第44話:良かったなフォンゾ!…ディヒトも。
すみません遅くなりました。
「宮廷魔導士のレイフィールド?!」
とりあえずレイを連れて帰ったらオスカーが叫んで、フォンゾが固まった。と、思ったらすごい早さで自分の部屋からメモだの何だの色々持ってきたフォンゾ。
「レイフィールド卿、お会いできて光栄です。フォンゾと言います。お時間よろしければお話をぜひ。」
「勿論よ、若き同志。ライゴウ卿は秘密にしておきたかったみたいだけど、偉業を成した方々にぜひお話伺いたくて、伝手を使って来てしまったわ。許して頂戴ね。」
…フォンゾが。あのフォンゾが感動に打ち震えている。ザック家での扱いと雲泥の差だ。フォンゾ、お前俺の時は電撃で威嚇してきたくせにあの面倒くさそうな溜め息もつかずに初対面の人間に懐くなよ。爆速で尻尾振るチワワのような奴じゃないはずだろフォンゾよ。
「レイって本当にすごかったんだ。」
「『様』をつけろ『様』をクソガキ!」
「あぶなっ!」
レイの後ろにいた俺に向かって空気弾が器用に回り込んでくるのを慌ててガードする。
「あら、あなたたち二人とも無詠唱を上手に使うわね。今のは魔力を飛ばしただけ?それとも風魔法の何かを使ったのかしら。指向性を持たせたうえで魔力の流れを悟らせないなんてすばらしいわ。」
「どうぞおかけください。今のは空気弾です。指向性を持たせるために構築するイメージは…。」
魔法談議が始まってしまった。ルークがやれやれといった表情でその光景を見ている。これは長くなりそうだ。そんなに目を輝かせるほど憧れの人と話せるなんて、フォンゾも嬉しかろう。とりあえずしばらくほっといてやるか。
食事の支度をするためにキッチンに向かうと、オスカーがついてきた。
「アラタ、何がどうしてあんな大物がお一人でいらっしゃることになったんです?」
「んー、なんかザックの昔の冒険者仲間なんだって。」
「これは後で他のメンバーについても聞いてみる必要がありそうですね…。治癒魔法の魔法陣のことだとは思いますが。まあ、あんなに楽しそうなフォンゾが見られるとは思いませんでした。」
オスカーはオスカーで動揺しているらしい。俺にまで敬語で話しかけている。ザックと一緒に床でのた打ち回っていたなんて言っても信じてもらえなさそうだ。そんなにすごい人物なら、俺もちゃんと出会いたかったぜ。
「ちょっとヤバい人かと思ったけど、すごい人なのか…。」
「ヤバ…。魔法使いには変な人多いですからね。何を見たかは知りませんが、最低限の敬意は払うようにしてください。仮にも貴族の方です。本人が別に良いとおっしゃっていても他の人のいる場所ではちゃんとしましょうね。」
「わかった。」
魔法使いには変な人が多いというのはこの世界の常識らしい。覚えとこう。
「っていうか俺は来る途中でちょっと話したけど、あの魔法陣の話なんだからオスカーも関係あるからな。長くなりそうだったからご飯食べてからってことになったんだよね。」
「…心の準備をしてきます。」
オスカーは心なしかよろめきながら部屋へ戻って行った。そうか、本人が良くても周りがダメとかはあるよな。一応社会人のくせに俺としたことが。なんだか今の外見に引っ張られているとでもいうのだろうか。この世界に来た頃よりも子どもっぽくなっている気がする。
そしてリビングが騒がしい。何を言っているかは良く聞こえないが、ギャーギャーいう声とドタバタする音、勢いよくドアの開く音、「逃げた!」「待てディヒト!」とレイとフォンゾの声。しばらくすると外とつながる方のドアが音もなく開いて、怯えた様子のディヒトがそっと入ってきた。
「オレ、アイツ、イヤ…。」
「ああ、そう…。」
なんて言葉をかけたら良いかわからないが、どんな目に遭ったらこいつがこうなるのか。とりあえず誰もキッチンに侵入できないよう、ドアを厳重にロックする。ディヒトのつまみ食いを阻止するために鍛えた魔法でディヒトを守ることになるとは。
そういえば、こいつ未だかつてない静かさで入ってきたな。小さなピザ生地のように薄く焼いたパンに、レタス少な目肉多めで半月のサンドイッチを作り、キッチンの隅のディヒトに差し出すと無言でもそもそ食べだした。もしかして。
「なあディヒト、ちょっとお前のスキル見ていい?」
死んだ目で咀嚼しながら頷くディヒトを鑑定する。最近自分のステータスだけじゃなくて他人のもちょっとだけ見れるようになったんだよな。相手の許可を取るという縛りがあるけど。
…良かったなディヒト。前から欲しがってたスキルが手に入ってるぞ。
ディヒトのスキルに【隠密】が追加されていた。
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ではまた来週土曜日に。




