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アルド商会を救え!②策略

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精進して執筆します

 グレディアの町は、夏祭り以来の賑わいを見せていた。

 それもそうだろう。1本の長縄で縛られた50人もの盗賊を引き連れて歩く者がいれば誰でも目立つというものだ。

 しかもその盗賊が悪名高い『漆黒の野犬』という盗賊団ならなおさらだ。


 『漆黒の野犬』…クロウヴァル大陸の中で3大勢力の1つに名を連ねる大盗賊団で、数は100人足らずと…少数精鋭の実力者揃いと言われている。

 ウィルベスタ王国でも、精鋭騎士団で討伐にでるも、姿を見つけることすらできなかったとされるほどだ。

 それをわずか3人で討伐してしまったとなればこの騒ぎも頷けるだろう。

 もっとも、この時すでに3大勢力の一角である『大盗賊団・ハゲタカ』も討伐いていたルークたちにとっては、このことがブレアドの町や王国に届けばグレディアの町以上に沸くことだろう。

 しかも…また大商会を潰したとなれば、国王も黙ってはおれないはず。

 もっとも、ルッソ商会はこれから潰すのだが…。


「冒険者ギルド・グレディア支部のギルドマスター、『ムラサメ』だ。アークの御3方とお見受けする」

「パーティ・アークのリーダーであるルークです」

「シーラじゃ」

「アンリエッタと申します」

「すでに聞いたと思いますが改めて報告します。大盗賊団『漆黒の野犬』49名を討伐。51名を捕獲しました」

「ご苦労…。引き渡していただけるかな?」

「…今しばらく待っていただけますか?これから大仕事がありまして…彼らは『切り札』の1つなので」

「…ルッソ商会を潰す…ためにか?」

「はい。キッチリ罪を償ってもらいます。『全員』にね…」


 この時はギルマスである『ムラサメ』は分かっていなかった。

 このルークの『全員』と言う発言の真意を…。

 このわずか数時間後に訪れる『王国の大騒動』のことを…。


「どうするのですか?(あるじ)…」

「ギルマス、馬車を3台と空の木箱や樽の用意はできますか?」

「すぐに手配しよう」

「こやつ等どうするんじゃ?」

「沈黙の魔法と従順の魔法、それと呪いをかける。『嘘を吐いたら死ぬ』呪いをね…」


 イザベラを召喚したことで得た『魔女』の能力。

 その中には拷問に適した魔法が多くあり、俺はそれをありがたく使わせてもらうことにしたのだ。


「さあ、王国の膿…出し切ってやろう」


 ルークは気づいていた。

 今回の『真の黒幕』は別にいる…と。

 そう…王国内にいる…と。

 なぜそのことに気付けたのか?それは、今回のアルド商会への依頼が王国からのモノであると言うにもかかわらず、関係のない商会の番頭を付けることを許可したと言う点だ。

 つまり、それを指示した者がいて、さらに許可した者がいる…と言う時点で内部犯がいることが明白となったのだ。

仮に王国御用達の商会にアルド商会の仕事ぶりの確認をさせるなら、番頭だけでなく数人の人員を用意するのが筋だろう。

 それにだ。元々の王国の依頼そのものがおかしい。信頼のおける商会となれば、王国内の名のある商会を使うはず…。

 たとえ、各町の商会への配慮だとしても、王国内の商会で荷物を運ぶ方が余計な手間もなく、また商会同士の顔見せとなり幅の広がりが増えることになり、それが王国の利益につながるのだ。

 なのに、わざわざアルド商会を呼びつけると言うのは色んな意味で『無駄な行為』でしかない…いや、それどころか、王国内で頑張る商人にとっては、アルド商会のみに恩恵が与えられたように見えるだろう。

 つまり、今回の一件はどう考えても『道理に合わない話』なのだ。


「まずは、国王に会う」

「…無茶するのう、(ぬし)よ」

「時間軸では、俺はもう国王に会っているからな。秘密裏に会えれば話を聞いてもらえるさ」

「では、移動の魔法陣をお使いに?」

「そう言うことだ」


 俺は、謀反を未然に防いだとして国王に謁見した。

 その際、移動の魔法陣を設置させてもらったのだ。

 しかし、それを知っているのは国王と宰相と国王の側近のみだ。

 実は国王であるヴィルベスタ・ウォル・クウェルスフォンがかなりの話せる人で、気に入った俺をいつでも呼び出せるようにと移動の魔法陣を設置させたのだ。

 それにしても…トバールの時と言い、どうやら今回の黒幕の本当の狙いは国王だと言うことだ。

 その『引き金』にアルド商会を使ったと言うことを意味している。


「シーラ、こいつらの尋問は頼む。アンリエッタは俺とヴィルベスタ王国に行くよ」

「任せるのじゃ。全て吐かせてやるのじゃ」

「私は常に(あるじ)と共に…」

「時間が惜しい。すぐに行動に出る。シーラ、ギルマスが例のモノを用意してきたら、盗賊たちに商人の服を着させておいてくれ」

「尋問の後で着させておくのじゃ」

「じゃあ、行ってくるよ」


 俺は移動の魔法陣を起動させる。

 選んだのは『ヴィルベスタ城内』だ。

 俺はすぐに飛んだ。

 着いた先は、隠し通路のある場所なので見つからないと思うが、念には念を入れるべきだろう。

 俺は転移すると『幻惑の魔法』を使う。

 これで、俺たちの姿は見えなくなっている。


「…行くよ、アンリエッタ」

「はい…」


 隠し通路を歩き、漏れる日の明かりが見えた。

 出口だ。俺は、教えてもらった通りに明かりの見える壁をノックする。


「ルークか…入ってよいぞ」


 壁を押し開け入るとそこは王室の中であった。

 国王・クウェルストンが出迎えてくれた。

 何故か白いYシャツに黒のスーツズボンというサラリーマン風の格好だったが…。


「国王様、無礼ながら当然の訪問お許しください」

「良い。緊急を要する事態なのだろう?」

「トバールの件も関係しているのですが…どうやら『ネズミ』がいるようです」

「ふむ、『尻尾』は掴めたのか?」

「はい。ですが…このままでは『尻尾切り』となりましょう」

「では、どうする?」

「まずはこちらの掴んだことがらを話し、その上で策を考えてあります」

「聞かせてもらおう」

「では…」


 俺は今回のアルド商会に起きた事柄の詳細を話す。

 国王は少なからずショックを受けたようだが、冷静さを取り戻し話を続けさせた。

 さすが一国の王だ。俺は、商人・ルッソだけで今回の計画を立てるにはリスクの大きさや都合の良すぎる展開を考察に盛り込んで話した。


「確かに…タイミングとしては都合の良すぎることだな。ルークの考え通り、内部に『ネズミ』がいるのは確かなようだ」

「ですが、その『ネズミ』…自身は表立っては動いていないでしょう。此度のアルド商会の件も手柄を相手にあげる形で自身は関わってないように細工してあるはず…」

「では、どうするつもりだ?」

「そこで策でございます。国王様から『揺さぶり』をかけていただきたいのです」

「揺さぶりとな?」


 俺が考えたのは、国王が密かにアルド商会に『監査』を潜り込ませたと言うモノだ。

 そして、この『監査』からの定期連絡が途絶えたと『騒ぎ』を城内で起こさせると言うモノであった。

 これは国王と宰相のみで決議したことであり、理由としてはトバールの一件を考慮してのあくまでも『保険』として潜らせたと言うことにする。

 しかし、監査からの連絡が途絶えたと言うことはアルド商会が存在に築き先手を取ったのだろう…と。

 だが、こちらが荷馬車の荷物の1つに施した『探知魔法(サーチ)』はいまだ反応を示しているので、それを追って取り押さえると。なので、騎士団を即刻向かわせるという命令を出させるのだ。

 そして同じくして、俺たちが盗賊たちの計画通りに荷物(空の)を王国に運び入れる。

 ルッソ商会に持ち込んだところで、騎士団に見つけられて…と言う算段だ。

 もちろん芝居ではあるが、これだけのことを早急に行うとなれば『黒幕』も黙って過ごすことは出来ないだろう。しかも、ルッソ商会が捕まればいつ自分のところにまで…と疑心暗鬼になるはず。

 そこで、追い打ちで国王が内部犯説を口にすれば…というが今回の計画の全てだ。


「確実に『釣れる』と思うか?」

「国王様…こちらは絶対に捕まえると言う意思表示をしなければなりません。その自信こそが相手に恐怖をあたえ、尻尾(ボロ)を出しやすくなるのです」

「確固たる信念をもって捕まえることを宣言するわけだな。だが、それだけで追い込めるか?」

「そこは奥の手を用意してあります」

「奥の手…とな?」

「まず1つ目は、全ての爵位持ちの家を家宅捜索し、その場にいる者は身の潔白が証明されるまでその場を離れることを禁じます」

「なるほど、動きを封じるのだな」

「この手でも微動だにしない場合は、奥の手の2としてルッソ商会の捕縛の報告と尋問の要請をする。これで黒幕を追い込んでいきます」

「しかし、そう上手くいくか?」

「時間を置かずに報告をすることで相手に考えるだけの時間を与えないのがこの策の本筋です。追い込みの数が増えるほどに相手は考えが追い付かなくなりボロを出しやすくなります。そして…これが最後の奥の手です。今回の件に俺たちが関わっていたことを報告した上で、俺たちを謁見の間にお呼びください」

「どうするのだ?」

「…俺の能力(スキル)の1つ『鑑定』を使うことを申請します。そして、謁見の間で使い、黒幕を暴くと言うのです」

「まさに、最後の奥の手だな」

「もともと『鑑定』は人に向けて使うことは禁じられております。しかし、国王権限と言うことになれば…」「なるほど、使われることを拒む者がいればその時点で決定的だな。『鑑定』を使ってもバレるし、まさに袋のネズミか…」

「俺の『鑑定』には『拒否(レジスト)』は効きませんからね。ただし、この最後の奥の手は出来れば使わない方向で黒幕を暴きたいですね」

「理由を聞いても良いか?」

「追い詰められた者は、稀に噛みついてきます。できればその前に見つけ捕まえることが理想的なのです」

「つまり、完璧に相手を追い詰めると思わぬ反撃に出る…ということか?」

「そうです。一見、完璧な証拠を出した方が手っ取り早く感じますが、逃げ場が完全に押さえられると人は感情的な…衝動的行動を取るものですからね」

「…分かった。できれば最後の奥の手は使わない方向で行こう」

「では、俺たちはいったん戻ります。王国に着いたら、アンリエッタを繋ぎによこしますので、側近の方を置いておいてください」

「その様に手配しよう。では、始めるかな」

「はい。王国の膿を取り除きましょう」

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