一種のお祭りみたい
今日の昼食は、鍋焼きうどんだ。
ぐつぐつと煮える鍋が食堂の机に置かれた。
食べるのは、僕とテッサの二人だ。
具は椎茸、長ネギ、油揚げ、ほうれん草、カマボコ、ホタテ、海老天ぷらとイカ天ぷら。そして、中央に生卵が落とし込まれていた。
僕の好物だから、イカ天ぷらを入れてくれたんだって。嬉しい心遣いだよね。
丼に取り分けて貰って、うどんをすする。
半熟の卵が絡みついていて、とっても美味しかった。
「卵が絡みついたうどんが美味しい」
「海老天ぷらも出汁を吸ってうまいぜ。イカ天はカッスィーの好物なんだろ?」
「うん。海老天もプリッとして美味しいけど、僕はイカ天の方が好きだな」
イカ天ぷらは柔らかく弾力があり、出汁を吸った衣がまた美味しかった。
全部食べ終わり、緑茶をすする。
「昨日のお蕎麦も美味しかったけど、今日のうどんも美味しかったね」
「ほんとにうまかったよ。明日は力うどんにしようぜ。餅が乗ったうどんなんだ」
お餅を普及させたい僕らにとって、それは捨て置けないメニューだった。
「じゃあ、明日は力うどんを頼んで良い? ミラノさん」
「承りました。こちら、デザートのシュークリームです。クリームは、カスタードクリームとホワイトチョコレートクリームの2種類が入っています」
見た目も粉砂糖がかけられており、綺麗だ。
手づかみで、ガブッと一口。
「ん~~っ! 美味しい!」
「カスタードクリームとホワイトチョコレートが合ってる。甘くてうめぇ」
「緑茶も美味しいけど、紅茶も合いそうだね」
「珈琲も合いそうだ」
「そうだ、ミラノさん。3時のおやつはガイとルビアも連れてきて良い?」
「勿論、いいぞ。今はいろんな意見を聞きたいからな」
「やったぁ。テッサも参加出来る?」
「おうともさ」
僕達はハイタッチをして喜び合った。
一度解散し、おやつの時間に再び集まる事になった。
ガイとルビアは、テッサが呼んできてくれるそうだ。
僕は日課の教会へ行き、みっちり勉強した。
今日は算数を中心に勉強したよ。
おやつの時間になり、皆と集合して食堂に着席した。
ルビアとガイには偉い女性にホワイトチョコレートのスイーツを献上するのだと話して、一応口止めしてある。
「一品目は、キャラメルとホワイトチョコレートのタルト、ホワイトチョコレートの薔薇添えだ」
「キャラメルがほろ苦くって美味しい!」
「ホワイトチョコレートの薔薇からジャムが出て来た~。外見が真っ白だから、びっくりしちゃった」
「ホワイトチョコはふんわりしててうまい」
「デコレーションのソースが酸味が効いてて、タルトと合っててうまい」
ケーキ自体はとても美味しかったけれど、花は色を付けるべきだと、ルビアは主張していた。
「花の色付けもやってみるよ。次は2品目。ホワイトチョコレートと苺のパフェだ」
底にはヨーグルト、上に苺ジャム、ホワイトチョコレートアイスと削ったホワイトチョコレートが乗っている。更に苺がトッピングされ、赤白2色の層が綺麗なパフェが目の前に置かれた。
「ホワイトチョコレートアイスがとっても美味しい」
「赤白2色で見た目も綺麗。崩すのが勿体ないね」
「ホワイトチョコレートアイスうめぇ」
「この白いアイスに苺シロップかけて食いたい」
ガイの提案で、上から自分でかける後がけシロップも用意される事になった。
味もさることながら、上から苺シロップをかけると見た目も綺麗で楽しめるとあって、採用された。
「3品目は、各種ショコラだ」
お皿の上には、白いチョコと茶色いチョコが2つづつ乗っている。
味は左から、メロン、枇杷、ゆず、珈琲だ。
ルビアは白いコロンとしたチョコをつまみ、口に入れた。
「~~っ! 凄く瑞々しいフルーツが入ってる! これがメロン?」
ルビアは瑞々しいフルーツの味に大興奮だ。
僕もコロンとした茶色いチョコをつまみ、口に入れる。
「こっちはゆずだ。良い香りがする」
「これは枇杷だな。甘くてうめぇ」
テッサは枇杷味のホワイトショコラが気に入ったようだ。
「こっちの茶色いのは珈琲の味がする」
ガイは珈琲味のショコラが気になるらしい。
僕も食べてみたけど、珈琲のペーストは甘苦く、珈琲の香りがとても良くて、すごく美味しかった。
珈琲と合わせて食べても美味しそうだ。
さて、偉い女性に献上するスイーツを考えてみよう。
「ホワイトチョコレートのスイーツを欲してるんでしょう? 色んな果物を入れたショコラでいっぱい作ったら?」
ルビアはフルーツの入ったショコラが相当気に入ったようだ。
「俺はケーキがいいな。チーズケーキみたく、濃厚なホワイトチョコレートケーキって焼けないのかな?」
ガイは濃厚なホワイトチョコレートのケーキを希望している。
「俺はこのショコラみたいに、板チョコにフルーツやナッツを封じ込めたホワイトチョコレートが食べたい」
テッサは板チョコに拘るようだ。
「ホワイトチョコレート味の飴なんてどう?」
僕は飴を提案してみた。
ルビアは蜂蜜味の飴が好きだし、アリだと思うんだよね。
ミラノさんは食後のお茶を淹れながら、全部作ってみると言っていた。
楽しいおやつの時間は終了し、解散することになった。
「みんな、今日はありがとう」
「美味しかったよ。カッスィー、また呼んでね」
「俺も呼んでくれ。うまかった」
「じゃあな、カッスィー。またな」
皆が帰って行ったので、僕は父さんの執務室へ行った。気になることがあったのだ。
ノックをし、入室する。
「どうしたんだい、カッスィー」
「今日、チョコレートと珈琲の原材料がスキル【ネットスーパー】で購入出来る事が確認出来ました。そうなると、ハイド家もそうですが王妃様に献上するホワイトチョコレートも、取引内容に変更が出るのではないでしょうか」
「なる程。一応ミラノから話は聞いている。ハイド男爵家に相談の手紙を書こう。特にホワイトチョコレートだが、原材料のカカオと、カカオからホワイトチョコレートにする製法も含め、献上する事になるだろう。ただ、肝心の作り方については今ミラノが頑張っている最中だ」
「はい。わかりました」
僕は自室に戻り、ほっと息を吐いた。
これでひと段落ついた。そう思えたからだ。
ミラノさんがチョコレートとホワイトチョコレート、そして珈琲の取り扱いをマスターしたのは五日後のことだった。
ハイド男爵家から返事が来ており、チョコレートと珈琲の製法については、王妃様のご実家であられるティアージア公爵家が買い取ると書かれていた。
現状でもチョコレートと珈琲を欲する家が多数あり、男爵家で独占するよりも公爵家に対応を丸投げしたほうが後々良いだろうという判断らしい。
詳しく聞くと、チョコレートや珈琲は転生者の好物なんだって。
この間来た神官もそうだけど、転生者保護の一環として、働きかけてくる力ってかなり大きいらしい。
チョコレートや珈琲を渡すように言ってくる教会関係者の対応に苦労していたそうだ。
あの神官のお姉さんも押しが強そうだったもんね。あの時無理やり仕入れを強請られなくて良かったよ。
それにしても、偉い人への対応はハイド男爵が行ってくれるとはいえ、偉いお家の名前が出ると、背筋がぴっと伸びる感じがする。
王妃様へ納品するのはカカオだけで良いそうだが、初回の献上品として、各種チョコレートやお酒、珈琲やフルーツ等も納品するそうだ。
ミラノさんもスイーツの試作に余念がないし、すごい熱気で今もスイーツを作ってる。
王妃様への献上品って物凄い栄誉なんだね。
もう、一種のお祭りみたいだと思う。
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