北国の風
長いトンネルを越えた先、灰白色に輝く大地が顔を覗かせる。
二本の鉄路は、寄り添いながらも交わらず、どこか遠くを一路に目指し伸びていく。
連絡地点を示す看板は、この季節になると雪に埋もれてしまう。
だからその直ぐ側には、赤い梅の木が植えてある。
春ではなく、冬に咲く、そんな不思議な梅の木が。
連絡地点に停車し、駆動装置を切る。
あたりは風の音に、時々キツネの鳴き声がする程度に、静かである。
耳を澄ませば、蟻たちの世間話すら聞こえてくる。
通信要請を送ってからの数分は、こういった雄大な自然、そして大地、いうなれば地脈の力を全身で受け止められる。
その穏やかな時間は、時に数十分にもなるのに、いつも、まるで一分と経たずに終わってしまうように思える。
指令との通信が開通したのは、要請を送ってからおよそ53分後のことだった。おそらく、何かしらトラブルがあったんだろう。
静寂のなか、通信機から声がする。
「第71区指令が電力トラブルにより通信不可なので、第54区が代行します。21マル8列車、異常ありませんか?」
「はい。燃料残率は65%、現在71区は電圧が安定しているので、架線給電による走行を行っています。」
「了解。第3マル6マル列車が現在65区-E線からそちらに向かっているので、とりあえず高穂山信号場方面に向かってください。
高穂山から先は現在通信が途絶しているので、到着後は信号場で1日待機し、定期連絡を待つように。」
「了解しました。ポイント切り替えますので、7分後に遠隔切替をお願いします。」
通信を切ったあと、懐中時計を確認し、少し先にある線路の分岐点まで、急いで走り出した。
高穂山の夕焼けを見たいので、急ぐことにした。
走る時に耳を過ぎる風切り音は、列車に乗っている時とは別の清々しさを感じる。
ポイントを切り替えた後、その清らかな風に少し癒されながら、列車へと走って戻った。




