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黒の幻想、白き刃  作者: 腐れ紳士
第一章 ~召喚篇~
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その13 ラムラドール出発

 窓から降り注ぐ陽光と、スズメの鳴く声に導かれ、俺の意識は覚醒した。

 体を起こしてく~っ、と伸びを一つ。体をほぐした所でふと違和感を感じた。


 ……右を見る。隣のベッドにエリーが丸くなって寝ているのが見える。ああ、そうだ。昨日は宿代けちって同室で寝たんだっけか。

 ……左を見る。目の前には壁。部屋の隙っこで毛布かぶって寝たのだから言うまでもない。目線をおろしてみる。左側には少しスペースが空いている。小柄な子――例えばエリーくらい――なら何とか寝れそうなスペースだ。

 と、ここまで考えて、思い出した。ついでに違和感の正体にも気づいた。

 クリスが寝てたはずなのに、いないんだ。寝るときに横にあったはずの感触がないから違和感を感じたのだろう。


「あ、おはようございます、ご主人様」


 クリスのことを考えた途端に、部屋の扉を空けてクリスが入ってきた。昨日と同じ薄汚れた元は白かったのだろうTシャツと半ズボンという服装だ。……いや、そもそも寝るときもそんな格好だった気がする。荷物とかないんだろうか? アレから直接ここに来たし。

 つーか、考えてみたら路上生活者なんだから荷物も着替えもないんじゃないかって気がひしひしとしてきましたよ。よし、後で服買わないとな。


「おはよ。眠れたか?」

「ち、ちょっと緊張して。でも、普段よりもずっと眠れたので大丈夫です!」


 宿でベッドに寝てたからだろうか? 路上は危険だしな。


「それじゃあ、ボクは下に行って食事の準備してきます。とはいっても食器並べるだけですけど、それでも手伝った分少しだけお駄賃くれるそうです。銅貨1枚くらい」


 皿並べるだけで銅貨1枚って結構すごくねえ? と思ったのだが、後で聞いた話だと、宿中の掃除とかかなりの雑務をやっての給料らしい。いや、仕事量的に逆に安いよ。

 さて。クリスは下に行ってしまったし、俺が手伝うようなことでもないだろう。朝食まで少し時間が有る。どーするかな、なんて思ってたら、エリーがお目覚め遊ばされた。


「おはよう、エリー」

「………………ぉはょぅ……ございますぅ~……」


 眠そうだった。めっちゃ寝ぼけてる。もう目が眠ってる。

 7割がた眠ったような状態で、それでも普段の習慣となっているのだろう。エリーはもそもそとベッドから起き出し、着ているネグリジェ(パジャマ)に手をかけ。


「ってちょっと待て!?」


 俺の制止は時既に遅く。

 エリーはそのままネグリジェを脱ぎ捨てた。


 その下にあるのは、一糸纏わぬ生まれたままの姿のエリー。


 そう、今まで話す機会がなかったのだが、この世界、下着と言うものがほとんどないらしいのだ。

 ほとんど、と言うあたりで分かるとおり、皆無ではない。いわゆるふんどしと呼ぶべき様なものは存在している。これを使うのはもっぱら兵士や騎士などの軍人階級の男性で、冒険者の男性も愛用者が多いと言う。

 まあ、男はね。戦闘や乗馬なんかで激しい動きするときに“ない”と、邪魔だからね。色々と。

 と、そういう理由で存在するもののため、女性は穿かない。いや、上はさらしのようなものをまいたりはするそうだが、エリーは必要がない。この世界の文明レベルだと、さらしも男同様「揺れて邪魔なものを固定するため」のものだからだ。

 ちなみに、女性の下履きについても、月の物があるときだけはふんどし巻く、とは城に逗留していたときに着替えを用意してくれていたメイドさんから聞いた話である。

 少しは恥らえ、メイドさん。嬉々として話すんじゃない。


 閑話休題(それはともかく)


 完全な不意打ちもあって、素っ裸のエリーを上から足先までじっくりと眺めてしまう。召喚された時は近すぎてきちんと見てはいなかったのだが……って、何やってるんだ、俺! 視線がどうみても色情狂だったぞ今!


『男じゃの、主も』


 ぐはっ!? リアの声が心に刺さる!

 で。そんな俺の騒ぎに、ようやく目が覚めたらしい我らが裸姫。


「………………」

「………………」


 沈黙のまま、俺とエリーの目が合う。エリーは状況を認識できていないのか、無表情だ。


「………………や、やっほー。お、おきた?」


 あまりの気まずさになんとなく声をかけてみた。途端、状況を理解して茹蛸のように真っ赤になるエリー。



 爆音一発。エリーが悲鳴とともに放った魔術に吹っ飛ばされ、新しい町の2日目は始まった。





 ◆ ◇ ◆





 その後、エリーはふくれっ面で暴力の謝罪をし、「でも乙女の裸を見たケイが悪いんです。お嫁に行けなくなったらどう責任を取るんですか」などとのたまった。

 勝手に脱いだのはお前だろう、と思ったけど、それを言ったら余計に揉めそうなので黙ってた。


 で、その後朝食を取り、さっさと街を出るための準備をすることにした。まずは俺の変装用の染め粉とクリスの着替えや旅用の荷物だ。

 取り合えず、クリスの荷物に関してはエリーに頼むことにした。その際に、くれぐれもエリーはフードを取らないでおくように念を押して。

 いや、ぶっちゃけエリーもクリスもものすごく可愛いのだ。こんな二人が並んでたら幼い子供カップルか何かとして目立ちまくること疑いない。


 一方の俺は、自分の染め粉を買い、ついでに冒険者の店で仕事を探すことにした。

 国抜けを前提として、できるだけ期限のないものがいい。報酬に関しては安めでも仕方がないだろう。


「仕事か。その条件だと……国抜けの配達があるな。手紙と小包だが、中身は食料とかじゃないから多少時間がかかってもかまわないそうだ。

 報酬は全員で銀貨20枚。まあ、かなり安いが依頼人が特に金持ちでもない老夫婦でな。外国で暮らす孫への贈り物なんだそうな。街道をまっすぐ行けばいいだけの話だし、目的の町まで2週間。まあ、指して危険な旅でもないから妥当ではあるだろうな。どうする?」


 冒険者の店で聞いた仕事はそんな感じ。ぱっと聞いた限りは特に問題はない。


「どうするかな。ところで目的地を聞いてないんだけど。どこの国のどんな街?」

「おっと。これはうっかりだな。目的地は隣国ベルティア帝国だ。帝国のテリアって町だ。届け先の名前は受けてくれたらってことで」

「よし受けた」





 ◆ ◇ ◆





「ベルティアのテリアですか。国としては最短ではないですね」


 地図を見ながらそういうのはエリーである。現在部屋で地図を見ながらルートのチェック。ラムラドールは王国の東端にある都市で、東、北東、南東の街道を進むとそれぞれ別の国との国境があったりする。

 で、そのうち東に向かうとあるのがベルティア帝国である。国境までは約5日。北東の国境に向かうなら3日でつくので少し遠い。


「そうだな。でも、これみろよ。南東よりに進めばエリフィエルの森がある。情報屋で聞いたとおり、森を経由するならこのルートが使える。……まあ、どう考えても早くて10日はかかりそうだけどさ」

「なるほど……。あ、クリスさんはハーフエルフなんですよね? 森の案内とかって出来ますか?」

「あ、クリスでいいですよエリシエル様。……ボクはそのエリフィエルの森なので、案内は出来ます。けど、あそこにある、エルフの集落には出来れば……」

「……! ごめんなさい。無神経なことを聞いてしまいました」


 どういうことだろう?


『こやつはハーフエルフなのだろう? ならば、当然エルフの集落でも迫害や差別を受けていただろう。何故森を出て浮浪者になったのかは知らぬが、つまりはそういうことじゃ』


 なるほど。いや、ごめんクリス。


「あ、気にしないでください。本当に今更ですから」

「分かりました。でも、エリシエル様、なんて呼ばないでください。エリーでいいですよ。今は立場を隠してることですし」

「……それじゃあエリー様……?」

「様付けも出来ればやめて欲しい気もするんですけど……まあ、いいです。それではよろしくお願いしますね、クリスさん」

「いえ、ですからさん付けは」

「でも、これが私の素なんですよ。さんを取る方がいいにくいんです」


 ……俺のことは? とか思うけど、止めておこう。ややこしいことになりそうな気がひしひしとする。


「まあ、いい加減はなしを戻そう。

 取り合えず、南東のエリフィエルの森を経由してベルティアに向かう。これは確定でいいよな?」

「そうですね。クリスさんにはちょっと嫌な思いをさせてしまいますけど、そこは我慢してください」

「わかりました」

「国境は……森を横切って流れるこの川か。なら、この川を越えれば、俺の指名手配は無効になる……。いや、万一道中で見付かった場合は、森を出て街道に入るまでは付けねらわれると思った方がいいな」

「どうしてですか? 川を渡っちゃえばよその国になるんですよね?」


 クリスが尋ねてくる。


「ああ。でも、よその国だといっても、それが問題になるのは「ばれたら」なんだ。人目につかないところなら、他国の兵士が何かしても問題にはならない。犯罪を犯しても捕まらなければ裁かれないのと同じようなもんだ」

「それじゃあ……ベルティアに入ったら、逆に堂々と人目につく場所を移動するほうが安全なんですね」


 そういうこと。よく出来ました。


「とはいえ、エルメンライヒが正式に国際指名手配を要請をして、受け入れられればアウトなんですよね……」


 と、エリーが問題提起をする。……言うな、その嫌な未来を。


「まあ、取り合えず。出発するか。まだ朝早いし、今のうちに距離を稼ごう」



 こうして、果てしなく不安な明るい未来へ向かって、旅立つことになった。


 A happy new year! ……ごめん、もうそれどころじゃないですね。


 召喚時並に(下手したらそれ以上)問題のあるシーンがありましたが、気にしてはいけません。だって15R指定してるし。

 ケイの脳内お宝画像として登録されました。……なぜか好みの異性とは真逆の魅力的な女性にばかり縁がある男……! でもお宝画像は登録する。男だから。


 おまけですが、クリスは冒険用の装備としてダガーとバックラー、かなり軽いソフトレザーアーマーを購入しました。バックラーっていうのは、あれだ。グリップ方の手荷物一番小さい盾。


ケイ一行のお財布:銅貨換算2843枚

本日の支払い:

 宿代:銅貨50枚

 食事代:銅貨30枚

 クリスの着替え及び装備品など荷物一式:銅貨550枚

 染め粉:銅貨4枚

 保存食45日分:銅貨225枚

残金:銅貨換算1954枚


 ……冒険って、お金かかるね……。


追記:

 更新した後に気づきました。PV4万、ユニーク7千おーばー! ありがとうございます!


さらに追記:

 なかなか更新できないでごめんなさい。下着に関する設定説明のところで設定ミスを見つけたため、修正しました。

 その結果、部分的に設定そのものが変わったことになりますが、筆者の脳内では最初から現在の設定のつもりであったことを明記しておきます。

 ……どういう勘違いをしたらあんなミスをするんだ、俺。

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