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美味しいスイーツ作り

玄関を出て、村の北東へ走る。

暫くして、厳めしい門構えが見えてきた。

テッサの家だ。

魔導インターホンを押し、門を開けて貰う。


「あら、あなたカッスィー君ね。テッサに何か用?」


家から出てきたのは、ほっそりとした細身の女性だった。髪は金髪でコバルトブルーの瞳をしている。意思の強そうな眼差しが印象に残った。


「はい。僕はカッスィーです。テッサに鑑定師の仕事の依頼があって、呼びに来ました。もう夕暮れ時なので、今夜はうちで夕ご飯を出します」


「そうなのね。お使いご苦労様。私は家内のエルゥよ。テッサの母です。宜しくね」


「宜しくお願いします!」


「じゃあ、呼んでくるからちょっと待っててね」


「はい」


その後5分程待つと、トレードマークのグレーのツナギでテッサがやってきた。

ふんわりと石鹸の良い香りが当たりに漂う。


「なんか、良い匂いするね?」


「剣打ってたら汗でビシャビシャになったんで、風呂入ってた。すっきりしたわ」


「そっか。湯冷めしないように家に向かおう。これから仕事で大丈夫? ちょっと緊急事態なんだ」


「勿論大丈夫だぜ。緊急事態か……説明は俺にもして貰えんの?」


「家に着いたらね」


「おう!」


上着とマフラーをしっかり着込んだテッサと僕は、少々小走りで村長宅へ向かった。


5分程度で村長宅へ到着し、玄関を通り抜け、まず、僕の私室へと通した。


「まず、結論から言うけど、王妃様にホワイトチョコレートを献上することになった」


テッサはぶるりと震えると、マフラーと上着を脱いで、こちらへ向き直った。


「滅茶苦茶大事じゃねぇか。王妃様って女性の頂点に立つお人だからな。出来ることは限られてるとはいえ、出来る限りのホワイトチョコレートレシピも献上しないとな」


「そうなんだよ。それで、テッサには献立を考えて欲しくて呼びに行ったんだ」


「わかった。ミラノさんのところへ行こう。他に何かあるか?」


「2週間後の交易の日に、ホワイトチョコレートも納品するんだけど、利益の金貨が増えてきたから、冒険者を雇うって言ってたよ」


「冒険者かー。そりゃ楽しみだな。でもまずは、献上用レシピをしっかりやんないとダメだな」


僕達は私室を出て厨房の控え室へやってきた。

甘いホワイトチョコレートの香りが香水のように漂ってくる。


「ミラノさん、テッサ連れてきましたよー」


「ああ、テッサ。もう遅いのに悪いな。何かホワイトチョコレートを使えるレシピはないか?」


「幾つか考えてるんですけど、チョコレートボンボンはどうですか。小さなチョコの中にアルコールを入れて封じ込めたお菓子です。それとショコラというか、板チョコを作るのはどうでしょう?フルーツやナッツを閉じ込めたり、色々出来ると思います」


「よし、順番に作っていこう。坊ちゃん、酒を出して貰えますか。今回は出し惜しみなしでテイスティングして作るので、日本酒もウイスキーもブランデーもワインも全部出して下さい。ホワイトチョコレートだけでなく、茶色いチョコでも作ってみます。それと果物を出して下さい。今欲しいのはメロンと枇杷とゆずです」


「わかった。ちょっと待ってて!」


僕は足早に応接室へ行くと、エドさんと歓談中の父さんに訳を話し、追加の金貨を結構貰った。お酒は高いからね。果物も目一杯使って良いそうだ。

しかし……ちょっと使いすぎじゃない?

いくら相手が偉い人だからって、こんなにお金を使ったら稼いだ分が吹き飛んじゃうよね。


僕はちょっと心配だったので、私室にいた母さんに、お家のお金は大丈夫か聞いてみた。

すると、この間宝石を売ったお金で賄えるから生活に支障はない事を説明された。


僕はゾッとしたよ。

ミクシーヌ様も盗む奴はいっぱいいるって言っていた。

僕も宝石はお金になると思っていた。

でも、お金の価値を理解していなかった。

こんなに色んなものがたくさん買えてしまう金額になるものが、僕はガチャを回すだけで手に入る。

元手タダで一攫千金も良いところだ。

そりゃあバレたら大変な事になっちゃう。

こないだ宝石を売った時、明細を書いて貰えたし、金額も知ってはいたけれど、元手が砂時計を倒すだけだから、余り深く理解してなかったようだ。


これからもガチャは私室でこっそり回そう。

僕はそう心に決めたのだった。


金貨のチャージが終わったので、厨房の控え室へ戻り、ミラノさんに頼まれたフルーツをだしていく。メロン、枇杷にゆず。それと茶色いチョコ各種も100ずつと、各種お酒。

お酒は量が結構あったから、時間かかっちゃった。

テッサのオススメは梅酒なんだって。

なので、梅酒も多めに出しておいたよ。


厨房からテッサが出て来たので、聞いてみる。


「レシピはどう? うまくいきそう?」


「うーん、市販品のチョコは甘さが強くて加工に手間取ってる。出来ればカカオが欲しいとこなんだけど、カッスィーのスキル【ネットスーパー】にあるか?」


「えっとね……、テナントの生鮮食品店にあったよ」


「おお。すげぇ! カカオはチョコレートの原料なんだ。ミラノさんなら扱える! 良かったぁー。じゃあここにまず1個出してくれ」


「はい、どうぞ」


出て来たのは楕円状の大きな丸い木の実だった。テッサはそれを持って厨房に入っていく。

焙煎がどうとか、攪拌がどうとか、色々説明していたけれど、僕にはよくわからなかった。


テッサは力いっぱい力説していて、ミラノさんも凄い熱気だ。

忙しそうだからゼリー飲料を差し入れておく。

ミラノさんはニコッと笑って受け取ってくれた。



夕飯の時間になり、レシピの伝授が済んだテッサとともに食堂へ移動する。


食堂に着くと、父さんと母さんが待っていた。

晩餐の開始である。


前菜はお肉のテリーヌとサラダ。


ナイフで切ってフォークでパクリ。

お肉の風味が口いっぱいに広がる。酸味のあるドレッシングがかかったサラダを食べて、口の中をリセット。またお肉を食べる。美味しい。

合間に焼きたてのバケットも食べる。小麦の風味が美味しい。


メインは白身魚のムニエル。

ホワイトソースがかかっており、一口食べると身は柔らかくほろりと解ける。

ソースの味がとても美味しく、香味野菜の風味が鼻を抜けていく。

ティティー村でこんなに美味しいお魚が食べられるなんて、スキル【ネットスーパー】に感謝だよ。


そして、デザートが運ばれてくる。

勿論のこと、ホワイトチョコレートを使ったスイーツだ。

心なしか皆に緊張が走る。


「紅茶のショートケーキ、ホワイトチョコレートクリーム仕立てです」


「うわぁ、綺麗っ!」


紅茶の茶色いスポンジとホワイトチョコレートの白いクリームが層になっており、上部にはホワイトチョコレートで作られた花が飾られていた。

花にフォークを突き立てると、白い花弁がはらはらと散った。


「紅茶の味がホワイトチョコレートクリームと合っててうめぇ」


「美味しいけれど、軽い口当たりね」


「軽い口当たりと重い味付けのもの、両方用意致します」


「花は華やかでいいね」


「花の味付けはまだこれからですが、華やかで良いと思っています。テッサのお陰でチョコレートの原材料が分かったので、色んな味が期待出来ます」


「総じてまだ一品目ということね。ミラノには苦労をかけるけれど、宜しく頼むわ」


「光栄です。お任せ下さい」


「では、解散としよう。ミラノも根を詰めすぎないようにな。テッサもわざわざ来て貰って、助かった。ありがとう」


「雇って貰ってるんだから、当たり前です」


それから、厨房の控え室に戻った僕達は、スイーツ作りに必要な材料を出していた。

テッサにはコーヒー豆が売っている筈だと言われ、生鮮食品店でコーヒー豆を見つけた。

膨大な種類があったので、少しずつ出しておいた。

テッサはミラノさんに焙煎の説明をしており、珈琲の豆を挽くコーヒーミルという機械はテッサの父親、ヤッコムさんに頼むことに決まった。


夜遅くなってしまうので、今日はここまで。

家に帰るテッサを見送り、僕も私室に戻った。


明日のおやつタイムには沢山のスイーツが並びそうだ。

せっかくだから、ルビアとガイも呼んで、みんなでおやつにしよう。

皆で考えたらどんなおやつが飛び出すだろうか。


僕はわくわくしながらゆっくりお風呂に浸かり、『リュースクットの夜明け』の鼻歌を歌っていた。

スイーツ作り、うまくいくといいね!



お読みいただき、ありがとうございました。


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