいと言う。僕は父さんに言っておく、と返事をした。
僕が仕入れ先であることをニネさん夫婦は知っているが、口止めをさせて貰っている。
珍しい食材の購入は全部領主様から買っている。
そう言うことにしてある。
父さんは、ビールが欲しい人に囲まれてしまったけれど、村長宅の倉庫にたくさんある。何とかなるだろう。
次は唐揚げを食べることにした。
3つ取って席に戻ると、テッサがカツ丼を頬張っていた。隣にはたくさんのフルーツを盛ったルビアもいる。
ルビアはフルーツの後にカレーを食べるそうだ。
唐揚げはじゅわっと肉汁が溢れてとても美味しい。これにマヨネーズとケチャップを付けて食べるやり方を覚えた。めっちゃ美味しい。あっと言う間に食べ終えた。
次はフルーツを貰いに行った。
フルーツの切り分けはニネさんの奥さん、アマネさんが担当していた。
「マンゴーの減りが早いから、先に食べちゃいなさい」
はい、と僕は合意して、ちょっと多めのマンゴーとメロン、そして苺を取り分けて貰った。
席に座り、マンゴーをフォークでパクリ。
「甘くて美味しい」
「俺も貰ってきたぜ」
ガイもフルーツを貰ってきたようだ。
先程フルーツを食べていたルビアは、カレーライスを完食したところだった。
「次はアイスを乗っけたあんみつ。取ってくるねー」
そう言うと、ルビアは厨房の方へ消えた。
「やあ。美味しそうなフルーツだね」
「エドさん! いつも指名依頼の仕事や買い出し、ありがとうございます」
「いやいや、なんて事はないさ。給金は貰ってるしね。所で、ダンジョン素材に興味があるって本当かい?」
「はい。ちょっと高いけど凄く美味しいです」
「旅に出ると聞いたよ。きっとダンジョンのそばを通るだろうから、これ。俺がうまいと思ったダンジョン素材のリストだ。参考にしてくれ」
「うわあ。ありがとうございます。色々仕入れようと思ってたんで助かります!」
「パーティなら簡単に狩れるのが蛙だ。色んなダンジョンがあるが、ハズレがない。後は、冊子を参考に仕入れてみるんだな。それと、各種ポーションだ。毒消しと熱冷ましもあるぞ」
「うわぁ、こんなにたくさん。お金を払います」
「金はいい。餞別だ。無事に帰って来いよ」
「はい!」
僕はしっかりと頷いて見せた。
フルーツを食べ終わり、オムライスを食べる。
卵がトロトロで美味しい。
横を見ると、キャロ師匠が来ており、テッサとルビアと話が盛り上がっていた。
「そうなの。あいつ、サイッテーなんだから! テッサにビンタされてもニヤニヤしてたの。私も髪を触られて、嫌だったなぁ」
話題はエンジのようである。
そこにガイが加わった。
「俺とカッスィーには何もしなかったぜ。ていうか、放置だった。いないみたいに扱われて、嫌だったよ」
「もうすぐ麦の作付けの手伝いで、出稼ぎ組がやってくるでしょう? エンジはもう来ないはずだけど、人が多いと諍いも増えるから、キャロ師匠も気をつけて」
「俺は痴漢撃退用の魔導具を師匠に貰ったから、大丈夫だ」
「それでも、心配でしょう。僕は旅に出ちゃうけど、テッサとキャロ師匠を頼むよ。ルビア、ガイ」
「まかしとけって。3才の俺とは違うぜ」
「まっかせといて! 変なのがいたらすぐお父さんに言うから」
「テッサには師匠である私がついてるわ。安心して旅立って頂戴」
テッサの師匠にもテッサを守って貰える事になり、僕は安心して息を吐いた。
オムライスを食べ終え、デザートにきな粉餅を食べた。
柔らかくて甘くて、とても美味しかった。
ルビアはクリームあんみつときな粉餅を食べ終え、食後のお茶を飲んでいる。
ガイは手土産のモミジ焼きを焼くと言って、不在だ。
テッサとキャロ師匠は、マンゴーを食べ終えてそのおいしさを語り合っている。
そろそろお開きになる頃、ガイが皆の前に出てきた。
「ささやかではありますが、お土産を用意しています。ひとり4個、モミジ焼きを持ち帰って下さい。生地は俺が焼きました」
「へえ、手掴みで食べやすいな。うん、あんこがたっぷりでうまいじゃないか」
「手伝いをして偉いな、ガイ。どれ、貰っていこう」
「はい。ありがとうございます!」
そうして、皆一人ずつお土産を貰って解散していく。
僕もしっかり貰ったよ。
「今日は歓迎会、ありがとうね。じゃあテッサ。家に帰りましょう」
「うん。じゃあまたな」
「またねー」
「またね」
皆に別れを告げ、家に帰る。
貰ったモミジ焼きをミラノさんと食べながら、旅の間の食事について、考えていた。
「旅の間の食事? そりゃあやっぱり、その土地のもんを食べるのが一番うまいですぜ」
「その土地の食事……」
「だいたいの町には食堂がありやすし、食いっぱぐれる事はないかと。もし、食事に困っても坊ちゃんのスキル【ネットスーパー】で弁当を出せば良いですしね」
「なるほどね。僕は料理が出来ないから、練習したほうが良いかと思ったんだ。でも、スキル【ネットスーパー】があるから、お弁当を出せば良いんだね」
「一応、簡単な味噌汁の作り方を教えましょうか。出汁の元と味噌が必要ですが、宜しいですよね」
「うん。大丈夫。教えて欲しい」
その後厨房へ行き、ほうれん草の味噌汁を作った。具はなんでも良いそうだ。
「出汁の元を入れて沸騰させ、具材を入れて火を通す。そして味噌を溶く。うん、僕でも出来そうだ」
「他にもレシピが必要そうなら、言って下さい」
「とりあえず、師匠が来るのを待つよ。ありがとう」
僕はミラノさんにお礼を言って、自室に戻って来た。
今日も天気は晴天、師匠はどのへんにいるのだろうか。
そんな事を考えつつ、僕はお昼寝の為、目を閉じた。
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