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フェイクヒーロー〜Fake Hero〜  作者: ベーコン・ライス
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エクソシストヒイラギ


「店長!こちらセージさんとナズナさんです。実は店長に用があるみたいでして」


ナツメがヒイラギという店長に、俺とナズナのことを伝えてくれている。

一方パキラはと言うと。


「おい・・降りろクソ女」

「3流サモナーは動かんといてやー」


パキラは四つん這いの体勢になっており、ヒイラギの椅子にされていた。

御愁傷様です!

ナツメから説明を受けたヒイラギは、両手に持っていた荷物を店の中で開封しながら俺とナズナに訪ねてくる。


「なるほどなぁー。んで、うちになんの用なん?」


「実はあんたが4帝の一人だとナツメに聞いてな。現在俺とここにいるナズナは、国王の娘マリーと一緒に冒険をしているんだけど、ここ最近おかしなことが続いていてな。クエストに行ってもモンスターは全然出ねーし、なんかめっちゃ強そうな魔女に遭遇するし、王都からツバキとかいう魔導師アカデミーの先生に護衛軍のバジルとかいうマリーの追っかけが俺たちの所に派遣されてくるし、あんたなら何か知ってると思って」

「そう、私たちマリーちゃんと同じパーティーなんだよ」

「おお?・・国王の娘?国王の娘ってあれやん。魔法帝ローズの娘やん。」


ヒイラギは目を見開きながら語り出した。

パキラも何か言いたそうな顔をしていたが、ヒイラギに足で口を塞がれていた。


「そう言うことか・・。自分らも難儀やなぁ、あんな奴の娘とパーティー組まされるやなんて。」

「なんだ?どう言うことだ?あんな奴ってローズのことか?」

「・・ブハッ!おい、いい加減降りろよ!クソ女!おまけにケルベロスまで祓いやがって!今後、ヘソ曲げて出てきてくれなくなったらどーすんだ?!」

「パキラさんしー、だよ。今大事なお話中なんだから」


あやすナズナにキレるパキラ。

その光景はまるで親子のようだった。

真剣なシーンなのだが、絵面で台無しだ。


「うーん、あんまり厄介ごとに巻き込まれたくないんやけどなぁ。狙われてるのは国王一家だけやし」

「なんだと!?」

「マリーちゃんが!?」

「わー!わー!・・しまった!喋ってもーた!どうしてくれんねんパキラァ!?」

「オメーが勝手に喋ってんだろが!!クソ女!!」


ヒイラギとパキラは組み合い始め、ナツメはただただうろたえていた。

その後俺とナズナがヒイラギを問い詰めると、観念したかのようにヒイラギは教えてくれた。


「簡単に言ったら、魔王軍は魔法帝ローズとその娘が怖いんやないかな?魔法帝ローズにはマナ浄化魔法があるし、娘にもそういう魔法があるようなことを王都の会議で言ってたし。あとツバキとか言う奴は、マリーの魔法指導で連れて行け言うてたな。バジルは・・なんか同行させるって国王が言ってたよーな」

「なんだその魔法!?マリーのブラックライセンスと関係あるのか?」

「そんなん知らんわ!うちは魔法は専門外や!やから魔法のことも強そうな魔女のことも知らん!・・やけど、ブラックライセンスは固有スキルを持つものだけに許されたライセンスやから、浄化魔法は関係ないと違うかなー?もういいかー?」


なるほど。

ローズが只者じゃないのはなんとなくわかるが、まさかマリーまでそんな能力があるとはな。

普段は全く使えない奴なのだが、この世界でマリーは重要な人物だと言うわけだ。

俺とは違って・・。

そして国王一家は魔王軍の目の敵にされているらしい。


「最後に一つ。モンスターが出なくなっている原因は?」

「それは、そこの男がよく知ってるやろ。」


ヒイラギの視線の先にいたのは仁王立ちで腕を組んでいるパキラだった。

いや、お前さっきまでそこのエクソシスト女の椅子にされてたからね?

そんな堂々とされてもみてるこっちが恥ずかしいわ!


「しかし、なんでパキラがそんなこと知ってんだ?」

「パキラさんは元魔王軍四天王の一人なんですよ。サモナー使いということで重宝されていたみたいです。パキラさん曰く」

「そう言うことだ。今は魔王軍でもなんでもねぇがな」


えっ?えっ?えっ?

4帝に元魔王軍の四天王に勇者の娘に異世界から来たコンビニ店員って、面子がむちゃくちゃ過ぎないか!?

どんな顔ぶれだよ!?

まぁ、そこに間違って召喚されちゃった俺が加わるわけなんだけども。


「まぁ、うちがボコったから魔王軍四天王って言ってもリストラされてるんやけどなー。ぷぷぷ!」

「やかましいぞクソ女!!こちとら魔王に上級悪魔取り上げられてんだよ!!」

「魔王軍でも内輪揉めってあるんだなぁ」

「なんか話が難しくてよくわかんないねー」

「そっ、そうですねーナズナさん」


ナツメはともかくナズナ、お前はわかんないとダメだぞ。

にしても、元魔王軍の四天王が魔王討伐を考えるって、何か事情がありそうだな。


「まぁ、でもうちはこのショップが繁盛して面白おかしく生活できればええんやけどなー」

「そんなんでいいのか?4帝って言われてるぐらいなんだから、市民の生活を考えたり、魔王軍を倒すとか、そう言う志はないのか?パキラをボコったぐらいなんだし」

「ボコられてねーよ!」

「実はパキラさんがボコられた件なんですが、店長が私とこのショップを立ち上げる時に空いていたテナントがここと隣の店だけでして、その時にパキラさんと私たちが同時にここの店の申し込みをしていたんですよ。そのテナント所有権を掛けて、お二人が戦って店長がパキラさんをボコったんです」


・・ボコったって言い過ぎじゃない?

ナツメさんは見た目によらずなかなかハードな言い回しをされるようだ。

ほら、パキラが目を背けて今にも泣き出しそうだよ〜。

ドSだよ〜、鬼畜だよ〜。

俺もナツメに気をつけよう・・。


「にしても、たまたまボコった相手が魔王軍の四天王とはな」

「そんなこともあるんだねー」


いや、お前もたまたまラービットの洞窟であった勇者の娘だからな?

魔王軍元四天王もすごいが、勇者の娘とたまたまクエストで出会う確率ってどんな確率だよ?


「そう言うことやから魔王軍のこととか、モンスターのことはそいつに聞きや!そんじゃー仕入れの続き行ってくるわー!」


話終えると同時に作業が終了したようで、ヒイラギはその場から去ってしまった。

なーんかパキラに説明を押し付けただけのような気もするが。


「嵐のような人だったな、話し方は日本でいう関西弁か?」

「悪い人じゃなさそうだね」

「チッ、あいつの性格はクソだが強さは本物だぜ」

「店長・・給料あげて欲しいです。休みも欲しいです」


各種各様の感想だった。

ナツメはショップの業務に戻り、俺とナズナはパキラの店に行くことになった。

ま、隣なんだけども。


「・・うわ。ところどころ蜘蛛の巣が張ってるじゃないか」

「なんか、見たことない本とかいっぱいあるねぇ」

「勝手に物色してんじゃねぇよ白髪女!」


パキラの店の中は、兎小屋の中に無理やりテーブルなどの家具を習えたような、それはそれはボロっちくて汚い家だった。

一応トイレ、風呂完備で生活はできるようだった。


「おや?珍しいですね。お客さんですか?」

「おう、魔王討伐の掲示板を見て来てくれた客人だ。」


店の中に従業員らしき青年がいたので、俺とナズナはぺこりと頭を下げた。

青年はベレー帽をかぶっており、品のある顔をしていた。


「さて、じゃあ魔王をぶっ殺す作戦だが」

「待て待て待て」


テーブルの席に着くなり魔王をぶっ殺す作戦と言われても困る。

俺には色々と聞きたいことがあるのだ。

まず、モンスターが出現しない理由、魔王を討伐する理由、そして魔王を討伐する方法だ。

俺はそれらをパキラに尋ねてみた。


「ああ?モンスターが全然いないのは、おおかたあのせこい魔王が冒険者をレベルアップさせないように、四天王の誰かを使ってモンスターを消させてんだろーよ。魔王を討伐する理由は、魔王に裏切られたからだ、魔王の弱点は知ってるからそれも問題ない」

「そういえば、ラービットの洞窟で会った魔女がモンスターを倒すだけ倒してどっかに行っちまったけど、今にして思えば納得がいくな。にしても魔王の裏切りとはな」

「でも、さすがにレベル1のままで魔王討伐は厳しいよね」

「まじかよ。お前ら使えねーじゃねぇか」


そうなのだ。

なんのかんの言っても、俺のパーティーはレベル1トリオ。

魔王はおろか、四天王にすらあっさりやられてしまうだろう。

一応付け焼き刃でスキルポイントは振っておいたが。


「ちなみにパキラのレベルはどんなもん?」

「俺は55レベルだぜ。ちなみにそこのラプラスは32レベルだ」


ごっ・・ごじゅうごだとっ!?

しかもそこの青年にすら余裕で負けてるじゃねぇかよ!

55レベルのパキラをボコれるヒイラギって相当やばいな。

さすが4帝と言ったところか。

でも、上級悪魔は魔王に取り上げられてて、使えないみたいだし、相性もあるのかもしれんが。


「お前もとんでもないが、そこのラプラスとかいう青年もやばいな」

「こいつは魔王から逃した唯一の上級悪魔だからな。ただし、戦闘より知力に長けているから知力担当だ」

「確かにパキラさんよりは賢そうだね」

「そうですね。まぁ、パキラさんはこの世に数名しかいないサモナー使いですから、僕なんかより全然すごい人ですけどね」


ラプラスの言葉でドヤ顔になるパキラだった。

ナズナさんはナチュラルに口が悪いな。

ラプラスという青年は上級悪魔で知略に長けているそうだから今後戦闘での活躍は期待できなさそうだな、しかし、人型の悪魔もいるんだなぁ。


「しかしどうするよ?いくら魔王の弱点がわかってても、魔王はおろか四天王すら倒せないパーティーだぞ、俺たちは」

「四天王どころかラービットすら倒せてないけどね」


俺とナズナはは自分で言ってて悲しくなった。

パキラにはぁとため息をつかれたような気がする。


「お前らに俺様の経験値をくれてやる。どうせ一人じゃ勝てねぇし、それに魔王の弱点は魔法帝ローズとその娘だから、どのみちお前らとは会っていただろう」

「今更だけど、マリーちゃんって本当に国王の娘なんだね」

「今更すぎるだろ!」


ナズナの言葉で真剣な空気がぶち壊しだったが、俺はもう慣れているので気にならなかった。

パキラは、おいおいだいじょうぶか?とでも言いたそうな表情を俺に向けていた。

ここで一つ疑問が出てきた、パキラはサモナーだが占い師でもあるわけだ。

見た所、占い師らしい道具もなく、それらしい雰囲気もなかったのだ。

どうやって生計を立ててるんだろう?冒険とは全く関係のない素朴な疑問だった。

俺はそのことをパキラに尋ねてみた。


「占いか?占いのことは全部ラプラスに投げているぜ。なんせそいつ知力担当だからなぁ」

「なんか、詐欺じゃない?看板を占い師ヒイラギじゃなくて、占い師ラプラスにしろよ」

「僕は別に構いませんよ。よければお二人とも占って差し上げましょうか?」

「わー!やったー!どうやって占うの?ラプラス君」


ラプラスはタロットカードを78枚取り出しテーブルの上に裏向きで並べ始めた。

悪魔なのに古典的な占いなんだと思いつつ、俺とナズナは準備を待っていた。


「好きなカードを2枚引いてください」


ラプラスがそう述べるので俺は2枚取って見せた。


「・・どうだ?」


俺のカードを見たラプラスは少し驚き、そして静かに話し始めた。


「これは、最悪ですね。逆さのソードの8に月の正位置ですか。」

「なんだ?どういうことだ?」


ラプラスは説明してくれた。

逆さのソード8というのは、忍耐が求められる苦しい状況で、目の前に障害がそびえたっていて、それを超えて進むことができるんだと。

状況は次第に悪化していき、想定外のハプニングやトラブルに巻き込まれるという。

そして、月の正位置というのが意味するものは、  結果や先行きが不透明で、不安や焦りが支配しがちなんだとか。


「最悪じゃないか。なんとかできないのかよ?ラプラス?」

「ラプラスの占いはほぼ100%だぜ。なんせ未来予知悪魔だからな」

「まぁ、そういう悪魔ですので。しかし、未来を予知することで、対策は可能です」

「じゃあ私、カード選ぶね」


ナズナは数分悩んだ末に、2枚のカードを選択した。


「運命の輪の正位置に逆さのカップの6ですね、さっきとは正反対の結果のようです」


運命の輪の正位置はチャンスや大きな変化が起きるらしく、過去を振り切ることで未来に新しい可能性を見いだすことができるらしい。

生まれ変わるという意味らしい。


「お前の方が主人公補正かかってない?俺と取り替えて欲しいんだが」

「そ、そうだねー。」


この時、ナズナの様子がおかしくいつもより口数が少なかった。

過去に何かあったのだろうか、とはいえそんな野暮なことは聞けなかった。


「そうだ、マリーも占ってみて欲しいんだが大丈夫か?」

「マリー・・ですか?構いませんが、その方は今どちらにいますか?」

「マリーちゃんは今ギルティタウンの冒険センターにいるんだよね。だから今日は無理だよ」

「よし、そいつを呼んでから対策を考えるぞオメーら。伝書バードを使ってマリーとか言うやつにここの住所を教えるぜ」


俺とナズナはパキラのボロ家に泊まることにし、マリーに文書を送りつけた。

この世界の手紙の郵送は伝書バードと言うものを使うらしい。

簡単に言うと鳥が手紙をくわて持って行ってくれるんだと。

明日の朝には届くらしいので、俺たちはマリーがくるのをパキラ邸で待つことにした。

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