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五丈原にて諸葛亮を救い、その義子となる  作者: ほしかわ さとる
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密報を截獲(下)

密報を截獲(下)

かくの如き盟約、千古未だ有らず!」

私は彼の眸中に精光閃爍し、心動きて潮の如きを見たり。

孫権は一生雄才、江東に割拠し、晚年多疑昏聵と雖も、依然として天下を争覇せんの心あり。司馬懿大敗し、諸葛亮康復し、関中震动し、盟約優厚――其の一条一条、皆彼の心坎を刺す。

されど彼は依然として躊躇す。「蜀軍の北伐、数度功なし。朕若し兵を出さば、曹魏全力にて反撲し、江東損を受け、そなたら関中にて利を得ん。朕何ぞ亏本の買売を為さんや?」

鄧芝は微かに笑い、低き声にて我が嘱せし数句の秘語を吐けり。

「大王、なお一言あり、在下私下に奉告せん。

今曹魏西線既に崩れ、此時兵を出さば、事半功倍、坐して漁利を収め、大力を費やさずして、便ち千里の地を拡げ得ん。

更に――

大王の宫中、主和親魏の輩、既に早くも蠢動せんとす。大王若し再び猶豫観望せば、蜀の亡ぶを待たずして、呉宮の内、変乱生ぜん恐れあり」

この言一出づるや、孫権の顔色骤然として一変。

宮斗、継承人の争い、江東士族と淮泗旧部の矛盾――これ彼の晚年最も忌諱し、最も不安とする心の事。鄧芝の一言、軟肋を刺す。

孫権は猛然として起身し、殿上を来回踱步し、眼神数度変幻し、終に駐まり、厲声にて言った。

「よし! 諸葛亮既に局を破りし上は、朕便ち彼と再び聯手せん!

朕が旨を伝えよ:

陸遜の子陸抗に命じ、荊州の兵馬を整訓せしめ、曹魏豫州の守軍を牽制せしむ。

朕親ら十万の大軍を率い、淮南に出で、合肥を攻めん!

曹魏をして知らしめん、孫劉の聯盟、依然として天下無敵なりと!」

鄧芝は心中大喜、身を屈めて拜倒した。「大王英明! 蜀呉同心、曹魏必ず破れん!」

一場の天下の走势を決定する戦略同盟、これにて敲定。

江東の伏筆、全線にて引爆。

曹魏は将に西に諸葛亮、東に孫権の両線挟撃の中に陥り、再び寧日なし。

同時に、万里の外、成都、皇宮深処。

私は黄皓が此刻如何なる光景にあるかを、余りに良く知っていた――

彼は偏殿の密室の中に蜷まり、ちょうど五丈原の駅路より伝回せし「捷報」を捏み、先ずは一怔、続いて嘴角に竟に一抹の狂喜の笑みを咧開せり。

捷報の上に明々白々と書かれていた:

「蜀軍、司馬懿を大破し、丞相康復し、楊儀瀆職舞弊、軍心後勤を擾乱し、既に軍法に依り処置せり」

瀆職舞弊?

通魏の半字をも提せず!

黄皓は先ず一顆の心を嗓子眼まで懸け、読み終えてただ「瀆職舞弊」の四字のみと看清し、登時に狂喜難抑、撫掌して低笑した。「諸葛亮よ諸葛亮、そなたにも疏忽の時あり! 楊儀通魏叛国の如き死罪、そなた竟にただ瀆職舞弊にて草草に了結せり――そなた根本に知らず、楊儀の上に更に我黄皓あり、更に我と司馬公と早くも銅符にて暗通せしを知らず!」

彼は思えば思うほど得意となり、渾身の血が皆熱くなった。

「よし、よきかな」と黄皓の眼中精光爆射し、身を翻して密室の暗格より「司馬」の二字を刻みし銅符を取り出せり――この銅符は、司馬懿と彼の約定の暗記なり。「諸葛亮ただ楊儀を除けば便ち万事大吉と思いしが、真の深宮の大魚が、我黄皓なるを知らず。彼は一時を瞒し得れど、我と司馬公の暗線を瞒し得ず」

黄皓、この深宮最毒の棋子、終に爪牙を露わす。

黄皓、正に司馬懿が蜀漢深宮に安んじし最核心、最致命、最も深く蔵せし棋子なり。彼は宦官の身を借り、暗に宮中の消息を通じ、符信を伝え、楊儀と勾連し、少しずつ蜀漢を蛀み空にせり。

楊儀は、ただ彼らが台前に推し出せし替死鬼に過ぎず。

黄皓は震える手――されど恐れにあらず、按捺し得ざる興奮なり――陰毒なる密信を書き、心腹を遣わして直ちに司馬懿へ送らしめたり:

「亮既に康復し、蜀軍大勝し、楊儀事敗し、儀死せり。皓、成都に在り、依然として後主を控し、糧草を断ち、軍心を乱し得。司馬公、再び人を遣わして密会し、共に蜀漢を図らん。事成りの日、皓、富貴終身を求む。蜀中内侍の首たり」

彼は密信を封じ、心腹の小宦官に交え、声は興奮の為に尖った。「夜を徹して城を出で、西線の小道を走り、直ちに魏営に送り司馬公に交えよ! 司馬公、我が銅符を見れば、必ず我を成都内応既に成れりと思わん――これより後、蜀漢半壁の江山、我黄皓の一份あり!」

「は!」

小宦官は密信を揣り、成都深夜の街巷の中に消えたり。

一道の成都深宮より曹魏関中大営に直通する終極の暗影、徹底的に水面に浮上せり。

されど黄皓は何処にか知らん――彼のこの得意洋洋たる密信、落筆の刻より、既に我が布きし眼線の網中に落ちたり。所謂「成都内応既に成れり」は、ただ一尾の自ら鉤を咬みし魚に過ぎず。

私は余りに良く知っていた。三日後、渭水北岸の魏軍大営の中、司馬懿が如何なる光景にあるかを――

彼は主位に端坐し、先ずは面沈み水の如し――親兵が那の成都深宮よりの密信を呈上するまで。

彼は展開して一看、先ず微怔、続いて狂喜の色眉宇に湧き、猛然として案几を一拍し、失声して大笑せり。「よし! よきかな黄皓! 成都内応、竟に已に成れり!」

信中字字陰毒:後主を控し、糧草を断ち、軍心を乱し、彼と内外応ず。司馬懿はただ、楊儀死すと雖も、なお黄皓のこの棋子成都に落定せりと思えり――深宮の閹竖、竟に通敵の鑰を掌れり。蜀漢後方、終に仍ち彼の掌中に在り。

「諸葛亮、そなた楊儀一人を除き得れど、成都一座を除き得ず」と彼は志得意満、甚至既に黄皓の手を借りて諸葛亮を召還し、戦わずして人を屈するの妙局を盤算せり。

――されど、喜色未だ褪せざるに、親兵また二封の急報を递進せり。

第一封:蜀軍関中に伝遍せし『五丈原大捷檄文』、諸葛亮署名、筆力千鈞、分明に活人、勝者なり。

第二封:東呉孫権淮南に兵を出し、合肥を猛攻せし急報、呉蜀聯盟、既に合囲の勢いを成せり。

司馬懿の臉上の狂喜、盆の氷水を頭より灌がれたる如く、消え去れり。

檄文、聯盟、黄皓――彼は先ほどなお大喜「成都内応既に成れり」とせしに、転眼便ち傻眼せり:諸葛亮死なず、孫権已に動き、而那の彼を狂喜せしめし黄皓の密信、分明に我が故意に放ちし引蛇の餌なり!三記の驚雷、同時に炸響し、建業出兵、成都通敵、魏営震駭、三方の棋局、一并に引爆せり。帳中の司馬懿左右の親随、主帥の面色の狂喜より驟転して鉄青となるを見、竟に一人も敢えて声を出さず、斉しく冷気を吸い込めり。

「諸葛亮……死なず……康復せり……」

司馬懿は死死と檄文を攥み、指節白く、渾身顫え、又是憤怒、又是恐懼、又是信じ難し。

彼は百日を耗し、百日を忍び、百日を待ち、諸葛亮必ず死し、蜀軍必ず潰え、北伐必ず敗れんと思えり。結果一夜の間にして、天翻地覆。

「孫権の小児! 竟に敢えて火に乗じて劫を打たんとは!」

彼は猛然として案几を一拍し、案上の茶杯震え碎け、茶水四散。

東線告急、西線惨敗、蜀軍大勝、呉蜀聯盟再起――曹魏は両線作戦に陥り、天下の大勢、徹底的に逆転。

而して最後の那封黄皓の密信は、更に彼の心頭を一沈せしめたり。

楊儀死し、棋子失せ、ただ一の成都宦官のみ残り、何の大事を成し得ん?

諸葛亮の身辺、不知何時より一人の全盤の布局を識破し、軍心を稳め、呉を聯ね魏を伐ち、歩歩緊逼する神秘の軍師あり。

「この者……一体誰なりや……」

司馬懿は眼を閉じ、脑海中に繰り返し一つの名を回蕩せしむ――彼が未だ曾て聞かざりし、却って処々に彼を算死せし蜀軍の新軍師、我なり。

彼は未だ曾て我が名を聞かざれど、処々に我に算死せられたり。

詐病誘敵、清奸截信、聯呉伐魏、稳軍造勢……

一環一環と相扣り、一歩一歩と殺し、彼司馬懿半生の権謀を、打得支離破碎とせり。

司馬昭は傍らに立ち、低き声に言った。「父上、今の局勢……我が軍如何にすべきや。東線は孫権を防ぎ、西線は諸葛亮を守り、両面受敵、糧草済まず、長久下去れば、必ず敗れん」

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