43話 ルーベンス家の晩餐
審議会→査問会に修正。
老紳士はアーノルド・ルーベンスという名の侯爵だった。息子に家督を譲り悠々自適に暮らしていたそうだが、大病を患った息子が急逝したため復帰したのだと説明してくれた。
今日は久しぶりに取れた休暇で孫娘と外出し、その帰り道にローランが出くわしたあの状況になったそうだ。
アーノルドは屋敷に入るとメイドにローランを部屋へ案内するよう指示して、執事にはローランから手渡されたポーションを渡し、信頼のおける宮廷薬師に至急鑑定させるよう依頼した。
その日の晩餐が始まる頃にはアーノルドの手元に調査報告書が届けられていた。
報告書には鑑定の結果、一般に出回っている上級ポーションの遥か上をいくエクストラポーションだと書かれていた。
「ふむ。エクストラポーションとな……私の病もこれを飲み続けていれば持ち直すやも知れぬ。あの者に詳しく聞いてみるかの」
報告書にひと通り目を通すとアーノルドはそう呟いた。
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客人として招かれたローランは通された部屋でしばらくの間寛いでいた。部屋には書物が沢山並んだ本棚があり、研究者の心をくすぐる名著がいくつもあった。
「これだけ集めるのに幾ら掛かるんでしょうね!」
読んでいいか確認していなかったローランは、背表紙を見るだけに留めた。
夕方近くになるとローランをメイドが呼びに来た。メイドの後に続いて廊下を歩く。
大きな長細いテーブルが置かれている部屋に案内された。食器類がセッティングされ蝋燭に火がともっている。メイドに促され所定の位置まで行くと、椅子を引かれローランは着席した。
大広間にアーノルドと孫娘とローランの三人きりで席に着いているのが妙に落ち着かなかった。
「ローラン君。今日は、偶然とは言え通り掛かった君のおかげで私は命拾いをした。ささやかながら我が家の晩餐に招待させて貰った。あり合わせで申し訳ないが味は保証する是非とも味わってくれたまえ」
アーノルドの挨拶が終わると晩餐が始まった。
……テーブルマナーはこれで良かったでしょうかね?
切り分けられたテリーヌを口元に運びながら、貴族と一緒に食事をする機会が無いローランは、失礼が無いように気を引き締めた。
「ところでローラン君。君が私にくれたポーションをいくつか頼みたいのだが、手配してもらえないだろうか?」
ワインを一口飲んでからアーノルドはローランにそう話しを切り出した。
「アーノルド様、薬草の在庫がある限りいつでもご提供は可能ですと申し上げたいところですが、お渡しした薄緑色のポーションについては難しいと言わざるおえません」
「それはどういうことだ? 薬草が足りないのかね?」
「薬草の方は確保出来ているのですが、製作者頼みになりますので……」
「なんだ! 君が作っているわけではないのかね?」
「はい。私もある程度の上級ポーションは生成できますが、あのポーションは作る事が出来ません。あれは別の者が作り出した物です」
「その者は、君の所で雇われていないのかね?」
「……実は今回王都に来たのもそれに関連しているのですが、その者は騎士団に捕縛されてまして、私は査問会に呼ばれているのです」
「ふむ、査問会とは穏やかじゃないな。その話をもう少し詳しく聞かせてくれないか?」
アーノルドは査問会と聞いて一瞬目が大きく開いたが、事情を把握する必要性を感じさらに踏み込んで聞くのであった。




