11話 クリストファーと老女
「ほれっ! 団長殿に敬礼じゃ」
魔導士団長のクリストファーが、魔導士団隊舎へ赴くと、隊舎の入り口付近で若い団員に向かって、指図をしている老女が見えた。
老女に指図され、慌ててこちらに向かって敬礼する団員一名。
クリストファーは、前方にいる老女が誰か分かったらしく、老女に向かって恭しく一礼した後、急ぎ足で彼女の元へ歩いて行った。
老女は杖をついたままその場を動かず、クリストファーが近づいて来るのを待つ。
「息災であったかの、クリス。今日も相変わらず、其方は麗しいのう!」
老女は口元をほころばせ、クリスへ賛辞の言葉を述べた。
クリスは賛辞の言葉に恭しく頭を下げて、
「ローエン卿、お久しぶりでございます。ご健勝そうで何よりでございます」
と言葉を返した。
満足気に老女は頷く。わずかに頬が赤らんだ。
「ところで、この様なむさ苦しい所へおでましになられて、何か御用ですか?」
クリスは老女へ問いかけた。
老女はクリスへ、もう少し近こう寄れとばかりに手招きをして、クリスが傍らまで寄ると、すかさず彼の腰に抱きついた。よく見れば、ローブ越しにお尻を撫で回している。
「クリス切れじゃ!!」
悪びれるもせずにそう言い放った。
「ローエン卿。少々お戯れが過ぎますよ」
クリスはやれやれという顔をして、毎度のことなのか、特段慌てる素振りも見せず、やんわりと老女を自分から引き剥がしていた。
「クリスちゃんはつれないのー。其方のそんな所も儂は好きじゃぞ」
プクっと膨れ面でそう言いながら、老女は何だか嬉しそうだった。
そんな二人のやりとりを、いつの間にか集まってきた、魔導師団の団員達が見守っていた。
入り口で老女に指図されていた団員が、仲間を呼んできたらしい。
「なあ! あの婆さん誰なんだ」
団員達の中の一人が声を上げる。
「随分、サリュー団長のことを、気に入ってる見たいだが……」
別の団員の声も聞こえる。
「あの御仁は、よっぽど団長が好きなんですね」
「ケツを撫でられたぞ……」
二人の関係に興味津々の団員達は、言いたい放題だった。集団が騒ついていると、
「おい。お前達。見せ物じゃないぞ! それに言葉を慎め」
人だかりの後ろから、団員達を嗜めるように、一人の男がやってきた。
「副団長!」
誰かの声に、団員達が一斉に振り返る。
「皆、言葉には気をつけろよ。あのお方は、ミザリー・ローエン卿だ」
「名前ぐらいならお前達も知ってるだろ?」
そう言うと、副団長は皆に向かって、シッシッシと手で追い払う素振りをした。
クリスの尻を撫で回した痴女『ミザリー・ローエン』は、もうすでに引退した身だったが、凄腕の魔術士として名を馳せた女性だった。
その功績から爵位と領地をもらい、今は隠遁生活を送っている。
幼い頃に団長が魔法を師事した師匠だと、副団長は聞いていた。
副団長が二人の元へ駆けつけると、恒例のやりとりは既に終わったようで、ローエン卿は、クリストファーの腰に手を添え、杖をつきながら、ゆっくりと隊舎の方へ歩いて来た。
副団長は恭しく一礼して、
「ローエン卿。お会い出来て光栄です。先触れをくだされば、お迎えに上がりましたのに……」
と言葉をかけた。
「よいよい。儂の気まぐれじゃからのう」
「急にクリスちゃんの顔が見たくなって、寄らせてもろうたわい」
そう言ってニッと微笑んだ。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。修正)魔導師→魔導士に訂正しました。
話を続ける難しさに早くもぶち当たってますが、頑張ります。
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